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天国と地獄を味わうアルペシン・ドゥクーニンク マチューの“翻意”でチームの方向性が定まるか|ツール・ド・フランス2025
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ヤスペル・フィリプセンが悲願のマイヨ・ジョーヌ!「100%フランス」の初日は分断の連続で波乱の1日に|ツール・ド・フランス2025 レースレポート:第1ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介初日マイヨ・ジョーヌの栄光を掴んだのはヤスペル・フィリプセン
ドラマティックな夏の到来である。熱く、美しい3週間にわれわれは魅せられる。ツール・ド・フランス、世界最大の自転車ロードレースの2025年大会が幕を開ける。想像を絶する、驚きと感動の日々。われわれは、1分、いや1秒ごとに刻まれる新たな物語の目撃者となる。
「100%フランス」の3週間、パリ・シャンゼリゼを目指して
2025年は「100%フランス」がテーマだ。4年ぶりにフランスで開幕し、一歩も国外に出ることはない。昨年はイタリアで、一昨年はスペインで旅が始まったが、今年はフランス国内で全行程を完結させる。きっと、それはそれで新たな発見があることだろう。
第112回大会の開幕地は、北部の街・リール。「フランドル・フランセーズ」と呼ばれるように、隣国ベルギー・フランドル地方と近い文化にある。実際に歩いてみると、確かに街並みや建物にフランドル感を抱かせる。開幕2日前に行われたチームプレゼンテーションでは、ベルギーからのファンも多かったようで、フランドリアンライダーへの歓声はひときわ大きかった。
3週間の総距離は3338.8km。広大なフランスの土地を反時計回りを描くようにめぐっていく。目的地は、2年ぶりとなるパリ・シャンゼリゼだ。
フランス北部の街、リールにて華々しく開幕
ガンナがまさかのリタイア第1号に
第1ステージは、リールを発着とする184.9km。市街地を走りながらリアルスタートすると、周辺都市を時計回りにめぐって再びリールへと戻ってくる。この間、3つの4級山岳登坂があるが、全体を見通すとそのルートは平坦。まずはスプリンターが主役になると予想された。
23チーム・184選手が大歓声の中を出発。パレード走行中にリールの城門のひとつである「ポルト・ド・パリ」でフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を聴いたのち、一行はリアルスタートを切った。
5選手によるファーストアタックは集団の容認を得て、早い段階で2分以上のリードを確保。リドル・トレックやアルペシン・ドゥクーニンクがメイン集団の動きを落ち着かせつつ、前を行く選手たちとのタイム差を調整した。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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配信期間 : 2025年7月6日午後9:00 ~
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Cycle*2025 ツール・ド・フランス ツールに沼ろう!ジョーヌの時間 第11ステージ〜第15ステージ #2
配信期間 : 2025年7月15日午後9:00 ~
ただ、それもほんのわずかな時間だった。50km地点を過ぎたところから集団は急速にペースを上げる。コース周囲は風を遮るものがなく、たびたび数十人単位で後方に取り残される選手が現れるようになった。とりわけ、個人総合上位入りが期待されているレニー・マルティネス(バーレーン・ヴィクトリアス)の動きが不安定だ。後ろに下がっては、どうにかこうにか集団へと戻る状況を繰り返している。
また、フィリッポ・ガンナ(イネオス・グレナディアーズ)が激しく落車。何とかバイクに再乗車したが、背部の痛みを訴えリタイア。まさかの、今大会最初の離脱者となってしまった。それからもクラッシュは相次いで、シュテファン・ビッセガー(デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム)もバイクを降りている。
逃げは結局フィニッシュまで100km以上を残して吸収され、プロトンはその勢いのまま中間スプリントポイントへ。ここはジョナタン・ミラン(リドル・トレック)が1位通過。ポイント賞のマイヨ・ヴェール獲得へ、明確な意思を示した。
落車やリタイアが多発する波乱の幕開けとなった
集団分断でレムコやミランが後方に取り残される
中間スプリントポイントを通過した直後に、マッテオ・ヴェルシェ(トタルエネルジー)とバンジャマン・トマ(コフィディス)が先行を開始。リアルスタート直後に逃げにも加わっていた2人は、この日2つ目の4級山岳コート・ド・カッセルを目指して飛ばす。
