アーセナル上層部は新監督を全面的にサポートできるか！？

現地時間12月13日の段階で、アーセナルのフレディ・ユングベリ暫定監督は次のように語っていた。

「上層部から待つように指示されているので、コーチングスタッフも選手も現状のままだ。ペア・メルテザッカーが手伝ってくれているけれど、彼は本来アカデミーのコーチだからね。新監督が決まったら私は去るのか、数週間前までのように若手を指導するのか。とにかく、いまは待つしかないんだ」

アーセナル上層部の混迷がうかがえるコメントだ。11月29日にウナイ・エメリを解任した後、10人前後の新監督候補と面談したことは確認が取れている。その結果、一時は前バレンシア監督のマルセリーノ・ガルシアが最有力となり、12月10日にナポリがカルロ・アンチェロッティとの契約を破棄したため、アーセナルが急接近。一時は合意説まで伝えられたものの、アーセナルが突如としてキャンセルした。人選が二転三転している。

そして12月16日深夜、マネージングディレクターのヴィナイ・ヴェンカテシャンがリクリート担当のハス・ファーミーを伴い、マンチェスター・シティのアシスタントコーチを務めるミケル・アルテタの自宅を訪問。2時間半にもおよぶ面談の結果、色よい答が得られたというのがもっぱらの評判だ。読者の皆さんが本稿に目を通すころ、アルテタがアーセナルの新監督に就任している公算は非常に大きい。

彼はジョゼップ・グアルディオラ監督（シティ）の懐刀である。トレーニングセッションの大半を指揮し、セットプレーのアイデアはアルテタが中心だ。また、ときに熱くなるグアルディオラを諭し、冷静な判断でゲームプランを修正したり、選手交代のカードを変更したり、シティの重要人物といって差し支えない存在だ。当然、グアルディオラも引き留めに……。

「アーセナルとアルテタの間になにが起きているかは知っているよ。彼は優れた指導者で、正直な人でもある。ステップアップの機会が訪れたのなら、是が非でもつかんでほしい。組織というものは必要に応じて、だれかに別れを告げるときが必ずやって来る」

グアルディオラはアルテタの才能を認め、人間性のすばらしさを称賛しつつ、快く送り出そうとしていた。

ただ、アルテタを招聘するだけでは意味がない。アーセナル上層部は新監督を全面的にサポートし、動けないくせに高給を取る者、DFを名乗りながら守れない選手、移籍をちらつかせる不満分子などを、来年1月の市場でバッサリ切るべきだ。サポーターの支持を得ていようといまいと、アルテタのプランにマッチしないのであれば、売れるうちに換金した方がいい。そして監督未経験のアルテタの周囲を、幾多の修羅場をくぐり抜けてきたコーチングスタッフでガードするべきだろう。

17節終了時点で4位チェルシーと7ポイント差、屈辱の10位。得失点差はマイナス7もある。再建が簡単ではないことを、アーセナルに携わるすべての人間が強く強く認識しなければならない。

文：粕谷秀樹