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サイクルロードレース コラム 2026年8月31日

ポガチャルのリタイアで首位浮上のマスがマイヨロホにふさわしいステージ優勝|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第9ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

マスがマイヨ・ロホ初日に区間優勝

前日に総合1位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)が負傷リタイアしたブエルタ・ア・エスパーニャ。8月30日にラ・ヴィラホヨサ〜アルト・デ・アイタナ間の187.4kmで第9ステージが行なわれ、総合2位から首位に浮上したエンリク・マス(スペイン、モビスター チーム)が山岳コースを制し、8年ぶり2度目の優勝。総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)との差を1分から1分18秒に広げた。

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前日は悲運のポガチャルに配慮してマイヨ着用拒否

初日から第8ステージまで首位に立ち、ステージ3勝を挙げてきたポガチャルが落車骨折でレースを去った。リタイアを受けて総合2位から首位となり、ゴール後の表彰台で個人総合成績のリーダージャージ、マイヨ・ロホを着用する義務があったマスはそれを拒否。マイヨ・ロホを着用しながら病院に直行することになったポガチャルへの敬意を示すためだったと語った。

31歳のマスは現代の「エターナルセカンド」だった。長いキャリアは2位が極めて多かった。ブエルタ・ア・エスパーニャの総合成績でも2018年のサイモン・イェーツ、2021年のレムコ・エヴェネプール、2024年のログリッチに次ぐ2位だった。ブエルタ・ア・エスパーニャは今回で8回目の出場となるが、マイヨ・ロホを着用したことは1日もなく、グランツールで首位に立ったことも一度たりともない。

悲願のマイヨ・ロホだったが、そんな状況で表彰台に登場したマスは真紅のジャージを両手に持って広げただけで、この日は袖を通すことをためらった。マスは、自身とモビスターが責任を持ってこのリーダージャージを守ると語り、翌日の第9ステージのスタート地点で初めてマイヨ・ロホを着用してスタートラインに並んだ。

総合成績の状況は変わっている。首位はマス。1分遅れの総合2位ログリッチ。1分11秒遅れの総合3位フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロン・CMA CGM チーム)。2分15秒遅れの総合4位セップ・クス(米国、チーム ヴィスマ・リースアバイク)。2分16秒遅れの総合5位オスカー・オンリー(英国、ネットカンパニー・イネオス)はヤングライダー賞ジャージを着用する。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

フィッシャー=ブラックらの追走グループ

レース初週を締めくくるには非常に厳しい第9ステージ。187.4kmという長丁場に加え、獲得標高はほぼ5000m。6つの峠があり、特に2つ目のエル・ミセラトと最後のアルト・デ・アイタナへの登りは選手たちの体力と技術を試すことになるだろう。

●山岳賞ポイント
プエルト・デ・タルベナ(36.7km地点、カテゴリー2級)
プエルト・デ・エル・ミセラト(73.9km地点、カテゴリー1級)
プエルト・デ・トリョス(90.7km地点、カテゴリー3級)
プエルト・デ・トゥドンス(121.8km地点、カテゴリー2級)
プエルト・デ・ベヌファリム(139.9km地点、カテゴリー2級)
アルト・デ・アイタナ(187.4km=ゴール、カテゴリー1級)

レースはベニドルム近郊、海沿いのラ・ヴィラホヨサからスタートした。この地域は、このあたりで開催されるレースや、チームが冬にやるトレーニングキャンプのおかげで多くの選手が知っている場所だ。コースは内陸に向かい、アルト・デ・アイタナの山頂フィニッシュに挑む。

ブイトラゴが山岳ポイントを連取

コースレイアウトはアタッカーを刺激した。エースを失ったUAEチームエミレーツ・XRGはパヴェル・シヴァコフ(ロシア)をアタックさせた。これにNSNサイクリングチームのアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)、ウノエックス・モビリティのアンドレアス・クロン(デンマーク)、EFエデュケーション・イージーポストのアラステア・マッケラー(オーストラリア)、チューダー プロサイクリングチームのファビアン・ワイス(スイス)、XDS・アスタナ チームのアレッサンドロ・ロメレ(イタリア)が加わり、9km地点で20秒の差をつけた。

この日最初の登り、プエルト・デ・タルベナでステージ優勝を目指して第1集団に加わろうと、カウンターアタックが飛び交う。ペースが速すぎてワイスは先頭集団から遅れ、メイン集団に吸収される。

レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのフィン・フィッシャー=ブラック(ニュージーランド)とエキポ ケルンファルマのウルコ・ベラーデ(スペイン)が追いかけ、山頂手前でアタック。スーダル・クイックステップのヴァランタン・パレパントル(フランス)とチューダー プロサイクリングチームのシュテファン・キュング(スイス)がこれを追いかける。多くのアタッカーが混戦に加わる。15選手が逃げ集団に加わり、この日2度目の登りとなるプエルト・デ・エル・ミセラトに挑む。サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)が先頭で山頂に向かい、ここから山岳賞ポイントを獲得し始めた。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

デカトロンがメイン集団を牽引する

最終的に104km地点で24人の先頭集団がまとまる。その時点で、モビスターが率いるメイン集団は4分55秒遅れていた。

ブイトラゴは3つ目と4つ目の峠でも山岳賞ポイントを獲得。続く下り坂で23回目の誕生日を迎えたロメレがアタックして単独となり、中間スプリント(134.6km地点)と5つ目の峠、プエルト・デ・ベヌファリムを先頭で通過。

これに対してメイン集団は、ガルのデカトロン・CMA CGM チームがペースメーカーの役割を担い、6分のタイム差を挽回しにかかる。最後の登りは距離22km、平均勾配5.8%。先頭は数を減らした追走集団に1分半、メイン集団には5分の差をつけていた。ロメレは急速に脱落し、ステージ優勝を狙うシヴァコフが頂上まで10kmの地点で単独走行に出た。

彼らの後ろではデカトロン・CMA CGM チームが猛烈なペースで走っていた。ガルは残り8km地点でアタックを仕掛けるが、ライバルに差をつけることはできなかった。ブイトラゴ、ガル、マス、ログリッチ、オンリー、リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)を含む有力グループが山頂から4.5kmの地点でシヴァコフを捕らえた。

最後は頂上フィニッシュでの激闘。マスが残り3kmでアタックすると、これに追いつけたのはオンリーだけだった。マスは頂上までさらにペースを上げ続け、2018年の第20ステージ以来となる2度目のステージ優勝を飾った。

スペイン選手がマイヨ・ロホを着用してブエルタ・ア・エスパーニャのステージ優勝を果たしたのは、2014年の第20ステージでアルベルト・コンタドールが達成して以来だ。オンリー以外の後続にわずかな差をつけたことで、総合成績は2位ログリッチに1分18秒差。ガルは1分39秒遅れの3位。この日ステージ2位に入ったオンリーは2分20秒遅れの総合4位に浮上した。

子どものようにワクワクしていた(マス)

( 「今ならタデイ・ポガチャルの気持ちがわかるよ。ジャージを着ると本当に翼が生えるんだね」とマイヨ・ロホを名実ともに獲得したマス。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

総合勢しか残っていない最終局面

「今日のチームの動きをみんな見てくれたと思う。昨日の午後から今日まで、あらゆる面で完璧だった。チームは素晴らしい仕事をしてくれた。私たちは終始冷静さを保っていた。状況を非常にうまくコントロールできたと思う。最後には本当にいい気分だった。そして、他の選手たちの状況を常に知らせてくれたチームディレクターにも心から感謝している。

これまでキャリアの中で数々の挫折を経験してきたので、とても慎重になっていたんだ。最終日まで一日一日を大切に過ごしていかなければならないけど、まずこの日はこれまで感じた中で最高の気分の一つだと思う。最初から子どものようにワクワクしていた。そして、リーダージャージを着て優勝できたことは、本当に特別な気持ちだ」

山岳賞はこの日に得点を積み重ねたブイトラゴが前日の5位から一気にトップに立った。

「今日はステージ優勝を狙いたかったんだ。最後まで全力を尽くした。でも、車から送られてくる情報が正確ではなかった。登り始めはもっとリードしていると思っていたんだけど、振り返ってみたらすぐ追いつかれてしまった。あんなに過酷なステージで、ゴール直前で追いつかれるなんて、本当に辛い」と、目的はステージ優勝だったと語ったブイトラゴ。

「でも、山岳賞のリーダージャージを着られたことはうれしいし、最後まで守り抜いて楽しみたい。もちろん、今日優勝できたらもっとよかった。1位でゴールするのは最高の気分だからね」

8月22日に開幕した大会は9連続ステージを終えて、31日に最初の休息日を迎える。9月1日の第10ステージでレースが再開。アルバセテ県では曲がりくねったコースのステージが開催される。スプリンターチームがレースをコントロールできない場合、逃げ集団が有利になる可能性がある。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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