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サイクルロードレース コラム 2026年8月29日

レックネスンが崩御の国王に捧げる、ノルウェー勢として16年ぶりのブエルタ勝利|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第7ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

逃げ切ったアンドレアス・レックネスンが初優勝

第81回ブエルタ・ア・エスパーニャは8月28日、ヴァル・ダルバ〜アラモン・バルデリナレス間の山岳コースで第7ステージ(149.8km)が行なわれ、ウノエックス・モビリティのアンドレアス・レックネスン(ノルウェー)が初優勝。同国のハラルド国王がこの日の朝に逝去し、左腕に喪章をつけて臨んでいた。総合1位のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ・XRG)は最後の山岳で総合上位のライバルを置き去りにする強さを見せて首位を堅持した。

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今大会最初の山頂フィニッシュに注目

第7ステージはイベリコ山脈での本格的な山岳ルートで行なわれ、5つの峠が設定された。その獲得標高は3685mだ。

●山岳賞ポイント
プエルト・エル・レモルカドール(52.2km地点、カテゴリー2級)
アルト・デ・スカイナ(66.5km地点、カテゴリー3級)
フエンテ・デ・ルビエロス(104.0km地点、カテゴリー3級)
プエルト・デ・サン・ラファエル(136.3km地点、カテゴリー2級)
アラモン・バルデリナレス(149.8km=フィニッシュ、カテゴリー1級)

第3ステージがゴールに向かう上り坂で悪天候に見舞われてレース中止となったため、この第7ステージが今大会最初の頂上フィニッシュとなった。ゴールのアラモン・バルデリナレスは人気のスキーリゾートだ。

この日の朝にノルウェーのハラルド国王が89歳で逝去し、ウノエックス・モビリティのレックネスンやトビアス・ヨハンネセンら同国選手は左腕に黒いバンドを巻いてスタートの最前列に並んだ。数分後、レックネスンが最初のアタックを決めた。これに反応したのがポガチャルの繰り下がりで緑色のポイント賞ジャージを着用するワウト・ファンアールト(ベルギー、チーム ヴィスマ・リースアバイク)だ。

ポイント賞は第1ステージで勝利したポガチャルがここまでの全ステージでトップの座を守っているが、第6ステージが終わって33点差の2位につけているのがファンアールト。122.3km地点の中間スプリントポイントでの1着通過20点を狙っての飛び出しだ。ゴールの着順によってはさらにポイントが加算され、トップに躍り出ることも可能な位置にいる。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

先頭グループにファンアールトが乗っていた

「逃げるには絶好のチャンスだと思っていた。リーダージャージを着ている時は、こっそり抜け出すのはいつも難しいが、今回は繰り下がり着用なので挑戦してみようと思った」という思惑がファンアールトにはあった。

先頭の2人を追って25人の追走選手が出現した。その中から、この日最初の登りであるプエルト・エル・レモルカドールの最後の1kmでヨハンネセン、ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チームのエディ・ダンバー(アイルランド)、NSNサイクリングチームのアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)が追いついて第1集団は5人に。ウノエックス・モビリティだけが複数の選手を送り込むことに成功した。

バイキング軍団がグランツールで連続勝利

( 2つ目の山岳、アルト・デ・スカイナとそれに続く谷でレース状況は落ち着きを取り戻す。残り60km地点で先頭の5人は追走する第2集団に1分半の差をつけた。UAEチームエミレーツ・XRGがコントロールするメイン集団はさらにその後ろで、その差は6分以上に広がる。

3つ目の山岳、フエンテ・デ・ルビエロスに差しかかると、バーレーン・ヴィクトリアスのペリョ・ビルバオ(スペイン)とスーダル・クイックステップのヴァランタン・パレパントル(フランス)が第2集団のペースを上げる。タイム差は1分10秒に縮まるが、人数が多いため連携がなかなかうまくいかない。先頭集団がこの日の4つ目の山岳、プエルト・デ・サン・ラファエルに挑む頃には、タイム差は再び1分半にまで広がった。

それでもビルバオやパレパントルなど最強のクライマーたちが追い上げを見せる。最後のアラモン・バルデリナレスを前にタイム差は1分に縮まる。一方、メイン集団はこの日は逃げを容認し、7分遅れ。この時点でポガチャルの4勝目はほぼなくなり、総合成績の順位を巡る攻防に転じる。

先頭集団ではレックネスンがゴールまで7.5kmの地点でアタック。ルツェンコとファンアールトが追いかけたが、レックネスンがリードを広げる。最終的に国王崩御という節目の日に、レックネスンが優勝。ウノエックス・モビリティにとってもブエルタ・ア・エスパーニャ初勝利だった。さらにヨハンネセンが最後の1kmでスパートをかけ、34秒遅れの2位に。ワンツーフィニッシュで締めくくった。ファンアールトは47秒遅れの3位だったが、ポイント賞の15点を加算することに成功した。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

