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サイクルロードレース コラム 2026年9月4日

スロベニアからニューヒーロー誕生! 20歳ヤコブ・オムルゼルが秀峰カラル・アルトを独走で一番登頂|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第12ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

グランツール初参戦で山岳ステージ勝利のオムルゼル

一大勢力であるスロベニアから、ヤングスターが生まれた。ブエルタ・ア・エスパーニャ2026第12ステージで、レース前半に形成された逃げに乗ったヤコブ・オムルゼル(バーレーン・ヴィクトリアス)は、ロス・フィラブレス山脈の最高峰カラル・アルトでフィニッシュまでの12kmを独走。グランツール初出場、さらには今大会最年少20歳5カ月によるステージ優勝は、自国の偉大な先輩タデイ・ポガチャルUAEチームエミレーツ・XRG)よりも若くして成し得た快挙だ。

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「日々の努力を考えれば、この勝利は驚くほどのことではないよ。いつかこの日がやってくると思っていたんだ。ただ、初のグランツールで100%の結果を残せるとは考えていなかったけどね」(オムルゼル)

総合トップ20から4人が入った先頭グループ

第12ステージは、今大会中盤戦の重要区間。レース距離166.6kmで、獲得標高は4530m。コースには5つのカテゴリー山岳が詰め込まれていて、とりわけ後半部にそびえる1級山岳が勝負ポイントになる。フィニッシュ前44kmから上るアルト・ベレフィケは登坂距離13.1kmで、平均勾配7.2%。最大勾配15%のつづら折りを登坂していく。上り始めには中間スプリントポイントが設定される。

そして迎えるは、カラル・アルト。フィニッシュまでの16.9kmを上り、平均勾配5.6%ながら随所で10%超の急勾配が待ち受けている。かと思えば突如上りが緩やかになったりと、一定リズムで走るのはなかなか難しい。確かなのは、このふたつの山々を巧みに走り抜くことが個人総合争いにおける必須条件となることである。

ベラの街を出発したプロトンは、2.3kmのパレード走行を経てリアルスタート。イーサン・ヘイター(スーダル・クイックステップ)のファーストアタックをきっかけに、集団前方はしばしの出入りが続く。この日最初の上りである3級山岳に入ると、ワウト・ファンアールトチーム ヴィスマ・リースアバイク)を含め20人近い選手たちが先行を開始。その流れのままワウトが頂上を1位通過する。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

巨大な先頭集団となった

下り途中の20km地点で先行ライダーたちが集団に戻ると、再びアタックが散発。30km地点を過ぎたところで3人が抜け出し、さらに20人を超える選手たちが追随。やがて2つのグループがまとまって、大規模な先頭グループへと転化。この間、メイン集団ではヤングライダー賞のマイヨ・ブランコを着るオスカー・オンリー(ネットカンパニー・イネオス)が落車したが、すぐに集団へと戻っている。

50km地点を過ぎ、2つ目の3級山岳を上り始める頃には、先頭グループは30人を超え、集団とのタイム差も5分以上の開きに。再び最前線でレースを進めるワウトが上りを攻めて、ここも頂上を1位通過。リードを広げているポイント賞に続き、山岳賞にも興味を示している様子だ。

大人数が逃げを打ったなかに、個人総合20位以内につける選手が4人入った。特に存在感が大きいのが総合タイム差8分5秒で10位につけるオムルゼルだ。一時はバーチャルで同2位相当までポジションを上げ、大幅なジャンプアップのチャンスがめぐってきている。バーレーン・ヴィクトリアスはレース半ばから、ペリョ・ビルバオや山岳賞争いで首位に立つサンティアゴ・ブイトラゴらがペースメイクを担って、逃げ切りとオムルゼルのランクアップを図った。

経験豊富なチームメートがオムルゼルを送り出した

先頭グループとメイン集団とのタイム差は中盤以降も広がり続け、1級山岳アルト・ベレフィケに入る頃には7分差に。上り始めてすぐに置かれた中間スプリントポイントはワウトが1位通過して、20点を加算。そこからは、今大会がキャリア最後のグランツールとなるビルバオが献身的なペースメイク。頂上ではブイトラゴが1位通過に成功し、バーレーン勢が主導権を握る。

