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アルプス3連戦の初日はカラパスが逃げ切り勝利 体調不良者続出のUAE、ポガチャルはアルプ・デュエズをどう戦う?|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第18ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介強さを見せたリチャル・カラパスが区間勝利
終盤戦に突入しているツール・ド・フランス2026。いよいよ最終決戦地・アルプスへとプロトンが踏み込む。ここからは山岳3連戦。その初日となる第19ステージでは、1級山岳オルシエール・メルレットの頂上を目指した。勝負は逃げメンバーにゆだねられて、最後はリチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)がモノに。ツールでは2年ぶりの勝利だ。
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「今日は“ステージ優勝を狙う”という明確な意志があった。それが大きなモチベーションだったし、レース展開も僕にピッタリだった。特に最後の上りは脚質に合っていて、勝負をするには最高の条件がそろっていた」(カラパス)
山岳最終決戦のはじまり
ツールといえばアルプスかピレネーが最終決戦地になることが多いけど、いつ訪れてもそのムードは緊張感に覆われている。今年だってそう。やはりアルプス3連戦ともなると特別なのだろう。この3日間で個人総合争いの行方が決まるわけで、ステージ優勝にフォーカスする選手たちにとってもチャンスは残りわずか。スプリンターであれば、完走をかけた運命の日々でもある。パリへ行く前に、残されたミッションをライダーたちは果たさねばならない。
そんなアルプスの初日。前日のフィニッシュ地を務めたヴォワロンが今度はプロトンを見送る。序盤で1級山岳アンジャン(登坂距離11.4km、平均勾配5.4%)を上り、その後も2級・3級と登坂をこなす。中間スプリントポイントを経て終盤に入ると、3級山岳を越えたのちにオルシエール・メルレットへ。フィニッシュへの上りは7.1kmで、平均勾配は6.7%。実際のところは最後の15kmはほぼ上り通しである。
早い段階で5人が先行をしたが、確たるリードを奪うまでにはいかない。スタートから25kmを過ぎてアンジャンの上りに入ると、先頭ライダーがシャッフル。数人が新たに先行したところで、マイヨ・ヴェールを着るマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)も合流。前日は中間スプリントポイントを1位通過しながら、フィニッシュで不発に終わったが、改めてポイント獲得に向けて果敢に動く。
中間スプリントポイントのために1級山岳もほぼ先頭グループで越えるピーダスン
メイン集団とのタイム差を徐々に広げていくピーダスンたちは、中間地点を越える頃には5分以上のリードを確保。129km地点に設置された中間スプリントポイントでは、ピーダスンが1位通過。ねらい通りに25点を加算させたマイヨ・ヴェールは後ろに下がっていく一方で、この頃には大人数の追走グループが形成されていて、そのうちの数選手が先頭合流に成功。フィニッシュまでの距離が50kmを切った段階で、14人がレースをリードする立場にあった。
カラパスはステージ優勝狙いを継続
ハイスピードで突き進む先頭グループでは、マッテオ・ジョーゲンソン(チーム ヴィスマ・リースアバイク)ら数人がペースを上げて新たなパックを形成。そこへカラパスらが追いついて、6人による逃げの態勢を整える。後続とのタイム差を広げると、十分なタイム差を持ってオルシエール・メルレットへ。逃げ切りは濃厚だ。
上りに入ると、ジョーゲンソンが繰り返しアタック。ただ、そのいずれもがチェックにあって抜け出せない。チャンスを冷静に見極めたカラパスは、ヴァランタン・パレパントル(スーダル・クイックステップ)の揺さぶりをかわして残り4kmでカウンターアタック。V・パレパンドルが食らいついたが、500mほど進んだところでカラパスが振り切って独走態勢に入った。
「アグレッシブに走ることが僕の信条だからね。調子が良いと分かればチャレンジあるのみだよ。今日は脚力・精神力・コース条件、すべてがそろっていたんだ」(カラパス)
大観衆の待つオルシエール・メルレットの頂上へ一番に到達。今大会は山岳ステージでたびたび逃げを試みてきたけど、ついに成就のときを迎えた。ツール通算では2勝目、2024年大会の第17ステージ以来の勝利だ。
「大会が始まって以降、目標がぶれることはなかった。チーム内で今日は誰が逃げるのかという話になったときも、僕が最適だとみんなが言ってくれて、レースが始まってからも全力でサポートしてくれた。チームからの信頼に応えられたことが本当にうれしいよ」(カラパス)
逃げ切りをきめた先頭グループ
過去のツールでは総合表彰台にも上がっているカラパスだけど、今年は開幕時からステージ優勝にねらいを定めてきた。意識的にタイムをロストしたステージもあり、逃げられる状況を日々構築してきた。この走りで個人総合でもトップ10圏内に入ったが、さして意識するつもりはない。
「総合成績は考えていない。明日以降もステージ優勝を狙っていきたいし、状況が許すなら山岳賞を目指したい。いずれにしても最優先すべきはステージ優勝。1勝して終わりにするつもりはないよ」(カラパス)
ちなみに山岳賞争いでは、トップのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)から7点差の3位につけている。
ポガチャル「アルプ・デュエズへの自信はある」
逃げた選手のうち7人がステージ上位を占めて、その後メイン集団がフィニッシュへとやってきた。カラパスからは4分35秒差で、個人総合上位陣はすべてこの中で走り終えている。一時は先頭グループとの差が8分台まで広がったけど、終盤にかけて数チームが集団のペースを上げてタイム差を調整した。
アルプスの山並みがプロトンを見守る
ポガチャルのマイヨ・ジョーヌそのものは安泰なのだけど、いささか心配なのはUAEチームエミレーツ・XRGに体調不良者が続発していることだ。アダム・イェーツが胃腸炎で前日の第17ステージを苦しみ、この日はティム・ウェレンスとブランドン・マクナルティが早々に集団から脱落。マクナルティはリタイアし、ウェレンスは完走こそしたもののタイムアウトまで2分とギリギリだった。
「ブランドンのリタイアは本当に悲しいし、レースにも響くと思う。幸い、アダムの体調が戻ってきていて、他のメンバーは好調をキープしている。ティムもきっと痛みを乗り越えて走ってくれるはずさ。明日はレースの流れを見ながら僕自身どうするかを判断したい」(ポガチャル)
次の第19ステージで、ついに名峰アルプ・デュエズへ。連続登坂となる第20ステージも含めて、ツール2026のすべてをこの山で知ることになる。大一番を前にひと言求められたポガチャルはきっぱり。
「アルプ・デュエズ? 自信はあるよ」
その短い言葉に、王者の強い意志が込められていた。
文:福光 俊介 from Orcières-Merlette, France
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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