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長年積み上げてきた4-2-3-1に戻した日本がどこまでロシアワールドカップ出場国と戦えるかに注目が集まった8日のスイス戦(ルガーノ)。新布陣の3-4-3で挑んだ先月30日のガーナ戦(日産)に比べれば、確かに守備面の安定感は出ていたが、肝心のところでミスを犯してしまうのは相変わらずだった。
前半40分に警戒していたはずの左サイドアタッカー、ブリール・エンボロ(シャルケ)に酒井高徳(HSV)がアッサリとかわされ、カバーに行った吉田麻也(サウサンプトン)がペナルティエリア内でファウルを取られ、PKを献上。これを左サイドバックの名手、リカルド・ロドリゲス(ミラン)に決められ、前半の一番点を与えてはいけない時間帯に失点してしまう。
後半から乾貴士(エイバル)や柴崎岳(ヘタフェ)、香川真司(ドルトムント)といった攻撃の駒を続々と投入し、反撃に打って出たが、決定機らしい決定機をまともに作れない。そして残り9分というところで、CKのクリアからカウンターを繰り出され、最終的には長谷部誠(フランクフルト)の元同僚であるFWハリス・セフェロビッチ(ベンフィカ)に押し込まれ万事休す。この時間帯は明らかに守備組織がバラバラになっていた。日本は失点ゼロの時間を最大限長くしないと勝ち目がないのに、昨年8月の最終予選大一番・オーストラリア戦(埼玉)以降はずっと失点を繰り返している(国内組のみ12月の東アジアカップ除く)。その課題を解決しない限り、ロシアでは惨敗もあり得る状況だ。準備期間が極めて少ない中で、理想を追い続けている西野朗監督にも厳しい現実を再認識してもらいたいものである。
暗雲立ち込める日本とは対照的にスイスの方は着々と強化が進んでいる様子だ。負傷していたグラニト・ジャカ(アーセナル)も復帰し、ベストメンバーが揃った状態で本番に突入できそうだ。 ウラジミール・ペトコビッチ監督率いる今回のスイスの最大のウリは堅守。GKヤン・ゾマー(ボルシアMG)、センターバックのファビアン・シェア(デポルティボ)、マヌエル・アカンジ(ドルトムント)、ボランチの一角を占めるヴァロン・ベーラミ(ウディネーゼ)で構成される中央のブロックは強固で、そう簡単にFWをフリーにしない。大迫勇也(ケルン)や途中交代した武藤嘉紀(マインツ)目がけて蹴り込まれたクロスを彼らはやすやすと跳ね返していた。彼らの堅守は2失点を喫した昨年10月の欧州予選ポルトガル戦以降、6試合の総失点がわずか1という数字にも表れている。
本大会のスイスはブラジル、セルビア、コスタリカと同じE組に入っていて、1次リーグ突破を狙うなら、17日の初戦・ブラジル戦を最少失点で乗り切ることが絶対条件だ。それをよく理解しているから、指揮官も選手たちも守りのオーガナイズを徹底させているのだろう。
ブラジルから勝ち点1でも確保できれば、2大会連続16強入りの道が大きく開けてくる。キャプテンであり、日本戦で代表キャップ数100試合を記録したステファン・リヒトシュタイナー(ユベントス→アーセナル)が「今のスイスは最強」と自信を見せたが、その原動力の1つが守備であることを忘れてはいけない。
そのうえで、攻撃陣にも決め手を持つ選手がいる。その筆頭がジェルダン・シャキリ(ストーク)。日本戦では元インテルのチームメートである長友佑都(ガラタサライ)ら2~3人のマークを受け、本来の右サイドでは思うような結果を出せなかったが、セフェロビッチの2点目の起点となるチャンスメークしたのは彼。ブレリム・ジュマイリ(ボローニャ)とのワンツーからペナルティエリア左隅を突いて入れたマイナスクロスをフランソワ・ムバンジェ(トゥールーズ)が頭で折り返し、セフェロビッチが決める形だった。この時間帯ピッチに立っていた香川真司(ドルトムント)は「サイドをえぐり切れなくても、あそこに入ったら、相手も下がってボールウォッチャーになる。バイタルの角をどう使うかはすごく重要」と語っていて、シャキリのプレーから学ぶべき部分が多かったようだ。
かつてバーゼルで柿谷曜一朗(C大阪)、シャルケで内田篤人(鹿島)とともにプレーしたエンボロも21歳になり、老獪さを増している。目下のところはシュテファン・ツバー(ホッフェンハイム)の控えに回っている様子だが、いざという時の爆発力とスピードは相手にとって脅威に他ならない。そういう飛び道具を持っているチームは強い。スイスと対峙する国々は手を焼くだろう。
E組ではブラジルに次ぐ2位をセルビア、コスタリカと競う構図だが、下馬評ではややスイスは低く見られがちだった。しかし日本戦を見る限りでは十分突破の可能性はあるのではないか。攻守のバランスの取れたこのチームの戦いぶりも本大会ではしっかりとチェックしたいものである。

元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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