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サイクルロードレース コラム 2026年9月12日

フィニッシュ前450mでの大逆転! エディ・ダンバーが山岳制す マスは総合首位キープで最終決戦へ|ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 レースレポート:第19ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ブエルタ・ア・エスパーニャ

ダンバーが先行するブイトラゴを追い抜き区間優勝

終盤戦に入っているブエルタ・ア・エスパーニャ2026。第19・第20ステージはマイヨ・ロホをかけた山岳最終決戦である。その1日目、個人総合争いとは別でステージ優勝争いが展開されて、エディ・ダンバー(ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チーム)が最終登坂のペニャス・ブランカスを征服。逃げメンバーによる勝負は、フィニッシュ前450mでの大逆転劇だった。

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「自分の力をどこで発揮するべきか、慎重に見極める必要があった。1回のアタックで決めるしかないと思っていたから、それを確実に勝利につなげないといけなかった。賭けだったけど、うまくいったよ」(ダンバー)

アタック合戦がレース中盤まで続く

例年以上に山岳色が濃いと言われるブエルタにあって、ここからの2日間がひときわ大きな存在感を放つことになる。事実上の最終決戦となる山岳2連戦。その1つ目となる第19ステージは、1級山岳ペニャス・ブランカスの頂上へ。コースなかばに待つ3つのカテゴリー山岳も合わせると、この日だけで獲得標高は4190m。今大会最長となる210.8kmものレース距離が、過酷さに追い打ちをかける。

前日の個人タイムトライアルを勝ったシュテファン・キュング(チューダープロサイクリング チーム)が、先に控えるロード世界選手権へのコンディション調整を優先し出走を取りやめ。エフゲニー・フェドロフ(XDS・アスタナ チーム)もスタートラインにはつかず、146人でスタート地ベレス=マラガを出発した。

リアルスタートからしばらくは出入りの繰り返し。たびたび数人単位のパックが逃げを試みるが、この日は集団がなかなか容認しない。序盤のうちは落ち着かないまま進んだが、2級の上りに差し掛かった70km地点で数人がリードする状況に。メイン集団ではなおもアクションが繰り返されていて、個人総合4位のリチャル・カラパスEFエデュケーション・イージーポスト)と、同じく5位のオスカー・オンリー(ネットカンパニー・イネオス)が前をうかがう姿勢を見せている。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

眼下に広がる地中海を望みながらプロトンは進む

レーススタートから100kmを過ぎても前線の状況はめまぐるしく変動を続ける。一時は20人近くが先行したが、その多くが集団へと引き戻された。一方で、ダンバーとチームメートのトーマス・グローグが先頭で生き残ると、そこを目指しての新たな動き。フィニッシュまで85kmを残したところで17人の先頭グループが形成され、ようやく集団は落ち着く。カラパスが再度先行を図ったが、早いうちに集団へ戻る判断をしている。

その後はリーダーチームのモビスター チームが集団をコントロール。先を急ぐ先頭グループとの差は次第に拡大していくが、追う姿勢は見せない。最終登坂のペニャス・ブランカスを前に、ステージ優勝争いと総合上位陣とは別のレースになった。

数的優位を作り出したピナレロ勢、最後はダンバーが決める

先頭グループは16人でペニャス・ブランカスへと入っていく。フィニッシュまでの18.8kmは平均勾配6.5%で、部分的に15%を数える急坂ポイントも。上り始めてすぐにリュディ・モラール(グルパマ・FDJユナイテッド)がアタックしたのを機に、逃げメンバー間での登坂力の差がはっきりとしてくる。モラールの独走は長くは続かず、代わって山岳賞で首位を走るサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)が加速。すかさずグローグがチェックし、少しおいてダンバーとウルコ・ベラーデ(エキポ ケルンファルマ)が合流した。

