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ヴィンゲゴー悪夢の落車リタイア。エヴェネプールがポガチャルを制して総合2位に|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第15ステージ
サイクルロードレースレポート by 山口 和幸エヴェネプールが超級山岳ステージで区間勝利
2026ツール・ド・フランスの第15ステージが7月19日にシャンパニョール〜プラトー・ド・ソレゾン間の183.9kmで行われ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのレムコ・エヴェネプール(ベルギー)が首位のマイヨ・ジョーヌを着るUAEチームエミレーツ・XRGのタデイ・ポガチャル(スロベニア)をゴール勝負で制して、3年連続3度目の区間勝利。総合2位のヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、チーム ヴィスマ・リースアバイク)が落車による骨折でリタイアし、エヴェネプールが同3位から2位に浮上した。
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大会第2週のフィーナーレとなる山岳区間
前日の第14ステージはドイツ語の名残があるアルザス地方のマルクシュタインにゴールしたが、この日のスタートは一気に南下したジュラ県。恐竜時代のジュラ紀の語源となった地域で、言わずと知れた映画『ジュラシック・パーク』のジュラだ。ジュラもフランス5大山岳のひとつだが、今大会は36.8km地点にカテゴリー3級山岳のルスの丘を通過するのみ。
コース後半の3つの山岳はもうアルプスの一角だ。136km地点にカテゴリー1級山岳のラ・クロワゼット峠、146km地点にカテゴリー3級山岳のモンの丘があり、ゴールのプラトー・ド・ソレゾンを目指す。距離11.3km、平均勾配9.1%で、今大会で初めて出現するカテゴリー超級山岳となる。
プラトー・ド・ソレゾンはブリゾン村を見下ろす高原。「プラトー」は登山用語としても定着しているが、ピークが台地となった山容のこと。ツール・ド・フランス初登場だが、クリテリウム・デュ・ドーフィネ(現ツール・オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ)では2017年と2022年に最終ステージが開催された。2025年はヴィンゲゴーがププリモシュ・ログリッチとベン・オコーナーを抑えて優勝したが、総合優勝したのはログリッチだった。
169選手がアン川沿いにある「ジュラの真珠」、シャンパニョールからスタートした。序盤の17.3km地点に中間スプリントポイントが設定されていて、ヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を擁するアルペシン・プレミアテックが集団を支配する。この日もフィリプセンがポイント賞トップのマッズ・ピーダスン(デンマーク)を制して1着通過したものの、最終的にはピーダスンがフィリプセンに31点差でポイント賞のマイヨ・ヴェールを維持した。
激しいアタック合戦は延々と続いた
ここから逃げ集団を巡る戦いが始まる。この戦いは、この日の走行距離183.9kmの半分に及んだ。EEFエデュケーション・イージーポストがリチャル・カラパス(エクアドル)を先頭集団に送り込む。87km地点で先頭集団が形成されたが、総合トップ20の5選手を含む24選手の集団にまとまった。3日連続で動き出したピナレロ・Q36.5プロサイクリング チームのトーマス・ピドコック(英国)、ネットカンパニー・イネオスのエガン・ベルナル(コロンビア)、スーダル・クイックステップのイラン・ファンウィルデル(ベルギー)、チューダー・プロサイクリングチームのヤニス・ヴォワザール(スイス)、UAEチームエミレーツ・XRGのアダム・イェーツ(英国)らが含まれていた。
