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サイクルロードレース コラム 2026年9月14日

エンリク・マスが歓喜のグランツール制覇! 最終のグラナダ市街地サーキットはトビアス・ヨハンネセンが勝利|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第21ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

ブエルタ総合表彰台 優勝マス、2位ログリッチ、3位ガル

サイクルロードレース王国スペイン復権のとき。ブエルタ・ア・エスパーニャで過去4度総合表彰台を経験していたエンリク・マスモビスター チーム)がついに、ポディウムの最上段へ。早くから「スペインを背負う」と言われ、期待を集めてきた男は31歳にして初めてとなるグランツール制覇を果たした。それは同時に、ブエルタにおいて12年ぶりに自国ライダーが王座に就くことを意味した。

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「特別な1日を迎えられて心の底から感動しているよ。今日のことは一生忘れないよ。こんなにスペシャルな毎日はなかったし、すべてが素晴らしかった。最後のステージも楽しむことができて、無事にフィニッシュに到達した。この喜びをどう言い表したらよいか分からないよ」(マス)

モビスターがマイヨ・ロホに合わせたスペシャルジャージで登場

大会最高栄誉のマイヨ・ロホをかけた個人総合争いは、前日の第20ステージで事実上終了。ハードな山岳でマスは赤のジャージを守り切ってみせた。そして最後は、13日間にわたってキープし続けたマイヨ・ロホを最終目的地へと運ぶのみである。目指すはグラナダの街。

グランツール最終日のならわしはもちろん、この大会でも生かされる。スタート前には今シーズンでキャリアを終えるステフェン・クライスヴァイク(チーム ヴィスマ・リースアバイク)、ダビ・デラクルス(ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チーム)、ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、マグナス・コルト(ウノエックス・モビリティ)、ヘスス・エラダ(ブルゴス・ブルペレット・BH)を送るセレモニー。温かな雰囲気の中でスタートが切られたが、ここまでのステージとは異なりゆっくりとしたペース。勇者の行進よろしく、しばらくはパレード走行である。

勝利チームのモビスター チームは全身赤に身を包んだマスだけでなく、他のメンバーも赤ベースの特別ジャージを着用。胸のスポンサーロゴとビブショーツは、マイヨ・ロホのカラーに合わせている。彼らが記念撮影のために横一列になった様は、壮観そのものである。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

4賞ジャージでの記念撮影

この日限定の赤い軍団は、スタートから20kmほど進んだところで少しずつ集団統率を本格化させる。フィニッシュまでおおよそ90kmを残して、今大会最後の責務へと腰を上げた。

引退のコルトに捧ぐステージ優勝

モビスターが先導する集団は、いよいよグラナダの市街地周回へ。9.8kmのコースを5周回。なお、最終の5周目は安全確保のためにニュートラルとすることが前もって決まっている。これにより、4周回を終えた時点での所要時間を総合タイムに反映させる措置がとられる。

レースが動いたのは3周目。グルパマ・FDJユナイテッドがペースを上げて、バスティアン・トロンションを先頭へと送り出す。追随した選手を含めて8人の先頭グループが集団に対して10秒ほどのリードで進んでいく。

この周回を終えようかというところで、メイン集団が分裂。前のグループに入った選手たちが先頭の8人を追いかけて、4周目を迎えるタイミングで合流。最前線には35人が位置する一方で、大集団は再びモビスターが統率してレースクローズの態勢に。ステージ優勝争いは前を急ぐ選手たちにゆだねられた。

最終周回に突入すると、上り区間でビルバオが抜け出す。数秒後ろでは、この日の優勝候補筆頭にも挙げられていたワウト・ファンアールト(チーム ヴィスマ・リースアバイク)が遅れて優勝争いから脱落。

ビルバオの先行は長く続かず、追いついた選手たちが勢いのままにフィニッシュを目指す。フィニッシュまで5kmとなったところで、先頭は11人。散発的なアタックの中から、ラムセス・デブライネ(アルペシン・プレミアテック)がカウンターで抜け出すと、トビアス・ヨハンネセン(ウノエックス・モビリティ)とアレッサンドロ・ロメレ(XDS・アスタナ チーム)が続く。デブライネが牽く形で最後の1kmに達すると、牽制気味の後続との差が広がっていく。ステージ優勝争いはデブルイネ、ヨハンネセン、ロメレの3人に絞られた。