フランドル・フランセーズらしさを感じさせる石畳の上り。トマとヴェルシェは頂上のトップ通過を目指して懸命に踏み込む。いよいよ山岳ポイント、互いにマークしながら加速すると、わずかな差でトマが先着。1つ目の4級山岳に続く1位通過となったが、直後に石畳にタイヤがとられ落車。ヴェルシェまで巻き込んでしまい、2人の逃げはここで終わってしまった。
その後は逃げの動きはなく、集団で残るルートを突き進んでいく。フィニッシュまで50kmを切ったあたりからは、UAEチームエミレーツ・XRGとチーム ヴィスマ・リースアバイクが並んでプロトンを牽引。こうなると自然とペースが上がって、遅れていく選手の姿も見られるように。残り20kmからはヴィスマ勢がさらにスピードを上げて、集団を完全に割った。
後ろに取り残された中に、レムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)やミランの姿が。リドル・トレックは人数をかけて追走を試みたが、最前線を行く約40人の勢いが上回った。今大会の覇権を争うであろうタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)とヨナス・ヴィンゲゴー(チーム ヴィスマ・リースアバイク)も先頭グループでスピードアップに力を使った。そうこうしているうちに、スプリントに向けたリードアウト体制に入ったアルペシン・ドゥクーニンクとウノエックス・モビリティが主導権争いへ。後続ライダーは最後まで戻ることができなかった。
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チームからの完璧なサポートを受けたフィリプセンが自身ツール10勝目を挙げた
2年ぶりマイヨ・ヴェールへ、フィリプセン会心のステージ優勝
今大会最初のステージ優勝、そしてマイヨ・ジョーヌへの最終局面。アルペシン・ドゥクーニンクが主導権を確保すると、ヤスペル・フィリプセンを絶好のポジションへ。昨年のマイヨ・ヴェール、ビニヤム・ギルマイ(アンテルマルシェ・ワンティ)やソーレン・ヴァーレンショルト(ウノエックス・モビリティ)らが食らいついたが、完璧なまでのお膳立てがそろったフィリプセンにはかなわなかった。
最後はライバルを寄せ付けなかったフィリプセンは、ツール通算10勝目。キャリア初となるマイヨ・ジョーヌに袖を通すことになった。
「一生忘れられない勝利になったよ。チーム戦術もパーフェクトにハマったね。最後の数キロでのファンの歓声には鳥肌が立ったよ。絶対に勝つんだって気持ちにさせてもらった。最高の勝利だよ」(フィリプセン)
今シーズンは意識的に体を絞り、上りにも耐えられる脚づくりに努めてきた。その影響か、持ち味のスピードが生きず、今季はここまで2勝にとどまっていたが、いよいよ状況は整った。目標は、2年ぶりのマイヨ・ヴェール。スプリントステージで勝つことはもちろんだが、丘陵ステージや山岳ステージでもポイントを稼げるよう走る心づもりだ。
「正直に言うと、プレッシャーはかなり感じている。ライバルがとても多い。彼らにどうやって勝つか、常に考えているんだ。今日だって100%集中する必要があったし、冷静でいなくてはならない。今日勝ったことで多少は落ち着けるんじゃないかな。僕の目標はさらに高いところにあるからね」(フィリプセン)
総合勢のなかでもタイムを失うことなく初日を終えたポガチャルとヴィンゲゴー
集団分断を読んでいたポガチャル
波乱の初日となった。結果的に、33位までがフィリプセンと同タイム。ポガチャルやヴィンゲゴーが順当にこのグループでフィニッシュした一方で、レムコやプリモシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が39秒の遅れを喫した。この2人に限らず、総合系ライダーの大多数が集団分断によって後ろに取り残されてしまった。
巧く前線で走り切ったポガチャルは、この展開をいくらか想定していたという。
「風があったので、終盤にかけて集団が割れるのではないかと考えていた。今日はティム・ウェレンスと常に先頭付近で走ることを心掛けていて、それが大正解だった。波乱に満ちた1日だったけど、僕としては良い形で終えられて良かったよ」(ポガチャル)
この日のアベレージスピードは、47.576km。いくらフレッシュな脚だからといっても、あまりに速い旅の初日になった。なお、レース中何度も苦しむ様子を見せていたマルティネスは、9分11秒遅れのステージ最下位に終わっている。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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