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サッカー&フットサル コラム 2026年6月30日

プレミアリーグ初参戦がもたらすのは「少年が青年になる」過程。ユアスタに集ったベガルタゴールドに輝く未来の芽吹き 高円宮杯プレミアリーグEAST ベガルタ仙台ユース×昌平高校マッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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ユアスタ開催のプレミアリーグを戦うベガルタ仙台ユースの選手たち

すぐ隣にいたボールパーソンの子は、おそらくジュニアでプレーする小学生だったのだろう。ボールがラインを割りそうな状態でも、もう椅子から立ち上がって、どこに、誰に、次のボールを渡せばいいか、瞬時に的確なジャッジを下していく。その様子、実にアラート。もうピッチの選手たちと同じぐらいか、それ以上の勢いで、完全にゲームに入っていた。

そのことを、ベガルタ仙台ユースを率いる加藤望監督に伝えると、嬉しそうな表情を浮かべて、こう言葉を紡ぐ。「ありがたいことにユースの子たちも、トップのゲームでボールパーソンをやる機会がありますし、ゲーム展開によって何をしなきゃいけないかが、アカデミーの子たちにはいい意味で染みついているので、クラブとしてそういう一体感があるのは、凄くいいところだなと思いますね」

試合前のウォーミングアップ。やはりジュニアの選手たちは、ユースの選手たちがボールを蹴る姿を見つめながら、枠を外れたシュートも我先にと拾いに走る。地元・仙台出身の指揮官はその中の1人に声を掛けた時のことを、やはり笑顔で思い出す。

「ウォーミングアップでボールを拾ってくれていた子たちは、ジュニアの小学校3年生と4年生だったんですけど、ある子に『ここでやりたいでしょ』って言ったら、『はい!』って目をキラキラさせていたんですよ。もう、これだなと思いました。やっぱりそれが全てで、あのキラキラしたものをこちらが消さないように、そのまますくすくと伸ばしてあげたいと、改めて思いました」

ユアテックスタジアム仙台でプレミアリーグが開催された日。2026年6月27日は、ベガルタ仙台というクラブにとっても、ベガルタアカデミーの選手にとっても、自分たちが新たなフェーズに入ったことを実感させる1日になったに違いない。

 

プレミアリーグEAST第11節。前半戦のラストゲーム。降格圏内の11位に沈んでいる仙台ユースが、勝点1差で10位に付けている昌平高校をホームで迎え撃つ一戦。前節の帝京長岡高校戦に1-10というスコアで敗れているだけに、まずは守備を意識してゲームに入ったが、この日も28分までに2失点を喫してしまう。

一方の攻撃面でも、なかなかチャンスを創出するまでに至らない。「ウイングを起点にやっていこうという狙いはあったんですけど、もうちょっと1人1人の距離感を近くして攻撃したかったですね」(石山葉琉)「収めて時間を作るのか、それとも前に行くのかという判断のところが、少し難しかったかなと思います」(佐々木亮)。最初の45分間で放ったシュートはわずか1本。仙台ユースは2点のビハインドを背負い、後半へと折り返す。

スタンドに火をつけたのは、背番号10のアタッカーだった。終盤に差し掛かった81分。左サイドを大山真志が抜群のスピードで独走。枠へ飛ばしたシュートは相手GKのファインセーブに阻まれたものの、一気にゴールドのサポーターへスイッチが入る。

86分。「『流れを変えられたらな』という想いで入りましたし、『絶対に点を決めてやろう』という気持ちもありました」と言い切る、途中出場の2年生が輝きを放つ。鑓水桜雅が勇気を持って縦パスを刺し、佐々木と大山が残したボールを、甲斐響太郎は丁寧にゴールへ蹴り込む。

「あの声援の大きさとスタジアムの雰囲気は自分のサッカー人生でも初めてだったので、点を獲った時は鳥肌も凄く立ちましたし、アドレナリンもブワーッと出て、もうなんか身体が勝手に動いて、スタンドを煽っていました(笑)。もう本当に凄かったです」。投入からわずか1分後の、ファーストプレーで奪った追撃の1点。スタジアムが沸騰する。

