人気ランキング

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム一覧

サッカー&フットサル コラム 2026年5月19日

「サッカーと向き合える」経験を生かした2026年の躍進。アビスパ福岡U-18が整えるのは「三歩進む」ための丁寧な準備 高円宮杯プレミアリーグWEST アビスパ福岡U-18×大津高校

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
  • Line

躍進の前半戦を過ごしているアビスパ福岡U-18

「不完全燃焼です。ギアが上がらなかったですね。選手を躍動させることができなかった反省は、僕の中であります」

3連勝を狙ったホームゲームに、0-1というスコアで惜敗した直後。久永辰徳監督は悔しげな表情を浮かべながら、そんな言葉を口にする。ただ、逆に言えばチームに求める基準が、自分の指揮に求めるレベルが、確実に上がっているということ。2026年のアビスパ福岡U-18は、間違いなくプレミアリーグの頂に届き得る力を、備え始めている。

その躍進の予感は、確かにあったと言っていいだろう。6年ぶりにプレミアへ帰還した2025年シーズンは、シビアな残留争いに巻き込まれながら、最終的に8位でフィニッシュ。その経験値を携えた福岡U-18は、3月中旬に福岡県内で開催されたサニックス杯でも、既にまとまりのあるサッカーを繰り広げていたのだ。

「プレミアリーグを1年間戦って、残留できたということが、確実に選手たちの財産になっているので、我々の言葉が伝わりやすくなっているのかなと思っています」。昨季は渋い顔も多かった印象の久永監督の口調にも、はっきりとした手応えが滲む。

「『勝った、負けた』の勝敗という成功体験で言うと、プリンスの方が得られるものはあったんですけど、本当に苦しんでいる中で、選手が成長していくさまというのがはっきり見えて、『高校年代ってこうなるんだ』ということを感じられたのが去年のプレミアだったなと」

「だいたい高校生だと勢いの良さで何とかなったり、あまり厳しくしない方がのびのびできたりもするんですけど、そういうレベルではなくて、サッカーと向き合えるというか、サッカーからちゃんと人間形成ができていくところを感じられたので、『ユース年代にプレミアのようなリーグがあるのはいいことだな』と、参加してみてつくづく感じました」

2年生だった昨シーズンはリーグ戦19試合に出場し、右サイドバックとボランチで活躍した松浦拓夢は、「最初は全然いいプレーができなかったんですけど、スピード感に慣れていったら、自分を出すこともできましたし、成長できた手応えはありました」と語りつつ、「今年はプレミアでも上位を狙えるぐらいの力は持っていると思うので、そこに向けて自分たちがどう準備できるかが大事かなと思っています」ときっぱり。彼らが充実したプレシーズンを送っている空気感は、至るところに漂っていた。

アウェイで迎えたプレミアの開幕戦で、米子北高校に逆転勝ちを収めた福岡U-18は、4試合を終えた時点で2勝1分け1敗と好スタートに成功。昨季の夏の中断前はわずか1勝しか挙げられなかったことを考えれば、結果だけを見ても大きな違いが現れていた。

加えて試合内容にも変化の跡が窺える。「去年も後期ぐらいからはしっかりビルドアップしていこうという話で、そこから勝ち始めたところもあったので、今年は前期からボールを握ることは共有してできています」とはキャプテンの藤川虎三。最終ラインからボールを丁寧に繋ぎ、ゲームを支配しながらチャンスを狙うスタンスが定着。内容と結果が良いサイクルで回り始めたことで、彼らの自信が深まっていることも想像に難くない。

チームの逞しさが凝縮されていたのが、第6節のファジアーノ岡山U-18戦だ。後半に入って先制を許したものの、75分に北薗大海が同点弾を沈めると、90+1分には松浦がゴラッソを叩き込み、ホームで鮮やかな逆転勝利。昨年は手にするまで13試合も掛かったシーズン3勝目を力強く引き寄せると、翌節のガンバ大阪ユース戦にも1-0で競り勝ち、連勝を飾った勢いを持って今節に向かうことになる。

