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レムコがベルギー建国記念日にステージ優勝 通算3回目となる個人TT勝利で総合表彰台へ弾み|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第16ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介個人タイムトライアルのステージを制したエヴェネプール
2026年のツール・ド・フランスも残すところ1週間。大会最終週の戦いが始まって、第16ステージは26.1kmの個人タイムトライアルで争った。個の走力を試す一戦は、この種目の世界王者であるレムコ・エヴェネプール(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が最速で走り抜いた。第15ステージも勝っているので、休息日をはさんでの2連勝。レマン湖畔を駆け抜けたレースを制し、マイヨ・アルカンシエルは湖面よりも光り輝いた。
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「今日はベルギーの建国記念日なんだ。家族全員が来てくれて、本当に特別なレースになったよ。コース沿いにいたたくさんの観客にも感動した。ただただ誇らしくて、ステージ2連勝できたなんて信じられないよ」(レムコ)
主催者予想を大幅に上回る高水準の争い
2回目の休息日を過ごしたツール一行。目指すはもちろんパリだけど、その前に立ち寄る場所がいくつもある。アルプスに急ぎたいところだけど、まずはレマン湖畔での個人タイムトライアルをこなそう。
スタート地エヴィアン・レ・バンは1926年大会のグランデパール(開幕地)を務めていて、ツールとの縁が深い。街の名からもイメージできる通り、ミネラルウォーター「エヴィアン」の里でもある。
レマン湖畔と前述したけど、実際のところは湖とは離れた丘側を選手たちは走る。26.1kmの行程は、前半3分の1が2級山岳コート・ド・ラランジュに向かっての上り。9.7km地点で頂上を通過したら下り。テクニカルなダウンヒルの後は、トノン・レ・バンの市街地走行。いくつものコーナーやラウンドアバウトが潜んでいて、ハンドリングも試されるレイアウトである。
個人総合成績の下位ライダーから順に、1分30秒おきにコースへと繰り出す。なお、上位15人は出走間隔が2分に広がる。前半スタート組で最も速かったのが、ブリュノ・アルミライユ(チーム ヴィスマ・リースアバイク)の34分14秒。当面の基準タイムとなったが、100人以上がスタートしたところでマティア・カッタネオ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が好タイム。34分1秒で走って、その後長くホットシートにつくことに。
レマン湖畔を疾走するガンナ
しばらくカッタネオを脅かす選手が表れなかったが、やはり個人総合上位陣が出てくると水準が上がる。同7位でスタートしたマティアス・スケルモース(リドル・トレック)は、4.8km地点の第1計測ポイントからトップタイムを更新。9.7km地点の第2計測、18.1km地点の第3計測とトップを保つ。フィニッシュでは、この日初の34分切りとなる33分23秒をマーク。レース前の主催者予想では35分前後での争いと言われていたけど、そのはるか上を行く争いが繰り広げられている。
リポヴィッツが落車リタイア
スケルモースの走りをきっかけに、上位陣の僅差の争いへと焦点が移る。どの選手も攻めの走りを見せるが、個人総合5位でスタートしたフロリアン・リポヴィッツ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は、終盤の右コーナーでタイヤを滑らせ落車。激しく体を打ち付けてしまい、無念のリタイア。
それでも、戦いは続く。同4位のポール・セクサス(デカトロン・CMA CGM チーム)も快調に飛ばして、スケルモースから10秒前後の遅れにとどめる。フィニッシュでは12秒差とまずまずだ。
同3位でヤングライダー賞のマイヨ・ブランを着るイサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ・XRG)は、第1計測でスケルモースを上回る。その後は10秒前後のタイム差で進行し、最終的には17秒差。セクサスとの争いになっているマイヨ・ブランは、ひとまずキープした。
序盤からトップタイムで快走したレムコ