逃げ集団は調和が取れず、ラ・クロワゼット峠の登りを前にメイン集団とは2分55秒差。ピドコックと米国チャンピオンのクイン・シモンズ(リドル・トレック)が過酷な坂道(4.7km、平均勾配11.2%)で加速する。これに続くのはイェーツ、2日前に勝ったマウロ・シュミット(スイス、チーム ジェイコ・アルウラー)、モビスター チームのエイネル・ルビオ(コロンビア)、グルパマ・FDJユナイテッドのエウェン・コステュー(フランス)、ヴォワザールの5人だけだった。
「ツール・ド・フランスには4回出場したが、いつも両親が来てくれる。両親がここにいるうちにステージ優勝を1回でも果たしたいと思っていた。体質的なものだと思うけど、グランツールでは終盤に近づくにつれて、いつも調子が上がっていく。最初の1週間は本当に苦戦するけど、そこからレースが進むにつれて調子が上がっていく。今年もその調子でレースに臨めていることがうれしい」とシモンズが積極的な走りを見せる。
ヴィンゲゴーがツール・ド・フランスで初リタイア
メイン集団ではチーム ヴィスマ・リースアバイクが力強い追走を続けていたが、残り24km地点で総合2位のヴィンゲゴーが転倒。レースドクターが急行するとヴィンゲゴーの右腕を吊って包帯で固定し、救急車に乗せた。その後の検査で鎖骨骨折と複数の擦過傷を負っていることが判明した。
出走前のヴィンゲゴー
「ヨナスがツール・ド・フランスを棄権せざるを得なかったことは、非常に残念です」と、ステージ終了後、チームが公式サイトでコメントした。「ヨナスがレースを続けられないことはすぐに明らかでした。彼はひどく苦しんでいました」
骨折の重症度から、数日中に手術を受ける予定であるという。過去の出場では1位(2022年、2023年)と2位(2021年、2024年、2025年)という成績を残してきたヴィンゲゴーが6回目のツール・ド・フランスをここで終えた。
シュミットは最後の登り、初登場のプラトー・ド・ソレゾンへの登りを前に加速し、残り11.3km、勾配9%の区間を25秒のリードで走る。一方、シモンズは先頭集団の全員を引き離し、残り9km地点でシュミットを追い抜いて一時トップに。
メイン集団ではレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが好調なペースを維持していたが、山頂から8km手前でポガチャルが先頭に立った。ポガチャルについていけたのはチームメートのイサーク・デルトロ(メキシコ)と総合3位のエヴェネプールの2人だけとなった。3選手はイェーツに追いつき、イェーツはここから先行しているシモンズとの差を縮め、残り4.5km地点で役目を終えた。そしてステージ勝利を目指していたシモンズもついに捕らえられた。
最終的にシモンズは2分16秒遅れのステージ10位でゴールするが、「チームは僕がステージ優勝することよりも、ピーダスンがマイヨ・ヴェールを獲得することをより重視している。結局のところ、僕の給料を払うのはチームなので、言われた通りにする。ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャでポイント賞ジャージを獲得したピーダスンがマイヨ・ヴェール獲得を目指すのを全力でサポートしていきたい。もし僕がその過程で大きな役割を果たせるなら、それもまた特別なことだ」コメントしている。
最後はポガチャルが再びペースを握る。ポガチャルは自らペースを作り、デルトロを勝たせようとする走りに徹した。第2ステージと第14ステージはこうして見事にワンツーフィニッシュした2人だが、この日のエヴェネプールは強かった。デルトロは残り1km地点で何度か加速した。しかし、エヴェネプールがうまく反応し、最終的にポガチャルとタイム差なし、デルトロを6秒遅れと抑えて勝利を修めた。
デルトロの牽引をするポガチャル
前日に初めてヤングライダー賞のリーダージャージ、マイヨ・ブランを獲得したデカトロン・CMA CGM チームのポール・セクサス(フランス)はこの日58秒遅れの4位。総合3位に浮上したデルトロにマイヨ・ブランを奪われたが、依然として総合4位を死守。デルトロとセクサスのタイム差は25秒だ。
レムコは時々励ましが必要だけど手ごわい(ポガチャル)