一日中先頭を走り勝利を掴んだレックネスン

2025年の国内ロードチャンピオン、27歳の中堅選手レックネスンは一日中先頭を走り、最後は単独になってゴールしたことになる。2010年の第6ステージで、現在はチームマネージャーとして指揮を執るトル・フースホフトが勝利して以来となるノルウェー勢のブエルタ・ア・エスパーニャ優勝だ。チームは2010年に設立され、各チームに散らばっていた北欧出身選手を集めてレベルアップ。2025ツール・ド・フランスではヨナス・アブラハムセン(ノルウェー)、2026ジロ・デ・イタリアではフレドリク・ドゥヴァーシュネス(ノルウェー)、2026ツール・ド・フランスではソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー)がステージ優勝を果たし、そして今回ブエルタ・ア・エスパーニャでも初優勝を遂げた。

「これが何を意味するのか、言葉で言い表すのは難しい。こんなに感情的になるとは思っていなかったけれど、確かにたくさんの感情が込み上げてくる。本当に一生懸命戦ってきたから大きな意味がある。特別な一日だった」とレックネスン。

「ファンアールトとスタートから競り合ったのは本当に大変だった。彼はものすごいスピードで走っていた。そこにヨハンネセンが追いついてきた。おかげで今日は勝てるという自信がついた。ヨハンネセンはグループの中で最高のクライマーだったと思う。最後の登りでどちらかが差をつけたいと思っていた。彼は僕と他選手の間隔を広げる走りをして、僕に勝利を譲ってくれた。本当に誇りに思うし、感謝している」

ドゥヴァーシュネスが2026ジロ・デ・イタリアでステージ優勝した時、レックネスンはその場にいて、勝つことの素晴らしさを知った。ツール・ド・フランス、そして今回のブエルタ・ア・エスパーニャでもチームとしてどれだけ強いかを証明することを目指した。そんなチームの一員であることを心から誇りに思っているという。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

追走グループは20人前後で先頭グループを追う

「今日はチームにとっても、そして母国ノルウェーにとっても特別な日だった。もちろん、大きな視点で見れば小さな出来事だけど、それでもこの日をより特別なものにしてくれた」(レックネスン)

そしてポガチャルの強さも止められない

総合順位争いでは、総合4位のフェリックス・ガル(オーストリア)をエースとするデカトロン・CMA CGM チームがペースを上げ、ガルが残り2kmでアタックを仕掛けた。ポガチャルと総合2位エンリク・マス(スペイン、モビスター チーム)がこれに反応。ガルを捕らえたポガチャルは自らのペースで走り、先行していた選手らに続いて19位でゴール。ガルは6秒遅れ、マスは16秒遅れ。

第7ステージを終え、総合1位ポガチャルのリードはマスに3分50秒、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)に4分50秒、ガルに5分01秒となった。

「フェリックス・ガルが飛び出したので、僕もそれに続いて、彼と同じペースで走り続けた。彼らがついて来られないと分かったので、登りの頂上までプッシュし、総合優勝を狙う選手たちに対して少しリードを奪うことができた。僕たちは総合優勝を目指してここにいるのであって、ふざけているわけではないから」とポガチャル。

ポガチャルは個人総合とともに山岳賞でもトップを守ったが、ポイント賞はファンアールトがポガチャルをついに逆転した。

「一日中先頭を走っていたが、かなり大変だったので、最後の登りでその代償を払ってしまった。それでも自分のパフォーマンスにはとても満足している。今日は本当に調子がよかった。レックネスンとは以前から仲がよく、彼が最後にやり遂げたのでうれしさもある。彼はこの勝利にふさわしい」とファンアールト。

「繰り下がりジャージを着ているだけよりも、ポイントランキングで首位に立つ方が明らかに気分いい。順調に進んでいる。できるだけ多くのポイントを獲得しようと努力している。ポガチャルもいるし、明確なライバルもいる。最後まで激しい戦いになるだろうが、準備はできている。マシュー・ブレナンがライバルになってくれたら、なおさらうれしい。彼はチームメイトだから、彼も一緒に戦ってくれるといいな。でも、一番難しいのはタデイを倒すことだろう」(ファンアールト)

ブエルタ・ア・エスパーニャ

この日は町中も沿道も観客がたくさん詰めかけていた

「最後の登りはやはりきつかった。正直、どう表現すればいいのか分からないけど、今日は力を発揮するのが難しかった。終盤は調子がよくなかったんだ」とヤングライダー賞トップを守ったネットカンパニー・イネオスのオスカー・オンリー(英国)。

オンリーは第4ステージで体調を崩してしまい、今もまだ回復に努めているという。
「日ごとによくなってはいるけど、グランツールで回復するのはなかなか大変。少しずつよくなって日曜日までには大丈夫になっているといいけど」(オンリー)

第8ステージは大会第1週での最後の平坦コース。スプリンターにチャンスがあり、各チームの任務は逃げ集団をコントロールすること。ただしステージ最終盤にカテゴリー2級のバルクスがあり、この上りを克服してゴールスプリント勝負に参加しなければならない。

文:山口和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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