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サッカー&フットサル コラム 2026年5月26日

164センチのセンターバック、躍動!前橋育英高校・石川悠介がチームメイトに示し続ける「あるべき姿」 高円宮杯プレミアリーグEAST 前橋育英高校×鹿島アントラーズユースマッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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前橋育英高校・石川悠介

前年王者の鹿島アントラーズユースをホームで迎え撃つ一戦。前橋育英高校のスタメンリストに並んだ11人の中で、最も身長の低い選手がセンターバックを任されていた。石川悠介。164センチ。本来はサイドバックを主戦場に置く、東京ヴェルディのアカデミー育ちらしい、足元のスキルに長けた17歳だ。

今季のスタメンはこれが3試合目だったが、過去の2試合もセンターバックでの出場。チームの指揮を執る松下裕樹コーチは、「ゴールデンウィーク前の昌平とフロンターレの試合で使ったんですけど、センターバックの安西(健吾)の足の具合が悪かったので、普段の練習の取り組みも素晴らしいですし、悠介なら全然行けるんじゃないかなと思ったんです」とその起用理由を説明する。

「もともと今年はセンターバックの人数が少なくて、練習では何度かセンターバックをやったことはあるんですけど、安西がケガしてしまって、初めて昌平戦でセンターバックで出させてもらった時には、ちょっとビックリした部分はありました」とは本人だが、その昌平戦も、翌節の川崎フロンターレU-18戦も、相手の強力攻撃陣を1失点に抑え、2試合で勝点4を上積み。急造センターバックはきっちり“代役”を務めてみせる。

以降の3試合は戦線復帰した安西がスタメンに名を連ねていたが、前節の柏レイソルU-18戦に0-1で敗れた流れの中で、「前の時は『あ、出るな』とわかったと思うんですけど、今日はいきなり朝のミーティングで言ったので、アイツもたぶん自分がスタメンだとはわかっていなかったと思いますよ」と笑う松下コーチは、難敵の鹿島ユース戦のピッチに、スタートから石川を解き放つ。

センターバックとしての自分に何が求められているかは、自分が一番よくわかっている。「自分はボールが持てるので、ビルドアップで時間を作って、しっかり縦パスを刺したり、サイドに展開して、良い攻撃に繋げられるのが一番の長所かなと思います」。最終ラインの中央でコンビを組む深見翔太と丁寧にパス交換を繰り返しながら、機を見て、縦に、サイドにと正確な配球を施し、後方から攻撃のリズムを生み出していく。

深見の言葉も印象深い。「悠介はビルドアップに安定感があって、ボールをあまり失わないですし、守備で抜かれることも少ないので、安心してできるなという感じで、やりやすいですね。特に細かい役割分担の話はしていなくて、その時その時で相手に行ける方が行っています」。お互いに状況を見ながら、その時の最適解を導き出していく。

 

試合は激しい打ち合いに。「前半は良い流れで入った中で、なかなか決め切れなくて、簡単な失点をしてしまったんですけど、しっかり獲り返せましたし、全員でピッチの中で声を掛け合いながら、『絶対勝ってやろう』という気持ちがありましたね」と石川。1点のビハインドで折り返した後半も、追い付き、突き放され、追い付いてという展開。3-3というスコアで最終盤へと突入していく。

決勝点が生まれたのは90+3分。前橋育英のエース・立石陽向がハットトリックとなるPKを沈め、激闘に終止符が打たれる。吉田湊海や平島大悟など世代有数のアタッカーを揃える鹿島ユースに、3点こそ奪われたものの、4-3というスコアで劇的な逆転勝利。「最後は気持ちの面が一番強かったと思います」と話した石川の表情にも、試合後には安堵と歓喜の笑顔が広がった。

石川にとって、2025年は試練の年だった。2年生への進級を控え、改めて新シーズンへのモチベーションを高めていた矢先に、悲劇は起こる。2月の練習中に右ヒザの前十字靭帯を断裂。そこから復帰までは1年近い時間を要することになる。

先の見えないリハビリの日々。そんな苦境を支えてくれたのは、やはり家族の存在だった。「自分が通っていた病院が遠かったんですけど、お父さんが車で迎えに来てくれたり、お母さんも励ましの良い言葉を掛け続けてくれたので、そのおかげで努力し続けられました。一番支えになったのは家族ですね」

ボールを蹴ることは叶わなくても、貴重な時間を無為に過ごすわけにはいかない。メンタルを切り替え、今まで以上に自分と向き合う時間を大事に、真摯に、重ねていく。「サッカーを考える頭の部分だったり、筋トレだったり、今できることに全力で取り組んで、復帰した時にケガする前より良い状態に持っていけるようにということを心掛けて、努力してきました」

「実際にケガする前はもっと体重が軽くて、身体つきももうちょっと細かったんですけど、ケガの期間でしっかり筋トレをやって、体重も増えましたし、当たり負けしないような身体ができたので、それは良かったのかなと思います」

年が明け、ようやく練習に復帰してからも、努力を重ね続けて掴んだ今の立ち位置。「本当に練習から一生懸命やっている選手で、自分たちもそれをずっと見ていますし、今日も急にピッチに立ってもああいうプレーができることを悠介が証明してくれているので、自分たちも凄く刺激になっています」というキャプテンの山本翼の言葉からも、石川の存在がチームメイトに与える影響の大きさが垣間見える。

松下コーチも、石川に寄せている信頼を隠さない。「試合に出た時にチームの力になれるというのは、どの選手にもそうあってもらいたいじゃないですか。石川が今日はああいう状況で出た中で、ちゃんとトレーニングをやっていなかったら、ああいう良いプレーなんて出ないですし、それを出してくれるので、選手のお手本だなと思っています」

「普段からやっていることは間違っていないということをちゃんと証明してくれますし、
『オマエには「あるべき姿」「本来の姿」を見せてほしい』とサッカーノートにも書いているんですけど、僕の中でも石川はチームにとって大事な存在ですし、それは本人もちゃんと伝えています」

プレミアリーグはここから1か月近い中断に入り、チームはインターハイ予選に臨むことになる。群馬制覇だけを目指すシビアなトーナメント。もちろんサイドバックで出ることになっても、センターバックで出ることになっても、石川のやるべきことは何ひとつ変わらない。

「去年はケガもあってなかなかサッカーができなかったので、まずケガをしないというのはもちろんですし、ここからしっかりプレミアの試合に出続けていって、インターハイや選手権でもチームに貢献したいなというのが一番の気持ちです。今は改めてサッカーの楽しさを感じています」

何の憂いもなく、サッカーボールを蹴ることのできる日常が、どれだけ価値のあることかは、誰よりも強く実感してきた。選手としての「あるべき姿」を常に仲間へ示し続ける、前橋育英の小柄なグラディエーター。石川悠介が重ねる努力の先には、きっと思い描く「あるべき姿」が、はっきりとした輪郭を伴って、成長した自分自身と出会う時を静かに待っている。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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