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ワールドカップの躍動と選手権の蹉跌。神村学園高等部・竹野楓太はさまざまな経験を糧にして「昨年のチーム超え」を真剣に目指す 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史神村学園高等部・竹野楓太
「最後のプレーはほとんど失点だぞ!」
逆転勝利を飾った試合直後。ベンチに戻ってきたその人は、厳しい表情でそんな言葉を仲間にぶつける。もちろんチームメイトたちも手放しに喜んでいるような者は1人もいない。この一戦に勝って、リーグ首位に立ったにもかかわらず、だ。
「ほぼ負け試合です」
本人に話を聞いても、まず口を衝いたのは反省の弁だった。神村学園高等部のキャプテンを任されている竹野楓太。昨年はFIFA U-17ワールドカップでも右ウイングバックとして躍動し、複数のプロクラブからも注目を集めている17歳は、終わったばかりの試合の勝利にも納得がいっていなかった。
プレミアリーグWEST第6節。ともに無敗同士で対峙した名古屋グランパスU-18とのアウェイゲームは、ビルドアップのミスを発端に15分で先制点を献上。28分には児玉称のミドルシュートで神村学園も追い付いたものの、ゲーム内容としては難しい45分間を強いられる。
もともとは右サイドバックを主戦場に置いている竹野だが、今季はチーム事情もあってここまでセンターバックで出場。「慣れないポジションなんですけど、(中野)陽斗にいろいろ聞いたりしています。背後にボールが出たら身体を当てて、自分が優位に立てるようにしたり、ヘディングは(樽見)俊太朗に競らせて、自分はそのカバーに行くようにしていますし、カバーの面でもいろいろなところに顔を出せるように常に準備しています」。昨季のキャプテンを務めていた中野陽斗(いわきFC)にもアドバイスをもらいながら、新たなポジションに取り組んでいる。
後半はセンターバックでコンビを組む樽見俊太朗との連携も上々。周囲をうまく動かしながら、前半より守備の安定が図られると、76分には途中出場の尾関晴が逆転ゴールをゲット。スコアを引っ繰り返し、1点のリードを手にして、試合は最終盤へと入っていく。
終了間際の90+5分。マークの受け渡しがやや曖昧になり、中央を崩されて決定的なピンチを迎えるも、守護神の久保侑工が何とかキャッチ。直後にタイムアップのホイッスルが鳴り響き、神村学園は勝点3を獲得することになったが、このシーンに対してフォーカスしたのが、冒頭の竹野の言葉というわけだ。
「最後にシュートを打たれた部分もほぼ失点だったので、もっと声を出すべきでした。あそこまで相手のボランチが来ていたので、自分が出るのか、ボランチを出してマークをズラすのかを、もっと早く判断しないといけないなと思いました」
「去年のチームを自分が見ていて思ったのは、誰か頑張っている選手がいたら、そこに『もう1人!もう1人!』とさらにどんどん頑張っていく人もいましたし、そういうところは今年のチームに還元していかないといけないなって。去年の先輩たちはそうやって勝っていたわけで、自分たちもそれぐらいやらないと勝てないと思っているので、常に自分も気づいたことは言うようにはしています」
基準に置いているのは、高校年代二冠を達成した昨年度のチーム。インターハイと高校選手権をともに制し、6人のプロ選手を輩出したグループで、1年を通してコンスタントに出場機会を得ていたからこそ、自分たちに課すべきハードルが低くなるはずがない。
前述したように、昨年のU-17ワールドカップでは5試合に出場して、ベスト8進出にきっちり貢献。世界のレベルを肌で味わってきた竹野だったが、帰国後は先輩の細山田怜真にポジションを奪われる形になり、選手権でも右サイドバックのサブという役割に甘んじる。
「ワールドカップから帰ってきて、もちろん活躍するつもりでしたし、自分が日本でもどれだけ通用するかを楽しみにしていた大会だったんですけど、自分のプレーを過信しすぎていた部分があったかなと思います」
日本一を目前に控えた決勝の前日練習後。竹野はこんなことを話していた。
「ワールドカップで感じたことを自分なりにやろうとは思っているんですけど、『なんか空回っているな……』って。代表の経験から両足を蹴れるように頑張ろうと思っていたんですけど、今度はそればかりになってきて、縦に行かなくなってきていることが、出られない理由かなと思っています」
「選手権もここまではかなり悔いが残るというか、やり切れていない感じがあるので、明日はもう『縦にしか行かない』という縛りを設けてやろうかなと思っています。後半の途中から出るのであれば、相手にとって脅威にならないといけないですし、やっぱりドリブルで縦に行くのが自分の武器なので、それを常に意識してやりたいと思います」
翌日の決勝。神村学園は鹿島学園高校を3-0で破って、夏冬二冠を成し遂げる。歓喜に沸く選手たち。だが、並々ならぬ決意を携えていた竹野には、最後まで国立競技場のピッチに立つ瞬間は訪れなかった。
本人の心情は察して余りあるが、チームを率いる有村圭一郎監督は明確な狙いを持って、その采配を振るったという。「点差もあったので、竹野も大空(星那)も経験のために出そうと思えば出せたんですけど、中途半端に出してあげたというのは良くないなと。逆にそこをモチベーションにして、もう1回国立の決勝に来たいと思ってほしかったので、あえてピッチに入れませんでした」
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その意図は有村監督からはっきり伝えられたそうだ。「とても悔しかったですし、今まで支えてきてくれた人たちに恩返しができなかった大会だったんですけど、有村先生からは『決勝も本当は出しても良かったけど、あの悔しさを糧に頑張ってほしい』と言われたので、そこは自分も割り切れて、『今年は絶対に頑張ろう』と思えたんです」。このあたりにも熟練の指揮官のマネジメント術が垣間見える。
高校ラストイヤー。キャプテン就任。2年連続となる二冠へのチャレンジ。国立ファイナルへの帰還。竹野が抱える2026年へのモチベーションは、十分すぎるほどに高まっている。
「今年は去年を超えることを目標にしているので、プレミアでは首位になったんですけど、これからが大事ですし、プレミアを獲って、インハイ、選手権もしっかり獲れるように頑張っていきたいなと思います」
「個人としてはまた代表に入ることを考えていきたいですし、自分は『プロになる』と言っているんですけど、その道をどう広げていくかも大事になってくると思うので、それこそ海外のクラブからも声を掛けてもらえるようなプレーを、どんどんしていけたらなと思います」
ワールドカップの躍動と、高校選手権での蹉跌は、間違いなく一回りも、二回りも、成熟したプレーヤーへと駆け上がるための糧になっている。証明すべきは圧倒的な個人の成長と、昨年以上の一体感を纏うチームの成長。神村学園をしなやかに束ねるニューリーダー。竹野楓太はどんなポジションでも、どんなピッチでも、とにかく自分にできることと120パーセントの熱量で、真摯に向き合っていく。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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