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プレッシャーをはねのけたフィリプセン マチューとのホットラインが完全に機能して今大会初勝利|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第17ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介フィリプセンついに勝利を挙げた
カテゴリーのうえでは平坦コースに位置付けられた第17ステージ。大小のアップダウンがスプリンターには厳しいのではないかと見られたなか、結果的に逃げ切ることになるメンバーにスプリンターが複数人含まれた。最後は26人による勝負で、ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・プレミアテック)がステージ優勝。今大会の活躍が期待されていたスプリンターが、ついに勝利を挙げた。
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「チームは第1ステージから僕のために尽くしてくれていた。とにかくステージ優勝がしたかった。期待に応えられて本当にうれしい。プレッシャーへの対処が大変で、ようやく解放された気分だよ」(フィリプセン)
アルプス決戦前の平坦コース
アルプスの山々が目の前にそびえている。山岳での最終決戦を前に、プロトンはひとつ平坦ルートをこなす。スプリンターには厳しいと前述したのは、コースを通して大小のアップダウンが待つタフなレイアウトにある。最終盤も緩やかな上りが続いているうえ、最後の1kmはコーナーの連続。なかなかに神経を使うコースだ。
レースは、今大会たびたび逃げを打っているバティスト・ヴェルトロフール(ロット・アンテルマルシェ)のファーストアタックで幕開け。プロトンは活性化する一方で、逃げらしい逃げは発生しない。ときおり集団が割れたりもしたが、レースの流れを左右するほどではない。
そんな状態が40kmほど続いて、ようやく22人が先頭グループを形成する。少しずつ人数を増やしていくが、その中にはマイヨ・ジョーヌのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)の姿も。40人が実質のメイン集団としていくつかの上りをこなすと、やがて14人が新たな先頭グループを形成した。
のちに合流した選手も含めて、先頭は16人に。メイン集団とのタイム差は1分前後で進行するが、フィニッシュまで65kmとしたところでマイヨ・ヴェールのマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)が集団からアタック。自力で先頭合流を成功させると、これをきっかけに集団のペースが落ち着いて、前を行く選手たちでの勝負が本格化した。
マチューのリードアウトからフィリプセンが加速
ピーダスンは残り57kmで再び仕掛けて、同調した5人と先行を開始。それまで逃げていたメンバーとの差は1分近くまで広がり、さらに約30秒差でフィリプセンが追走グループを組む。この頃にはポガチャルらを含んだメイン集団はペースを抑えていて、逃げ切りを容認する姿勢に。
ストゥイヴェンは単騎でトライ
147.5km地点に設置された中間スプリントポイントは、ピーダスンが狙い通りに1位通過し25点を加算。この直後にヤスペル・ストゥイヴェン(スーダル・クイックステップ)が単独で飛び出して、独走に持ち込む。ピーダスンらはフィニッシュまで20kmを切ったところでフィリプセンらのグループとまとまって、改めてストゥイヴェンを追う構えを整える。
ひとり逃げを続けたストゥイヴェンは、残り4kmで追走グループに捕まる。集団は最終局面に向けてスピードが上がる中、数人がカウンターでアタックを試みるも失敗。残り1kmでのジョシュア・ターリング(ネットカンパニー・イネオス)の攻撃も実らず、26人が一団で最終局面を迎えた。
いの一番に最終コーナーを抜けたのはマチュー・ファンデルプール(アルペシン・プレミアテック)。その背後でスプリントタイミングを測ったフィリプセンは、加速するやマウロ・シュミット(チーム ジェイコ・アルウラー)やオラフ・コーイ(デカトロン・CMA CGM チーム)を引き離してフィニッシュラインへ。大会17日目でようやく勝利の美酒を味わうときを迎えた。
「ピーダスンらが逃げている間も僕らのグループにはチームメートが4人いて、絶対に追いつけると思っていた。この展開は自分に流れが向いていると感じていたから、何としても勝たなきゃいけなかった」(フィリプセン)
ポイント賞争いの行方は……
難産の末につかみとったステージ優勝。チーム目標を果たすためには、みずからのスプリント力がカギを握っていた。それゆえ、プレッシャーも相当だった。
「チームの誰かが僕に“絶対に勝て”と言っていたわけじゃない。でも僕は何をするべきか分かっていて、それが勝利なんだ。マチューが1勝(第9ステージ)していたから安心はしていたけど、チームが僕にも期待していることは理解していた。日に日にプレッシャーは高まっていたけど、その中でも仕事をするのが僕たちなんだ」(フィリプセン)
おなじみのマチューとのホットラインが今大会でも完成。これこそがアルペシン・プレミアテックの勝ちパターンだ。
前半に4つの山岳があり集団は落ち着かなかった
「僕にとってはなくてはならない存在だよ。マチューは今日、集団のコントロールも担っていて、その後にリードアウトまでしてくれた。そんな仲間がいるのはチームにとって大きなアドバンテージだし、僕個人としても恵まれているよね」(フィリプセン)
ピーダスンがステージ8位で終わったこともあり、ポイント賞争いでは7点差にまで迫っている。フィニッシュだけでなく、中間スプリントポイントでも得点を獲り続けてきた。マイヨ・ヴェールは視野に入ってきているのだろうか。
「さすがに厳しいかなと思っている。ピーダスンは中間スプリントポイントでたびたび1位通過していて、タフな姿を見せているからね。明日から山岳ステージが連続するし、上りをこなした後にスプリント機会があるのも僕には不利。パリでどんな結果になっているか見てみよう」(フィリプセン)
一番でフィニッシュラインを越える瞬間は、チーム全員にとって最高の経験
ステージ47位までを逃げた選手たちが占め、メイン集団はフィリプセンから8分46秒差でのフィニッシュ。UAEチームエミレーツ・XRGが統率して、レースをクローズさせた。個人総合順位の変動はなく、ポガチャルはマイヨ・ジョーヌを着てアルプスへと向かう。
このステージでは、重要な山岳アシストのアダム・イェーツが胃腸炎により集団から大きく遅れてレースを完了。途中では、いまにも止まるのでは……というスピードで走っている姿が国際映像にも映し出された。
「昨日が特に状態が悪かったようで、ロードレースステージだったら完走できなったんじゃないかと思うくらいだった。今朝は顔色がよくなっていて、朝食も摂れていたから少しは安心しているよ。今日は僕にとっても苦しいステージだったから、彼はもっと大変だったと思う。明日はともかく、クイーンステージ(第19ステージ)には回復していると信じたいね」(ポガチャル)
氷河期の溶けた水が作り出した湖のほとりを走る
個人総合2位のレムコ・エヴェネプール(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とは総合タイム差4分32秒。リードは十分なようにも思えるけど、眼前のアルプスへ何を思うだろうか。
「スタッフを含め100人以上が僕の勝利のために働いてくれているんだ。チームひとりひとりのハードワークが報われるように全力で走りたい。みんなが僕のモチベーションなんだ。一番でフィニッシュラインを越える瞬間は、チーム全員にとって最高の経験になるんだ」(ポガチャル)
次の第18ステージから、いよいよアルプス3連戦。まずは1級山岳オルシエール・メルレットを目指して。この日選手たちを迎えたヴォワロンの街が、今度は山岳へと送り出す役目を担う。
文:福光 俊介 from Voiron, France
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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