「キャリア最後のレースになるマグナス(コルト)のために走っていたんだ。ただ、チームから先頭グループに入っていたのが僕だけだったから、マグナスの合流を待ちながらどう立ち回るかを考えていた。前もってマグナスと決めていたのは、最終コーナーを先頭でクリアして、最後まで全開で行くこと。それを思い出して勝負したんだ」(ヨハンネセン)

ブエルタ・ア・エスパーニャ

グラナダの地でWT初勝利のトビアス・ヨハンネセン

ヨハンネセンの加速に反応できたのはロメレだけ。最後の最後は両者のマッチスプリントになって、ヨハンネセンに軍配。コルトを勝利へと送り出すことはできなかったが、代役として十二分の働きを遂行した。

「個人的には3年ぶりの勝利なんだ。長いこと勝利の扉をたたき続けてきて、ようやく開けることができたよ。チームは3週間を通して本当に強かったし、やるべきことはすべてやれたと思っている。第7ステージでアンドレアス(レックネスン)が勝ったことも感動的だったし、昨日の僕の2位もスペシャルな出来事だった。確かな自信を得た末に、今日の勝利をつかんだんだ」(ヨハンネセン)

劇的な勝ち方に興奮が収まらなかったヨハンネセン。その笑顔でポディウムに上がると、ネオンに照らされて一層の輝きを放った。

コンタドール以来となるスペイン勢のブエルタ制覇

ステージ優勝争いの選手たちを見送ったメイン集団は、安全に、安全に最終周回を走行。やがて、モビスターによるウイニングライドの趣きへ。ひときわ目立つ赤の男たちは集団から下がって、完走を果たす7人が横並びになって大勝利をアピール。当然、センターはマスが務める。

「最後まで何が起きるか分からないから、集中して走っていた。最後の数キロで“もう大丈夫だ”と思えて、みんなで一緒にフィニッシュすることにしたんだ。1キロ1キロをかみしめながら走り切ることができ、本当に幸せな時間だったよ」(マス)

ブエルタ・ア・エスパーニャ

美しい情景を引き出す日暮れのグラナダ市街

5度目となるブエルタの総合表彰台で、ついに一番高いところへ上がることになった。31歳での戴冠は、早くから活躍していた彼のことを思えば、時間がかかったと言えるかもしれない。期待されてグランツールを走っても、落車に見舞われたり、体調不良で思うように走れなかったり。外野からはおろか、チーム内からその走りを批判されることもあった。

それらを乗り越えてのグランツール初制覇。それも、自国が誇るブエルタで。スペイン勢のブエルタ制覇は12年ぶり。前回勝ったのは、マスが若い頃に師事したアルベルト・コンタドールである。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

喜びを噛み締めながらチームメートとフィニッシュ

「みんなのおかげで苦しい時期を乗り越えることができた。感謝を結果で示せるのが本当にうれしいよ。今までの努力が報われた瞬間だ。」(マス)

ブエルタ史上初めて最終目的地となったグラナダのポディウムには、晴れてマイヨ・ロホを贈られたマスの姿が中央にあった。脇を固めたのは個人総合2位のプリモシュ・ログリッチレッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)と、同3位のフェリックス・ガル(デカトロン・CMA CGM チーム)。最終的な総合タイム差は、それぞれマスから2分15秒と2分44秒だった。

今大会の4賞もバラエティ豊かな顔触れに。ポイント賞のマイヨ・ベルデは、ワウトが初受賞。山岳賞のマイヨ・デ・ルナレスには、サンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)。ヤングライダー賞のマイヨ・ブランコは、個人総合でも6位となったオスカー・オンリー(ネットカンパニー・イネオス)が獲得している。

2027年大会はガリシア開幕

ブエルタは華やかな閉幕と合わせるようにして、次回大会の開幕地を発表。スペイン北東部・ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラがその大役を務めることが決まった。

2027年は、7月25日が日曜日にあたるカトリックの聖年“シャコベオ・イヤー”にあたる。それに合わせる形で、キリスト教の三大聖地である同地でのブエルタ開幕を実現させる。

なお、スーパー世界選手権が夏に開催される関係で、ブエルタは少しばかり遅れての催しに。9月4日から26日までの日程で行われる。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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