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サイクルロードレース コラム 2026年7月8日

便利さと不便さは紙一重? 無線に乗せた想いにまつわるストーリー|ツール・ド・フランス2026

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ツール・ド・フランス

第2ステージで無線トラブルが生じたポール・セクサス

便利だけれど、ときに思いがけないトラブルを引き起こすことがある。ツール・ド・フランス2026第2ステージで、若手注目株のポール・セクサス(デカトロン・CMA CGM チーム)の無線にトラブルが生じた。また、同じステージではイサーク・デルトロ(UAEチームエミレーツ・XRG)が無線でのチームカーとのやり取りに不備が生じ、バイクトラブルへの対応が遅れかけた。レース中に選手とチームカーを結ぶ無線は、戦術や戦況の確認に大きな効果をもたらすけれど、その一方では予期せぬハプニングやチームオーダーの無視、選手たちによる電波を使ったイタズラなど、なかなか知ることのできないドラマが存在しているという。

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第2ステージでセクサスとデルトロに無線トラブル

第2ステージを走り終えたあと、セクサスは報道陣にこう打ち明けた。「無線の調子が悪かったんだ」

勝負どころとなったモンジュイックの丘にたどり着く頃には、かなり消耗していたという。

「勝負するには厳しいとチームカーに伝えたつもりだったのだけれど、運転席にいたスポーツディレクター(監督)にはうまく伝わらなかったみたいなんだ。彼は僕が100%のコンディションにあると思い込んでいたらしい」(セクサス)

チームカーからの指示は、ティシュ・ベノートによる上りでのペースアップ。その後ろでセクサスは、ただただ耐えるばかりだった。

同じ日。バイクトラブルに見舞われたデルトロは、無線を使いチームカーにその状況を即座に伝えていた。ところが、チームカーは彼に気づかず素通り。結果的に、チーム ヴィスマ・リースアバイクネットカンパニー・イネオスのメカニックが彼をサポートし、大事にはならずに済んだ。テレビ中継にも映し出されていた、デルトロが胸付近をつかみ何かと叫んでいる様子。無線のマイクに向かってバイクトラブルである旨を伝えていたことは容易に想像がつく。

具体的な事情については明らかにされていないが、チーム無線のトラブルか、互いが物理的な距離による通信圏外に位置していたものと、現場では推察されている。

無線機の進化は著しい

サイクルロードレースにおけるレース中のチーム無線使用が可能なのは、1クラス以上のイベントとUCI(国際自転車競技連合)によって規定されている(日本開催のレースで使用可能なのは宇都宮ジャパンカップサイクルロードレースとツール・ド・九州)。

ツール・ド・フランス

モンジュイックではただただ耐えるばかりのセクサス

当初は250グラム近い重さだった無線機は、今ではUCIワールドチームを中心に80グラム程度の軽量モデルを使用するようになっているという。選手たちはジャージ内部に装着して走るわけだが、かつては背部に装備していたものが近年では胸部へと移っている。高速化が進むサイクルロードレースにあって、できる限り空気抵抗を減らせるようとの考えからだ。

無視、混戦、イタズラ……無線にまつわるストーリー

レース中のチーム無線の是非は以前からたびたび話し合われてきているが、多くの選手やチームが使用を望んでおり、ハードなレースにあって必要不可欠なアイテムであることは確かである。

ただ、無線がレース全体を支配しているわけではないことも事実。このツールにも出場しているバンジャマン・トマ(コフィディス)は、2024年のジロ・デ・イタリア第5ステージで逃げ勝ったとき、チームオーダーを無視するつもりで無線のイヤホンを耳から外してレース終盤を走ったとみずから明かしている。人生を変える可能性のある大きな局面で彼が重視したのは、“本能”と“感性”だった。

「無線に頼りすぎて、自分の感覚を麻痺させてしまうのが嫌だったんだ。どうしても勝ちたかったから感性を大事にした。最後の数キロはチーム無線を完全に無視していたよ」(トマ)

また、ときにはチーム間で周波数がバッティングし、混線することもあるという。

でもやっぱり、現代のサイクルロードレースにおいて無線は必需品だ。その大事さを筆者に伝えてくれたのは、マッテオ・ヴェルシェ(トタルエネルジー)。彼のチームでは、淡々と進む平坦ステージや、長距離のステージなどで“ニセのアタック情報”をチーム無線で飛ばすといったジョークがよく発生するという。

「いや、さすがにどこのチームでもそんなことをやっているわけではないと思うよ。UAEやヴィスマでは絶対やらないはずさ。マイヨ・ジョーヌがかかっているチームほど、無線は重要になるはずなんだ」(ヴェルシェ)

どうやら、無線の使い方や重要度はチームによって異なるようだ。

ツール・ド・フランス

デルトロから3秒遅れの区間8位でフィニッシュしたセクサス

文:福光 俊介 from Foix, France

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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