残すはトップ2。この種目の世界王者で、マイヨ・アルカンシエルで登場したレムコはスタートからハイペース。第1計測から他選手に20秒以上の差をつけると、上りを終えた第2計測ではスケルモースに1分近い差とする。下りも安定した走りを見せると、最終盤で再びフルスロットル。フィニッシュではトップタイムを1分4秒更新する32分19秒で走破。圧倒的な走りを見せて、マイヨ・ジョーヌのタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)を待つのみとした。
区間2位となったポガチャル
「上り終えた後の1.5kmほどあった平坦区間が難しかった。横風の中を押し通さなければならなかったんだ。下りでも木々の間から突風が吹いてきたりでテクニックが必要だった。どうにか冷静さを保って、チームカーからの無線に耳を傾けた。下りでは過信しないようにして、終盤の平坦区間でさらに踏み込むことにしたんだ」(レムコ)
最終走者のポガチャルは、レムコまでは届かなかったが第1計測から2番時計をキープ。終盤にリポヴィッツが落車したコーナーでオーバーランしかけたものの、冷静に対処。最後までペースを保って、フィニッシュではレムコから28秒差で終えた。
「勝ちたかったから、この結果は悔しいよ。でも今日はレムコが一番だった。もちろん受け入れているし、これからはアルプスに向けて気持ちを高めていきたいね」(ポガチャル)
休息日をはさんでの、レムコのステージ2連勝が決まった。
レムコ「“2番手”を守ることに全力を注ぐ」
ツール通算4勝目、うち3つが個人タイムトライアルと、レムコとツールの個人TTステージとは相性が抜群だ。しかも、この日はベルギーの建国記念日。国民にとって大事な一日に勝利を挙げ、胸を張った。
「建国記念日に勝ったベルギー人ライダーは久々みたいだね。すごくうれしいよ」(レムコ)
この先に控えるアルプス決戦へ。改めて目標を問われ、個人総合2位のキープに注力していきたいとした。
「タデイは“別の惑星”にいる選手だからね。次のグループに僕が含まれていると考えている。とにかく“2番手”を守ることに全力を注ぎたい。それがパリまでの目標さ」(レムコ)
今大会はリポヴィッツとのダブルリーダー体制を敷き、そろって上位戦線を走ってきた。ときに両者がかみ合わず不本意さを口にすることもあったが、彼が大会を去るとなるとやはり悔しい。
「もう苦痛でしかない。レース中やフィニッシュ直後は知らなかったんだ。いつ知ったかって? 僕がステージ優勝を喜んだ直後だよ。ここまで大きな犠牲を払って準備をしてきただけに、たったひとつのコーナーですべてが台無しになるなんて本当に悲しい」(レムコ)
マイヨ・ブランを守ることができたデルトロ
残るステージは、単独リーダーとしてパリを目指す。ポガチャルの強さをいま一度聞かれると、この時代にともに戦えることの喜びを語った。
「“タデイが勝つと退屈だ”なんて声があるけど、誰がそんなことを言うのだろうね。僕からすればリスペクトしかないよ。正直に言えば、どうやったら彼に並べるかが分からないくらいだ。一緒に戦えてものすごくエキサイティングだし、5度目の個人総合優勝へ向かっている姿を間近で見ることができている。決して退屈だなんて思わないでほしいね」(レムコ)
ポガチャルの視線はすでにアルプスへ
そのポガチャルはレムコに敗れたとはいえ、総合タイム差が4分32秒あり、そう焦る雰囲気はない。敗戦を「さらなる情熱になる」と言ってアルプスへと向かう。
「レムコはタイムトライアルにおいて“レジェンド”だからね。史上最強のライダーに次ぐ2位なら何も恥ずかしいことはないよ。アルプスに向けて? アルプ・デュエズ2連戦はすごい盛り上がりになるだろうね。マルクシュタイン(第14ステージ)もすごい熱気だったけど、アルプ・デュエズはそれ以上になるかもしれない。大会の締めくくりとしてはこれ以上ない舞台だと思うよ」(ポガチャル)
そのアルプスの前に、第17ステージ。174.7kmのコースはカテゴリー上は平坦なのだけど、大小のアップダウンがレースを難しいものにするとの予想。今大会最後の集団スプリントになるかもしれないし、逃げが決まるかもしれないし……とにかくタフなコースであることは間違いなさそうだ。
文:福光 俊介 from Thonon-Les-Bains, France
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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