5月17日。ベスト電器スタジアム。ゴール裏にはビッグフラッグが掲げられ、スタンドからはサポーターの熱い声援が送られるホームゲーム。最高の雰囲気の中で大津高校と対峙したゲームは、序盤から一進一退の展開に。福岡U-18も44分には品川維風のボレーがクロスバーに弾かれるなど、際どいシーンを作り出す。

だが、勝敗が決まる要素は、いつでも紙一重だ。75分。左右に揺さぶった流れから、大津に先制点が生まれる。76分。藤川の思い切ったオーバーラップから、北薗が迎えた決定機は相手のGKのファインセーブに阻まれる。

ファイナルスコアは0-1。どちらも3連勝を期した一戦は、アウェイチームに軍配。「今日はうまく自分たちのサッカーができなかったなと感じました」(藤川)。スタンドへの挨拶を終えた福岡U-18の選手たちの、実に悔しそうな顔が印象的だった。

アビスパ福岡U-18を率いる久永辰徳監督

「どうしても今良くなっているビルドアップから、意図的な攻撃の形を出せる回数も少なく、大津さんの守備の良さを僕らが嫌がって、簡単なところにボールを運びすぎましたね」。そう指揮官が話したように、この日はいつもより縦に速い展開が目立ち、攻撃がノッキングする場面も散見された。

また、左サイドバックで奮闘していた永田湧大が足を攣ったため、68分に施した選手交代を機に、システムを[4-4-2]から[3-5-2]にシフトしていた時間帯で、失点が生まれた点も悔やまれる。

「膠着していたので、そんなに配置をいじらずに、高さだけ変えるシステム変更の方がいいかなと思いました。その時間帯でやられたのは凄く残念でしたね」と久永監督。失点後は再び[4-4-2]に戻してチャンスも作れていただけに、10分間近い“システム変更”をピッチ内で選手たちが消化しきれず、決勝点を献上したことが、結果的に試合を大きく左右したことも見逃せない。

それでも、指揮官はこの日の90分間から、ポジティブな成長の種も見つけ出していた。「今シーズンの負け方はあっさり失点して、連続失点を重ねるものだったので、こういう拮抗した試合に負けるというか、少し力負けみたいなゲームを経験できたことで、『まだまだ足りないよね』というところが見えたことは良かったと思います」

「今までは負け方とか失点の仕方がイージーだったので、メンタル面に働きかけるだけで効果があったというか、改善は簡単だったんですよ。でも、今日みたいなゲームは、もっともっと攻撃のところで勇気を持ってできるように落とし込んでいかないといけないゲームだったので、こういうゲームに勝って、またグッと上に行けるようにしていきたいですよね」

これで4勝1分け3敗となった福岡U-18は、8試合を消化して4位という順位に。首位を走るヴィッセル神戸U-18との勝点差はわずかに3。混戦の様相を呈しているプレミアWESTの中で、さらなる存在感を示し続ける可能性は十分に有している。最後に久永監督の興味深い言葉をご紹介しておこう。

「今は一歩進んで、一歩後退して、二歩進んで、一歩後退して、みたいな感じです(笑)。今日で三歩進めたら良かったんですけど、でも、ちょっとずつ、ちょっとずつ成長していると思います」

「ただ、このプレミアリーグで優勝を目指そうと思ったら、それではダメだと思うんですよ。一歩後退したら、次は三歩進もうという気持ちでやっていかないといけなくて、その力はまだないのかなと思います。だから、こうやって一歩後退した時に、次に向けてどれだけ三歩進む準備をできるかを、選手にどう気づかせていくかが、我々にとって大事になってくるんです」

つまりは、勝っても、負けても、引き分けても、すべては明日の成長の糧になる。もちろんいつだって三歩進めればいいけれど、それもまずは目の前の一歩を踏み出すところから。千里の道も一歩から。タイトルへの道も一歩から。2026年のアビスパ福岡U-18は、地道に、着実に、とにかく前だけを見据えて、日々進歩し続けていく。

 

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
サッカー&フットサルを応援しよう!

サッカー&フットサルの放送・配信ページへ