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アンチェロッティ監督
0-4クラシコでわかったことがいくつかある。
1つ目は、ベンゼマの不在に対してアンチェロッティ監督は戦術解答を持っていないこと。ボール出しを助けて攻撃のスイッチを入れ、周りを動かして崩し、自らはゴールとアシストに絡むCF兼攻撃MFの欠場が痛いことはわかっていた。が、監督にはプランBがなかった。アンチェロッティはほとんどローテーションをせず、交代のタイミングも遅いから、レギュラー以外を試す機会がそもそも少なかったこともある。
多分、彼が信用しているのは次の面々ーークルトワ:カルバハル(バスケス)、ミリトン、アラバ(ナチョ)、メンディ:カセミロ(カマビンガ)、クロース、モドリッチ(バルベルデ):ロドリゴ(アセンシオ)、ベンゼマ、ビニシウスーーだけ。DFには2人、MFには2人控えがいるが、FWには1人しかおらず、ベンゼマの控えはいない。少なくとも、アンチェロッティの頭の中には。
プランBはモドリッチの聞いたことも見たこともない偽CFだった。偽CFならイスコとアザールは本職なのに。CFの不在をCFで補うというやり方ならマリアーノかジョビッチを先発させる手もあった。実際、後半はマリアーノCFでスタートしたのだが、10分を経たないうちに0-4とされ勝敗が決した(個人的には1ゴール、2アシストのジョビッチが、なぜ1アシストだけのマリアーノより優先順位が下がったのかも謎である)。
アンチェロッティには信用できない理由があるのだろう。だが、そのせいで戦力を生かせず、ベンゼマがいなければお手上げ、という状態が、要求水準の高い試合では起きかねない。2位セビージャと9ポイント差で残り9試合のリーグ優勝を逃すとは思えないが、ベスト8に進んでいるCLはベンゼマが絶好調で復帰しシーズンを終えない限り赤信号が灯った。これが2つ目にわかったこと。
3つ目は、アンチェロッティのイメージが著しく傷ついたこと。後半、ナチョ、ミリトン、アラバの3バックでスタートしフェランに3点目を決められるとすぐにカセミロを下げて4バックに再変更した。3バックだったのはたった3分間で、その間にGKとの1対1を2度作られた。“即興の3バック”という印象が拭えない。ベンゼマ不在の答えを見出せなかった上にこのドタバタ。
クラシコの1敗、特にホームでの1敗はただの勝ち点喪失ではない。リーグ優勝には痛くもかゆくもないが、レアル・マドリーの面子は酷く傷つき、“来季この監督で大丈夫か?”という声が必ずや上がるだろう。そして、それはリーグ優勝だけでは決して消えないだろう。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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