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2023“SF鈴鹿決戦”チャンピオン候補2|野尻智紀 ~3連覇という大偉業への挑戦「僕も“日本一速い男”と呼ばれたい」~
モータースポーツコラム by 吉田 知弘その一方で、なかなか結果が出ない野尻。2017年にはランキング17位に終わり、彼のスーパーフォーミュラキャリアの中では“どん底”に近い状態だったことは、言うまでもない。
そんな野尻に、大きな転機が訪れる。SF19に車両が入れ替わる2019年はホンダ陣営がドライバー体制を大幅に変更。前年王者の山本と入れ替わる形でTEAM MUGENに加入した。そう、昨シーズンは無敵に近いほどの強さを誇った“野尻智紀 × TEAM MUGEN”のパッケージは、ここが出発点だった。
そして、野尻にとって“ターニングポイント”となったのが、スポーツランドSUGOで行われた2019年第3戦。ポールポジションに山本、2番手には野尻がつけた。決勝レースはスタートから安定したペースでリードしていく山本に対し、野尻は早めにピットストップを済ませる戦略で逆転を試みるも、山本とのタイム差は離れていく一方。スタート時は後ろにいたルーカス・アウアーに逆転されてしまう。
何としてもポジションを上げたかった野尻は、レース終盤の1コーナーでオーバーテイクを試みるも、止まりきれずにスピンを喫しリタイア。焦りが募ったのか、限界を超えるドライビングが招いた結果だった。
レース後の取材に応じてくれた野尻は、戦略面がスピンしたときの状況を説明してくれるが、その途中で「自分の判断が間違っていたのかもしれない」と話すと、急に黙り込んでしまい、目からは涙が溢れていた。“悔しさ”なのか、“不甲斐なさ”なのか……。彼の胸に何か大きなものが刻み込まれた1戦だったと言えるだろう。そこから野尻は強くなっていった。
悔しいSUGO戦から約1年後の、2020年第4戦オートポリス大会。相手はまたしても山本だった。予選では1年前とは逆に野尻がポールポジションを獲得し、山本は3番手からスタートした。彼らがとったレース戦略は奇しくもSUGOの時と似ており、野尻が先にタイヤ交換を済ませ、山本は終盤までコース上に留まり、自身のピットストップに必要な時間を稼ごうとした。
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