貴重なゴールを挙げて喜ぶ甲斐響太郎

だが、反撃もそこまで。タイムアップのホイッスルと同時にピッチへ倒れ込んだ大山を、1年生の小澤春太が優しく引き起こす。ユアスタに響く大きな拍手。ファイナルスコアは1-2。届きそうで、届かなかった、あと1点。声援を送り続けてくれたスタンドへ、選手たちがいつも以上に長く頭を下げる光景が、印象に残った。

 

 

 

チームの得点源でありながら、ゴールネットを揺らせなかった佐々木も、スタジアムの空気には高揚感を隠せなかったという。「もう気持ちが高まりすぎて、逆に『ちょっと冷静にならなきゃな』って思っていました。でも、ピッチに入ったら凄く楽しかったですね。もうあんな声援が来る中でサッカーができるのは幸せでした。だからこそ、自分がチームを勝たせて、サポーターにありがとうという感謝の気持ちを伝えたかったですね」

貴重な1点を挙げた甲斐は、アカデミーの“後輩”たちとの日常の交流について、こんなことを教えてくれる。「日頃から練習のグラウンドに行くと、ジュニアもジュニアユースもスクールも含めて、いろいろなアカデミーの子たちが同じグラウンドでサッカーをしていて、着替える場所も全部同じ建物ですし、『今日も頑張ろうね』と言い合って練習したりするんです」

「ユースの応援には今日だけではなくて、何回もジュニアやジュニアユースの子も来てくれて、『惜しかったね』『応援ありがとうね』というコミュニケーションを取っているので、その子たちの前で勝ちたかったですけど、後半の最後に追い上げられたのは良かったかなと思います」

試合が終わった直後。緑の芝生の上で始まった青空ミーティングは、かなりの長時間にわたって行われていた。加藤監督には、熱量の醒めないうちに、選手たちへ伝えたいことがあったようだ。

「普段から自分たちがサッカーできる環境への感謝を伝えてはいるんですけど、今日は実際にこうやって支えてくださる方がたくさんいて、僕らがやれているというところも実感できたと思います。終わってから悔しい表情を多くの選手がしていたんですけど、だったら日々自分の成長を思い描いてトレーニングしなくてはいけないですし、自分が成長するための時間にしていかなくてはいけないところを伝えたいなと。今日も本当にいろいろな方に応援していただいて、感謝しかないですね」

ピッチ上で行われた仙台ユースの青空ミーティング

ようやくたどり着いたプレミアの舞台は、難しい試合の連続だ。地道に、着実に、成長している実感はあっても、他のチームも同じか、それ以上の成長曲線を描いていく。だからこそ、問われるのはアカデミーとしての総力。加藤監督の熱い言葉に、耳を傾けたい。

「もちろん結果はなかなか期待に応えることができていないんですけど、プレミアは学びが大きいなと感じています。この舞台に立ったからこそ気づけることがたくさんあって、今はこのベガルタのアカデミーが、本当に一歩踏み出しているところだと思います」

「選手によってのびしろは全然違って、もうちょっとの子もいれば、目に見えて伸びる子もいて。でも、結局それは少年が青年になるのと一緒だと思うんですね。なので、普段からピッチだけではなく、私生活も含めていろいろなものに総合的に気づいて、判断してというところが、サッカーとイコールになるという話はしているので、私生活から変化のある子は、やっぱりピッチでも変化がありますし、こちらもそれを促しています」

「そういう意味では変化している子もたくさんいますし、今日のピッチに立てなかった子の中にも、そういう子はたくさんいるので、ユースの子たちが模範となって、ジュニアユース、ジュニアの子たちがその背中を追いかけるというような環境を、もっともっと作っていきたいなと思います」

ユアスタの熱狂は、会場の空気を吸ったアカデミー生の中へ、強く刻まれたに違いない。次は自分が、ゴールドのユニフォームに袖を通して、あのピッチに立ってやる。きっと未来のベガルタ仙台を背負う若き才能は、この日のスタジアムのどこかで、確実に芽吹いているはずだ。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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