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(4)「選手保護」がいき過ぎた。
今季の開幕前に危険なプレーを厳しくジャッジするよう、示し合せがあった。目的は選手をケガから守る、だ。昨季までただのファウルだったのがイエローになったこともあるに違いない。
だが、イエローの数はレッドに比例するほどには増えていない。なので、示し合せがあったのは事実だが、決定的な要因とは言い切れないのではないか。
そこで、私のオリジナルの意見を一つ。
(5)レッドの垣根が低い。
サッカー界にはルールブックに書いていない暗黙のルールがある。それが「レッドを出すのは慎重に」だ。
2枚目のイエローは1枚目のイエローと同じ基準で出してはいけない。例えば、先週末のセビージャ対セルタで、パペ・グエイェに2枚目のイエローが出されたプレー。彼は相手選手の足を踏んだ。ルールブックを厳密に適用すればイエローなのだが、2枚目だったし「わざと踏んだ」ではなく「踏んでしまった」のだから情状酌量があってもよかった。
もう一つ、同じ週末のエスパニョール対アスレティック・ビルバオで、アレイクス・ビダルに続けてイエローが出て退場させられたシーン。肩から当たりに行っているので1枚目は仕方がないが、アピールによるものだった2枚目は、省く手もあったのではないか。
芝生の上では、言っていけない言葉が思わず口をついたり、やってはいけないジェスチャーをしてしまうことがある。興奮状態で我を失っているからだ。なので、審判の方も時には聞こえなかったフリ、見なかったフリをしてもいいのではないか。
もちろん、試合のコントロールを優先し厳密にルールを適用しない、ということはすでに行われている。
同じ先週末のベティス対カディスでは、ミランダによる喉へのエルボーを流している。試合中のどんなアクションよりも一発レッドに相応しかったが、イエローすら出されず、VARも介入しなかった(その代わりに、ペジェグリーニ監督が血相を変えて怒り、直ちにミランダを下げた)。
あれをわざと見逃したのは、これ以上退場者を出して(あの時点で2人退場)、試合をさらに荒れさせたくない、という判断があったからだろう。それは正しかった、と思う。
今一度、「退場者をなるべく出さない」ためのジャッジを、プレミアリーグを参考に、検討し直すべきではないだろうか。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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