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4年前のスペインがポーランドの立場にあれば、直ちに日本のメッセージを受け取り、両者笑って決勝トーナメント進出の道を迷わず選んでいたことだろう。
だから、国民性からしても、サッカー界の慣習からしても、引き分け狙いを受け入れる土壌はあるではある。
だが、この今のスペインに限ってはない。
なぜなら、監督ルイス・エンリケがそれを許さないからだ。
スーパースター不在の若いチームがここまでやれているのは、「リスクを負って全試合勝ちにいく」という強い気持ちで結束しているからだ。そのタガを緩めて、“負けなければいい”なんてメッセージを発してしまうと、前向きの気持ちが後ろ向きに、強気が弱気になりかねない。たとえ勝ち上がっても、そのツケは必ず決勝トーナメントで必ず回ってくるだろう。
これが成熟したチームだと事情が違っていただろう。
例えばCBコンビがベテランで、酸いも甘いも噛み分けたセルヒオ・ラモスとピケであれば、グランドレベルでアクセルとブレーキの加減を調整できたかもしれない。
例えば、勝ちにいった結果、残り10分で同点だった場合、互いに攻め合わないという暗黙の了解を受け入れて、チームメイトに指示できたかもしれない。
だが、パウ・トーレス(25歳)、エリック・ガルシア(21歳)という、ベンチ生活で力を持て余しやる気満々のフレッシュコンビが、鬼の形相でベンチから見張っているボスの命令に反して、インテンシティを下げることは想像できない。そこで温厚なデル・ボスケがニコニコ笑っていたら話は別なのだが。
だから、スペインは全力で叩き潰しに来る。
引き分けを狙って引き分けられるほど、このチームは成熟していない。そういう本気のスペインを見たいし、そうでなければ上位進出なんて望めない。そして、その本気のスペインに対して日本が何をでき、何ができないのかを見極めてみたい。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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