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モーター スポーツ コラム 2024年8月7日

生身のセンサーが速さを生み出す

今日も今日とてプッシュ&ルーズ by 高橋 二朗
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36号車 au TOM'S GR Supra。

サニブラウン・アブデル・ハキーム選手。パリ五輪の陸上競技の100mに出場し、決勝への進出が期待されていた。準決勝の第3 組で出走。抜群のスタートを切ったけれど、中盤から終盤で3位争い、4位でゴールを切った時のタイムは自己ベストの9秒96。同組のトップタイムは9秒80。各組みの上位2名が決勝に進出できるので同選手はそこで敗退。日本人選手92年ぶりの決勝進出は成らなかった。

彼のコメントにそうなだんだと思う。

「最後まとめきれなくて、それが失速の原因だった。力まずに走れば行ける(決勝に)と言われていたのですが、オーバースライドになってしまって…」

彼の言う最後まとめきれなくてとは、70m~80mのことらしく、そこで最後に速度を伸ばせるかどうかが決まり、上位のランナーは、そこから速度を増す/維持できるということらしかった。

先週のSUPER GT第4戦の話ではなくて、同じく富士スピードウェイで行われたスーパーフォーミュラにて、優勝した坪井翔選手のこと。坪井選手を下位カテゴリー時代から育ててきたチームのある人に聞く。それもSUPER GT決勝のスタート直前のグリッド上で。

「坪井は、ユーズドタイヤをもの凄く巧く使えるドライバーです。これほどまで巧いドライバーは見たことはない。タイヤの状態を的確に把握して、そして速く走らせることができるんです」と。

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サニブラウン選手が自己タイムを更新しながら4位だったことを分析していたコメントは、データを見て分析したのではなくて、自身の感触で語ったこと。モータースポーツでは、走行中にもラップタイムなどのデータを見ることができるけれど、チームの方が言うようなタイヤの状況は、ドライバーのセンサーでしか分からない。そのセンサーは、主にシートに触れている背中や身体中の筋肉が感知する重力。走行中の横Gや縦Gをドライバー自身、生身のセンサーで感じて、マシンをコントロールする。サーチしたデータは、脳で分析されて指示を出すと時間がかかってしまうため、脳での分析を割愛し、神経を通じて脊椎に至り、即座に体に指示が出される。これを【反射】という。脳でえーと、などとは考えない。それが反射。反射は、持って生まれた素質でもあるけれど、経験によって培った多くのパターンから瞬時に選択された一つの指示でもある。

国内のトップカテゴリーで活躍しているほとんどのドライバーはレーシングカートでモータースポーツをスタートして多くの経験をして、それがトップカテゴリーのドライビングで披露されているのですね。

今回も五輪ネタからとなりました…。

文:高橋 二朗

高橋 二朗

高橋 二朗

日本モータースポーツ記者会。 Autosport誌(英)日本特約ライターでもあり、国内外で精力的に取材活動をするモータースポーツジャーナリストの第一人者。1983年からルマン24時間レースを取材。1989年にはインディー500マイルレースで東洋人としては初めてピットリポートを現地から衛星生中継した。J SPORTSで放送のSUPER GTのピットレポーターおよび、GTトークバラエティ「GTV」のメインMCをつとめる。

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