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サッカー&フットサル コラム 2026年7月17日

林のごとく、山のごとき静謐な守護神。FC東京U-18・渡邊麻舟が思索するのは望んだ舞台へたどり着くための着実なステップ 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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FC東京U-18・渡邊麻舟

この人が一番後ろに堂々と立っているだけで、チームには絶対的な安定感が醸成されていく。静かなること林のごとく、動かざること山のごとし。昨シーズンから若き青赤のゴールマウスを任されてきたその実力は、もちろん伊達ではない。

「FC東京のユースは凄く強いイメージがあって、先輩たちが残してくれたものもありますし、優勝はノルマに近いものがあると思っているので、チームとしてまずは優勝という目標を達成するために、最後尾の自分からどんどんいろいろなことを言ったり、チームが良い方向に行くように努力したいと思いますし、個人としては人間としても、サッカー選手としても、いろいろな人に認めてもらえるような存在になることが目標です」

ダイナミックなセービングと圧倒的な飛距離を誇るキック力を兼ね備えた、FC東京U-18の静謐なる守護神。渡邊麻舟はこれからも自身の成長を追求し続けることで、チームに対してポジティブなエネルギーをもたらし続けていく。

プレミアリーグデビューは、かなり早い段階で訪れた。高校1年生の6月。2つ上の先輩に当たる後藤亘が世代別代表の海外遠征で不在となったタイミングで、渡邊はアウェイの青森山田高校戦という難しいシチュエーションでスタメンに抜擢。試合は0-1で敗れたものの、このシーズンのリーグ戦では4試合に出場を果たし、貴重な経験を積み上げる。

2年生に進級した昨シーズンは、北川廉人や新堀恵太との激しいポジション争いの中で、正守護神の座を手繰り寄せ、プレミアで19試合に出場。本人も「自分がユースに入っていちばん成長したなと思うのはビルドアップの部分で、キーパーもビルドアップに参加して、後ろからゲームを作っていくことは意識してきました」と課題にしっかり向き合ったことで、穴のないゴールキーパーへと進化を遂げてきた。

本人と話してみるとよくわかるが、物事をしっかりと、じっくりと考えるタイプ。参考にしている選手を尋ねた際に、返ってきた言葉が実に振るっていた。「ユースに入った時は自分がゴールキーパーの中で一番身長が低かったので、『プレミアで身長が一番低いのは誰だろう?』と思って、アーセナルのラヤのプレー集をメチャメチャ見ていたんですけど、高1の10月ぐらいから『そういうのに縛られたくないな』と思い始めて、それから特定の選手のプレー集は特に見ていないです」

「今はフルマッチでいろいろなチームの試合を見て、どういうチームの、どういうキーパーが、どういうビルドアップの打開策を持っているのかとか、クロス対応でどういう準備をしているのかを見ています。フルマッチだとフィールドの選手の動きも理解できますし、それで得たアイデアをチームメイトにも伝えながら、いろいろな選手のプレーも参考にして、自分の味を出していきたいと思っています」

一番よく見るリーグは、イングランドのプレミアリーグ。以前はマンチェスター・シティが好きだったが、今は別のお気に入りのチームを追い掛けているそうだ。「今はアストン・ヴィラが好きなんです。シティが最終節でヴィラと対戦して、逆転勝ちで優勝した試合を深夜に生で見ていたんですけど、そこからユニフォームの色が特徴的で面白いなと思って、ヴィラが好きになりました」

「いつかヴィラパークにも行ってみたいですね。スタジアムの熱気も本当に凄くて、去年のチャンピオンズリーグでパリ・サンジェルマンとやった試合も生で見ていましたし、いつか自分もああいうピッチに立ってみたいと思っています」

当然ではあるが、ゴールキーパーもあくまでチームの11人の中の1人。サッカー全体の構造の理解を深めたうえで、自分がどう試合に関わっていくかを思考する渡邊の姿勢は、より高いレベルを目指していく上で、プラスに作用していくであろうことは間違いない。

 

今年の年始に参加したトップチームのキャンプは、1人のサッカー選手としての意識を大きくブラッシュアップさせてもらった、刺激的な体験だったという。「ピッチ外を含めて、サッカーだけのために2週間を過ごすような経験は今までなかったですし、1時間ちょっとの練習のために、1日を過ごすという経験もなかったので、凄くサッカーと自分と向き合うことができて、良い刺激を受けられました」

「特に山田楓喜選手は、自分が『今日は早くグラウンドに来たかな』と思っても、もうマットを出して1人でストレッチしていたので、1つの練習に懸ける想いを感じました。他にもいろいろな選手に話しかけてもらって、学べたものも多かったので、それをいかに自分のものにしていけるかだと思いますし、ただ刺激を受けただけではなくて、それを継続していく力を身に付けたいです」

7月15日。FC東京から2つのリリースが発表された。『渡邊麻舟選手(FC東京U-18) 2026/27シーズンよりトップチーム昇格のお知らせ』と『新堀恵太選手(FC東京U-18) 2026/27シーズンよりトップチーム昇格のお知らせ』。2年半にわたって、お互いの力を高め合ってきた同期のゴールキーパー2人が、同時にトップチームへと昇格することになる。

ここから先は、より自分の力だけが求められるシビアな世界。ただ、もうそんな競争に身を投じる覚悟は、とっくに整っている。今季のU-18の活動が始まった直後に、渡邊が力強く語った2026年への決意へ、改めて耳を傾けたい。

「このチームには良いライバルがたくさんいるので、そういうライバルたちと切磋琢磨しながらも、ユースの方でもそうですし、“隣のグラウンド”の方でも、自分の価値を示していきたいと思っています。自分が去年は試合に出ていたからと言って、保証されるものは何もないわけで、もう1回野心を持ちつつ、トップのキャンプで受けた刺激や感じたものを、しっかりと自分のものにしていきたいです」

考える。より自分が進化するために、何が必要なのかを。考える。より自分がピッチの中で有機的にプレーするために、何が最適なのかを。FC東京U-18の背番号1を託された、思索する守護神。渡邊麻舟は味の素スタジアムのピッチに、そして、憧れているヴィラパークのピッチに立つ日を逆算しながら、丁寧に、着実に、成長へのステップを踏みしめていく。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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