その頃メイン集団では、リーダーチームのモビスター チームがスピードを上げて、人数を17人にまで絞り込んだ。中腹でリチャル・カラパスEFエデュケーション・イージーポスト)がアタックしたが、モビスター勢が冷静に対処し集団へと引き戻す。アルト・ベレフィケを上りきってダウンヒルを終える頃には、先頭との差は5分まで縮まった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

九十九折りが広がる山岳ステージ

ただ、残り距離を考えると逃げ切りの可能性が高まっている。1級山岳カラル・アルトを上り始めると、先頭は4人まで減る。やはりバーレーン勢が有利で、ブイトラゴがペースを作ってオムルゼルを引き上げる。そして残り12km、勝負を託されたオムルゼルが単独で先頭に立った。

タイミングを同じくして、メイン集団ではマイヨ・ロホを着るエンリク・マス(モビスター チーム)がアタック。ライバルを引き離すと、途中まで先頭グループ位置していたラウル・ガルシアに合流。前待ちを機能させたガルシアがマスの登坂ペースを構築した。

それでも、オムルゼルは貯金を取り崩しつつトップの座を固めることに成功。逃げ切りを確実なものとして、カラル・アルトの頂上へとやってきた。

「今日は特に連携が抜群だった。完璧なチームワークだったし、まるでプレイステーションで遊んでいるような感覚だった。やろうと思ったことにトライして、勝つことができた。最高の気分だよ」(オムルゼル)

20歳5カ月のオムルゼルが、今大会指折りの難所を一番に攻略してみせた。

ログリッチ、ポガチャル、オムルゼル……スロベニア勢の最強ストーリーは続くか

昨年、若手の登竜門のひとつ「ジロ・デ・イタリア ネクスト・ジェン」を制し、晴れて今季からプロ昇格。ルーキーイヤーからステージレースを中心に上位入りしていて、6月には地元開催のツアー・オブ・スロベニアで個人総合3位。夏の間はブエルタをターゲットに鍛錬を積んできた。

今大会でも第7ステージを4位で走るなど、戦えるところを示していた。そして、このステージ優勝。自国の大先輩ポガチャルが2019年のブエルタで勝った時が20歳11カ月だったから、オムルゼルはそれより若くしてグランツールで勝利を挙げたことになる。

「まぁそれは統計上のデータでしかないのだけれど……悪くはないね。素敵な記録だよ」(オムルゼル)

ブエルタ・ア・エスパーニャ

メイン集団ではマスが飛び出すタイミングを図っていた

過去4度ブエルタを制し、今大会も走っているプリモシュ・ログリッチレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)、そしてポガチャルと、最強ライダーを生み出しているスロベニアからニュースターが誕生。どこか、ログリッチとポガチャルと同じ系譜をたどっているように感じてしまうあたりは、気のせいだろうか。

マスはリード拡大に大きな価値を見出す

歓喜のオムルゼルから2分56秒後、マスがフィニッシュへ。逃げ残った選手たちをはさんで、6番手で走り終えた。個人総合で2位につけるログリッチや同3位のフェリックス・ガル(デカトロン・CMA CGM チーム)は、マスから27秒差。この結果、マスは総合リード拡大に成功した。

「この27秒はかなり重要な意味を持つと思う。チームとして完璧にレースを作ることができて、僕個人の走りも満足できるものだった。最後の上りは自信があったけど、ちょっと長すぎたね(笑)。うまく乗り切れて良かったよ。冬場のトレーニングキャンプでこの山を走っていたことが大いに生きたと思う」(マス)

第12ステージを終えて、マイヨ・ロホを着続けるマスから2位ログリッチは1分45秒差、3位ガルは2分6秒差に。上位陣に順位シャッフルがあって、カラパスが4位に浮上。オンリーが5位にランクダウン。ステージ優勝のオムルゼルは4つ上げて6位に浮上している。

第13ステージは、アンダルシアを行く192.8km。中級山岳にカテゴライズされるコースだが、レース展開は果たして。レイアウト的に考えると、個人総合争いはひと休みといった趣きだけど、決して気を抜くことはできない。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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