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サイクルロードレース コラム 2026年10月13日

最終1kmを逃げたハーゲネスが伝統の一戦で初優勝 強力ヴィスマ・リースアバイクに新たな猛者|パリ〜トゥール2026 レビュー

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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パリ〜トゥール

優勝ペールストランド・ハーゲネス、2位ヤスペル・ストゥイヴェン、3位クリストフ・ラポルト

シーズンを締めくくる伝統の一戦、パリ〜トゥールの第120回大会。グラベルあり、急坂ありの難コースを一番に攻略したのは、ペールストランド・ハーゲネス(ヴィスマ・リースアバイク)だった。今季は春から好調で、ツール・ド・フランスのメンバー入りも果たした23歳が最高の形で1年をフィニッシュ。プロトンを代表するビッグチームに、またひとり計算できる戦力が現れた。

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「毎年10月は疲れもあって苦しい時期なのだけれど、今日ばかりは特別だったね。シーズン最終戦だったから、持てる力をすべて出し切ることだけを考えていたんだ。最後の1kmは特にそうだったね。運も僕に味方をしてくれたよ」(ハーゲネス)

ラポルトへのマークをかいくぐって抜け出したハーゲネス

フランス北部の田園地帯を行く216.2kmのレース。終盤の3分の1には10カ所のグラベルセクションがあり、さらには9つの短距離登坂も待ち受ける。かつては“スプリンターズクラシック”として名を馳せた大会だが、今やシーズン屈指の過酷なワンデーレースのひとつに数えられるようになった。

序盤に12人が先頭グループを形成し、メイン集団に対してリードを広げていく。一時的に集団が迫る場面もあったが、大きな動きは見られない。フィニッシュまで100kmを残す段階でも展開に大きな変動はなく、タイム差は3分台まで拡大した。

集団待機を選んだチームや選手たちは、グラベル区間に達するまでできるだけスタミナ温存を図っていたようだ。その証拠ともいうべきか、残り80kmを切ったところからヴィスマ・リースアバイクとネットカンパニー・イネオスが急激にペースアップ。そのままグラベルセクションへと突入していく。

実質的に最初の勝負どころとなったのは残り50km。先頭グループとの差が1分を切ったところで、メイン集団に大規模なクラッシュが発生する。優勝候補に名が挙がっていたドリアン・ゴドン(ネットカンパニー・イネオス)やアルノー・ドゥリー(ロット・アンテルマルシェ)らが巻き込まれ、なかにはレース続行不能となる選手も。集団がいくつにも分断する中、前方で難を逃れた選手たちはそのままハイペースで突き進む。のちに集団のペースが緩んだことで後続ライダーたちが復帰し、先頭グループとの差も再び1分台に戻ったが、終盤に向けてプロトン全体に緊迫感が走り始める。

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【フィニッシュシーン】パリ〜トゥール|Cycle*2026

パリ〜トゥール

砂利道、という新たな悪路をレースに取り入れた

残り30kmを切ると、チューダー プロサイクリングチームも集団牽引に加わる。急坂をきっかけにペースの上げ下げが頻発し、遅れた選手が集団に戻るなど慌ただしい展開に。そうしているうちに先頭グループは瓦解し、ポール・ラペラ(デカトロン・CMA CGM チーム)が単独トップに立つ状況となった。

ただ、ラペラの独走も長くは続かない。チームメートのピエール・ゴーテラが集団から抜け出して先頭を代わると、同じデカトロン勢からラスムス・ピーダスンが合流。そこへハーゲネスも加わった。この3人は数キロ進んだところで集団に吸収されるが、残り9kmで迎えた最後の登坂区間でおおよそ30人の集団から6選手が抜け出す。ラペラとハーゲネスが再び先頭に立ち、そこへクリストフ・ラポルト(ヴィスマ・リースアバイク)、ヨナス・アブラハムセン(ウノエックス・モビリティ)らが加わった。

さらに残り6.5kmで、ヤスペル・ストゥイヴェン(スーダル・クイックステップ)やトムス・スクインシュ(リドル・トレック)ら5人が合流。11選手による優勝争いへと持ち込まれた。

勝負が動いたのは残り1.5km。何度かアタックを試みていたスクインシュがわずかに先行すると、そこへハーゲネスがチェックに入る。スクインシュが脚を止めた瞬間、ハーゲネスはさらに加速し、一気に逃げの態勢へ持ち込んだ。

「みんながクリストフのスプリント力を警戒しているようだったから、僕はそこをうまく利用しようと考えたんだ。アタックのタイミングも完璧で、あとはフィニッシュラインまで全力で踏み続けるだけだったよ」(ハーゲネス)

最終800mの直線でストゥイヴェンが猛追を見せるも、十分なリードを確保していたハーゲネスがそのままトップでフィニッシュラインを駆け抜けた。後方ではストゥイヴェンに続いてラポルトが3位争いのスプリントを制し、ヴィスマ・リースアバイクがワン・スリーフィニッシュを達成した。

気鋭の23歳が偉大なチャンピオンたちと優勝者リストに並ぶ

今季は3月のE3サクソクラシックで2位に入り存在感を示すと、5月にはベルギーのワンデーレースで優勝。その勢いを買われ、ツール・ド・フランスではヨナス・ヴィンゲゴーハンセンのアシストに抜擢された。ヴィンゲゴーが大会途中でリタイアしてからは逃げにも挑み、ツール後も好調を維持して今大会を迎えていた。

とりわけ、パリ〜トゥールとの相性は抜群だ。2022年にはU23(アンダー23)部門で優勝。その際も今回同様、後続の追撃を許さない逃げ切り勝ちだった。

「シーズンを締めくくるレースとして、僕にとって最高なんだ。何が起こるか分からないスリリングさもたまらない。いつかはエリートで……と思っていたけれど、それが実現して本当にうれしいよ」(ハーゲネス)

パリ〜トゥール

来季への期待が膨らむハーゲネス

これでヴィスマ・リースアバイクはシーズン51勝目。ライバルのUAEチームエミレーツ・XRGの勝利数には届かずとも、ビッグチームとして申し分ない実績だ。グランツールにとどまらず、クラシックでも結果を残すチームにあって、ハーゲネスの台頭はさらなる戦術の幅をもたらす。来季への期待が膨らむ大きな勝利となった。

「偉大なチャンピオンたちがパリ〜トゥールを制してきた歴史の中に、僕の名前が刻まれるのは本当に光栄だよ。何より、今日の勝利は僕だけのものじゃない。チーム全員で勝ち取ったものだ。みんなに心から感謝したい」(ハーゲネス)

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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