エヴェネプールは2024年と2025年の個人タイムトライアルでの2勝に続き、ツール・ド・フランスで3度目のステージ優勝を果たした。しかもこれはベルギーにとって大会500回目のステージ優勝である。ヴィンゲゴーが落車リタイアしたことで、エヴェネプールが5分遅れの総合2位に浮上した。
「素晴らしい。感情が震えている。本当に大変な一日だった。かなり厳しいステージだった。最初は調子が悪かったけど、一日を通してどんどんよくなっていった」と涙をにじませながら勝利者インタビューに応えるエヴェネプール。
「史上最高のライダーとレースをしていることを理解してほしい。彼はデルトロとともにこのステージで勝つために、とんでもない登りをしてきた。私にとって、このペースについていけたというのは大きな前進だ。なぜなら、とんでもなく厳しいペースだったからね。『エヴェネプールはこのタイプの登りには耐えられない』と多くの批判を受けてきたので、自分自身にとっても、周りのみんなにとっても、とても大きな意味がある。
勝利を手にし、こんな気持ちで休息日を迎えられるのは素晴らしい。この総合上位争いのメンバーを相手にした本格的な山岳ステージは今回が初めてだった。今回の結果は私の成長を示すもの。チャンスがあれば、両手で掴まなければならない。まだ終わっていないので、この勢いを最後の1週間維持しなければならない」(エヴェネプール)
タイム差なしのステージ2位に終わったポガチャルは、勝者のエヴェネプールを祝福し、勝利を逃したデルトロをねぎらったのちにヴィンゲゴーのことに言及し、「彼のチーム、そしてこの大会にとって、彼がリタイアするのは本当に残念なニュースだ。誰にとっても、こんなことは決してあってはならない」と語った。
美しい風景が広がるツール・ド・フランス
「ヴィンゲゴーがリタイアするのは本当に残念だ。2021年からずっと、僕たちは勝利をかけて競い合ってきた。最初は必ずしもいい関係ではなかったかもしれないが、ここ2年でお互いを尊重し合うよきライバルとなり、ある種の友人関係にもなったと思う。彼がいないツール・ド・フランスは以前とは全く違うものになるだろう」(ポガチャル)
最初の2時間で逃げ集団が形成されなかったのは、UAEチームエミレーツ・XRGにとって非常に助かったという。その後、チーム ヴィスマ・リースアバイクがステージ優勝を狙っていることを察知し、理想的な展開に持ち込んだ。先頭にはイェーツがいて、ステージ優勝を狙うことができた。
結果的には好調のエヴェネプールに勝利をさらわれたが、「プラトー・ド・ソレゾンは30分かかる難関登攀だが、我々は最高のタイムを出したと思う。レムコは時々ちょっとした励ましが必要なだけで、今日はロケットのように速かった。来週も厄介な存在になるだろう」とポガチャル。
「クイン・シモンズにも脱帽だった。彼は今日、超音速だった。その後、デルトロを起用した。ここは彼の得意な登り坂だからだ。でも彼は落車による痛みがあったようで、フィニッシュに向けて少し自信を失っていた。いずれにせよ、彼にとってはいい一日だったし、マイヨ・ブラン獲得と総合順位での浮上に満足できるだろう」
デルトロは「タデイのようなスター選手が私を助けたいと思ってくれるなんて、信じられない。このチームとともに、計画通りにレースに臨めることがうれしい。今日は本当に全力を尽くした。最後はいくつかミスもあったかもしれないけど、結果にはすごく満足している」と語った。
大会は7月20日に2回目の休息日を過ごし、最終週の6ステージに挑む。その舞台の大半はアルプス山脈。しかも第19、第20ステージは2日連続で伝説のラルプデュエズにゴールする。
「これからいい休息日があり、火曜日は素晴らしい天気になりそうなので、そこでもう一度ステージ優勝を目指したいと思う。今回のツール・ド・フランスはで最高のコンディションで走れているのは本当に素晴らしいこと。しっかり回復して、最終週に臨みたい」(ポガチャル)
文:山口和幸
山口 和幸
ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。
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