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サッカー フットサル コラム 2023年3月17日

2026年W杯の大会形式が決定 日本代表の目標「ベスト8」の意味も変わる

後藤健生コラム by 後藤 健生
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2026 FIFAワールドカップ 開催地決定

2026 FIFAワールドカップ はカナダ2都市2会場・アメリカ11都市11会場・メキシコ3都市3会場の計16都市16会場で開催

2026年のワールドカップを目指す日本代表のメンバーが発表された。カタール・ワールドカップに出場したメンバーのうち基本的に30歳台の選手を除外して若手選手を組み入れたメンバー構成だった。

カタール大会での日本の成功の原因の一つは選手層の厚さだった。多くの選手が負傷して思い通りのメンバーを組めなかったものの、日本は戦力を大きく落とすことなく、交代枠を使って戦ってドイツとスペインを連破するという結果を出したのだ。

2期目となる森保一監督は、再びラージグループ作りから作業を始めるのだろう。

そして、新生日本代表の目標は再び「ワールドカップでのベスト8」ということになるのだろう。

もっとも、同じ「ベスト8」といっても、次回大会ではその意味するところがかなり違ってくる。なぜなら、次回からワールドカップは48カ国参加となるからだ。

その2026年大会のフォーマットが先日のFIFA理事会で決まった。

参加48カ国を4チームずつ12組に分けてグループリーグを行い、各組の上位2チームに加えて、3位のうち上位8チームを加えた32チームによるノックアウト方式で優勝を争うことになったのだ。大会全体で110試合という大規模大会となり、優勝するにはこれまでの7試合ではなく8試合を戦わなければいけないことになった。

従来と大きく変わったのはグループリーグでは3位でも勝ち抜けるチャンスがあるという点だ。しかも、参加国数が拡大するため、これまでよりもレベルの劣るチームも出場する。次回大会で日本は第2ポッドに入る可能性が高いから、格下のうち1つのチームに勝てば勝ち抜けられるということになる。

もちろん、カタール大会で日本がコスタリカに敗れたように「“格下”だから勝てる」というものではないが、グループリーグ突破の難度が下がることは間違いない。

だが、そこからが大変だ。

これまでは、グループリープ突破の後1つ勝てば「ベスト8」だったのだが、次回大会では2試合に勝つ必要があるのだ。

ノックアウト・ステージでは延長・PK戦となる試合も多いだろうから、ベスト8に進むには運・不運、あるいはPK戦のための準備がより重要になる。PK戦というのは単なるルーレットではない。GKやキッカーの技術あるいは情報戦など様々な要素が絡む勝負なのだ(日本代表は、PK戦を重視していたクロアチアに対して、備えがまったくできていなかった)。

だが、PK戦で順位が決まりとうのはなるべく避けるべきだ。

次回大会のフォーマットが複雑なものになってしまったのは、参加国数が「48」という中途半端な数字になったからだ。

ワールドカップの参加国を「48」に拡大するということは2017年に正式に決まった。

参加国数増加によってFIFAの収入を増やすことが最大の目的だ。また、これまで参加できなかった国の本大会出場の可能性を高めることでFIFAの現執行部に対する支持を拡大することもできる(先日のFIFA総会でジャンニ・インファンティノ会長は無事に再選された)。

自らの利益のために参加国数拡大を決定したFIFAだったが、2017年の段階ではそれに伴って生じる困難については、あまり真剣に考えていなかったようだ。

当初は、グループリーグは3チームずつの16組として、上位2チームが勝ち抜いてラウンド32からノックアウト方式とすると発表された。この方式なら、決勝までの試合数は7試合のままで、大会期間も従来通りですむ。

だが、3チームのグループリーグでは連戦となるチームと休養日があるチームで不公平が生じるし、せっかく本大会に出場しても16チームは2試合だけで大会が終わってしまう。そうした批判が高まってきたので、FIFAはフォーマットを変更したというわけだ。

しかし、3位でも勝ち抜けるとなるとグループリーグでの“消化試合”が増えてしまうし、偶然が作用するノックアウト方式の試合が多くなってしまう。

ワールドカップのような大会を公平に実施するためには、参加国数は2の倍数(2、4、8、16、32……)であることが望ましい。

長く16カ国参加で行われていたワールドカップだったが、1982年のスペイン大会から1994年のアメリカ大会までの4大会では参加国数は「24」とされ、1998年のフランス大会から「32」に拡大された。

日本が初めてワールドカップに出場したのは、その1998年大会だった(チーム数拡大の恩恵を受けてアジア枠が3か国に拡大したため出場できた)から、多くの日本のサッカー・ファンは24カ国時代を知らないことだろう。だが、僕は覚えている。それは、かなり複雑で、また分かりにくい大会だった。

まず、グループリーグの3位チーム同士を比較するのはかなり無理な作業になってしまう。3位に入ったチームは、その後全グループの順位が決まるまで何日も待たされることもある。他グループの最下位決定戦が重要な意味を持ったりもする。

また、同組の国同士が決勝トーナメントで早期に再び顔を合わせないように、複雑な組み合わせ表があって、勝ち抜きチームがすべて決まってからトーナメント表が決まるので、ラウンド32の対戦相手がなかなか決まらないこともある(1982年大会から1994年大会の頃を知っているみなさんは、当時を思い出してほしい)。

とにかく、大会全体の流れがよく分からなくなってしまうのだ。

分かりやすさから言ったら「2の倍数」がいちばんだ。できれば、オリンピックの男子サッカー競技と同じような16チーム参加が好ましい。4グループだけだから、全体の流れを見渡すことができるし、ノックアウト方式は準々決勝からなので、PK戦に勝負が委ねられることも少なくなる。

FIFAがどうしても(収益拡大のために)参加国数を増やしたかったのなら、いっそのこと「48」ではなく、「2の倍数」である「64」にすべきだったのではないだろうか。

グループリーグで“消化試合”を減らす方法も考えるべきだ。

そのためには、ノックアウト・ステージでもグループでの順位を反映させるべきだ。ノックアウト・ステージで引き分けに終わった場合、PK戦でなくグループリーグでの順位によって勝ち抜けチームを決める。たとえば、日本とクロアチアがラウンド16で引き分けに終わった場合、グループリーグ首位通過の日本の勝ち抜けとするのだ。

カタール大会ではノックアウト・ステージの全16試合中5試合が延長に入ったが、延長戦でゴールが決まったのは決勝戦のみ。他の試合では、延長に入ると両チームともにリスクを冒すことを嫌い、その結果、延長戦は退屈なものになってしまうことが多かった。グループ上位チームの優位があれば、下位チームは延長ではリスクを負って攻撃せざるを得なくなる。そして、グループリーグの順位が重要ということになれば、当然“消化試合”も減らすことができるはずなのであるが……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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