ピナレロ・Q36.5プロサイクリング チームが先頭に2人を送り込み、さらにはマルセル・カンプルビが追走パックを崩壊させ、みずから前への合流を試みている。好況を作り出したピナレロ勢。フィニッシュ前2kmでのブイトラゴがアタックは、ダンバーが一定ペースで追いかけた。

「さすがにあのアタックはすさまじかったね。僕もブイトラゴのような脚が欲しいよ。とにかくレッドゾーンに入らないようにだけ気を付けながら、フィニッシュまでのペース配分を考えていた」(ダンバー)

ブイトラゴが逃げ切るかに思われたが、フィニッシュ直前の急坂区間でダンバーが猛追。残り1kmポイントで10秒あった差はあっという間に縮まって、フィニッシュ前450mで逆転。ブイトラゴには抵抗する脚が残っておらず、最後のひと踏みにかけたダンバーに軍配が上がった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

数的優位で先頭グループに乗ったピナレロ勢

「本当は調子が良くなくて、チームカーにも逃げるには厳しいと伝えていたんだ。ただ、走っていくうちに感覚が良くなってきて、一緒に逃げた2選手(グローグ、カンプルビ)とも連携ができた。何かあれば彼らに託そうと思っていたし、今日勝てたのも数的優位に持ち込めたことが大きかったからだよね」(ダンバー)

今年は3月にトレーニング中の事故で脚を負傷。3カ月間バイクに乗れなかったといい、今大会を目標にすること自体が奇跡だという。また、2日前にはガールフレンドの祖母が亡くなったといい、このステージに賭ける想いは誰よりも強かった。

「彼女がレースを観に来てくれる予定だったんだけど、それどころではなくなってしまったんだ。今日はずっと彼女たちのことを考えながら走った。それこそが僕の原動力になったね」(ダンバー)

マスは総合リードをキープ マイヨ・ロホへ勝負はあと1日

先頭グループとは最大で7分30秒近くまで差が広がったメイン集団。前に総合成績を動かす存在がなかったこともあり、上位につける選手たちは集団待機で来たる局面に備えた。

モビスターが長くコントロールし、ペニャス・ブランカスに入るとEFエデュケーション・イージーポストやネットカンパニー・イネオスも上がってくる。さらには、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエが人数をかけてペースアップ。

その流れから、残り2kmでプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。マイヨ・ロホのエンリク・マス(モビスター チーム)の反応が一瞬遅れたが、冷静に対処。個人総合上位陣はいずれも崩れることなく、フィニッシュとの距離を減らしていく。

残り1kmではヤコブ・オムルゼル(バーレーン・ヴィクトリアス)が踏み込み、さらには個人総合3位のフェリックス・ガル(デカトロン・CMA CGM チーム)もスピードを上げたが、ここもマスはしっかり立ち回って彼らの攻撃を防ぐ。そのままレースはクローズして、上位陣の変動は起こらず。

この結果、マスはログリッチとの総合タイム差1分37秒をキープして続く第20ステージへ。夢のマイヨ・ロホ戴冠に向け、地盤は固まりつつある。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

ログリッチのアタックに冷静に対応したマス

「今日は1日を通して僕たちがコントロールできた。セップ(クス)やリッチー(カラパス)がステージ優勝を狙っていたみたいだけど、彼らの総合成績を考えると、僕たちとしては抑えないといけなかった。あと1日? そうだね。明日は今大会で最もハードなステージだと思うけど、3週間継続してきたことをやるだけ。最後まで集中して走るよ」(マス)

マイヨ・ロホ争いは第20ステージが実質の最終バトル。186.8kmに5つの山岳が詰め込まれた獲得標高4850mのコースが舞台になる。クライマックスは、初登場の超級山岳コリャド・デル・アルガシル。この山がすべてを知っている。最終・第21ステージは慣例として個人総合争いは行わないので、アルガシル頂上でのマイヨ・ロホを受け取った選手がブエルタ2026の王座を確定的にする。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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