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大規模クラッシュで混乱の1日、カーデン・グローブスがスプリントを制し今季初勝利|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第6ステージ
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介波乱の第6ステージはグローブスがスプリント勝利
雨に濡れた路面で大勢のライダーがタイヤを滑らせてしまった。レースは11kmにわたってニュートラル。ジャイ・ヒンドレー(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)らがリタイアを余儀なくされた波乱の1日は、レース再開こそしたものの穏やかならぬムードのままフィニッシュへ。ステージ優勝争いは、カーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)が制してジロ通算2勝目を挙げている。
「勝ったとはいえ複雑な気分だよ。レースを続けるべきかどうかをその場で判断しなければならず、止まっている間に体が冷えてしまった。スイッチも切れてしまっていたので、もう一度走り出すとなったときは精神的にもタフだったよ。チームメートにもケガ人が出ていて、手放しには喜べないね」(グローブス)
227kmのロングステージ
今大会最長の227kmにおよぶステージは悪天候に見舞われた
今大会最長の227km。フィニッシュ地となるナポリではスプリントフィニッシュとなることが多く、このステージでも同様の趣きが漂っていた。レース序盤こそ出入りが激しく、散発的なアタックが30km近く続いたが、やがてタコ・ファンデルホールン(アンテルマルシェ・ワンティ)とエンゾ・パレニ(グルパマ・FDJ)が飛び出すと集団は彼らを先導役に据える。
少しおいてロレンツォ・フォルトゥナート(XDS・アスタナ チーム)とルーカス・ハミルトン(イネオス・グレナディアーズ)が追走を始めると、集団もペーシングを開始。42.5km地点に設けられた1回目の中間スプリントは前の4人が通過後に集団が5位通過を競って、マッズ・ピーダスン(リドル・トレック)が先着。1ポイントを加算させている。
その後、前を走る4人にも変化があって、追走メンバーのうちフォルトゥナートだけが先頭2選手に合流。そのまま2級山岳を1位通過して18点を加算。山岳賞争いでのアドバンテージを増やすミッションを果たすと、先行をファンデルホールンとパレニに託して集団へと戻った。
先頭2選手とメイン集団とのタイム差は2分程度で推移。88.4km地点に設定された2回目の中間スプリントでは、前の2人に続いてメイン集団が3位通過をかけて競って、オラフ・コーイ(チーム ヴィスマ・リースアバイク)が先着。イェンセン・プロウライト(アルペシン・ドゥクーニンク)が続いて、ピーダスンはここも5位通過にまとめている。
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スリッピーな路面で大規模落車、40人以上が足止め
落車の影響で多くの選手が影響を受けた
レース前半から降ったり止んだりを繰り返していた雨は、中間地点を過ぎたあたりから本格化。そしてフィニッシュまで71kmを残したところで恐れていたことが起こってしまった。
濡れた路面を突き進んでいたプロトンでのあちこちで落車が続出。下りでスピードに乗っている状態でのクラッシュは、集団前方を走っていた選手をきっかけに次々と地面に叩きつけられていく。マイヨ・ジョーヌのピーダスンもダメージを負った。
「時速70km以上は出ていたと思う。そんな状況での落車は体に良くないね。突然落車している選手が何人も視界に飛び込んできたと思ったら、自分も地面に落ちてしまっていたんだ。すべてが一瞬の出来事で、対処のしようがなかったよ」(ピーダスン)
落車回避した選手も含め、40人以上が足止めを余儀なくされた。アダム・イェーツ(UAEチームエミレーツ・XRG)はバイク交換を要求し、リチャル・カラパス(EFエデュケーション・イージーポスト)のジャージは破れている。彼ら以上に痛手を負ったのがヒンドレーだった。
3年前の大会覇者はその場に座り込んだまま、立ち上がることができない。意識はあるものの脳震盪が疑われ、レースドクターが走行不可のサインを出した。
レースはニュートラル化されたのち、全体にストップがかけられる。ライダー、主催者、レースディレクターらで協議が行われ、残り60kmからレースは再開された。
フィニッシュした全選手がトップと同タイム扱い
大会サイドとの交渉役を担ったログリッチ
プリモシュ・ログリッチがディレクターとの交渉役を買って出て話し合われた結果、先に控えていたレッドブルKMとフィニッシュでのポイントならびにボーナスタイムの付与はなしに。さらに、フィニッシュでのタイム差も総合時間には加算されないことでまとまった。この日のトップ選手のフィニッシュタイムが、全選手に反映される。
これを受けて、ピーダスンやエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)らは後方グループでフィニッシュを目指す判断。ステージ優勝の栄誉だけをかけて、チーム ヴィスマ・リースアバイクやアルペシン・ドゥクーニンク、チーム ピクニック・ポストNLが集団のスピードを上げる。それには同調せず、後ろへと下がっていく選手たちの姿も多く見られるようになっていった。
フィニッシュまで10kmを残して、30秒のリードを保って逃げ続けるファンデルホールンとパリニ。その粘りに逃げ切りの可能性を感じさせたが、残り5kmを切った直後からタイム差が急速に縮まった。集団ではヴィスマトレインが統率しきれなくなり、アルペシン・ドゥクーニンクが前に出たところで追撃ムードが加速。フィニッシュ前2.5km、長く逃げ続けた2人をついに集団が捕らえた。
アルペシン、ヴィスマともにトレインが乱れ、残り1kmのフラムルージュを過ぎたところでプロウライトとワウト・ファンアールトが飛び出してしまう。ただ、ここは各チームのスプリンター陣が冷静に対処してフィニッシュめがけての勝負へ。最後はグローブスがスプリント力の違いを見せつけて、ステージ優勝を決めた。
「最後の数キロは雨と濡れた石畳に苦労させられたよ。テクニカルなレイアウトで、常に前方をキープする必要があった。個人的には数人が前にいる状態からスプリントする方が得意なのだけれど、今日に限っては最前列に位置して正解だった。路面状況を把握するにはそれしかなかったからね」(グローブス)
第7ステージでマリア・ローザ着用者が替わるか
混乱した1日は、レース中に3人がリタイア。数人が痛みを抱えながらフィニッシュまで到達しており、今後離脱者が増える可能性がある。
マリア・ローザの着用を続けるピーダスンも、右脇腹と臀部を強打。痛みが強くこのステージでのスプリントを断念したが、レース続行には意欲を示している。
自身も落車によってダメージを負った総合リーダーのピーダスン
「目標としていた第6ステージまでピンクを着続けられた。明日は山岳だから、このジャージは手放すことになると思う。最後の瞬間まで楽しむつもりだよ。こんな気分になれただけで、僕にとってもチームにとってもジロは大成功なんだ」(ピーダスン)
第7ステージは今大会最初の山頂フィニッシュ。アペニン山脈を行くルートは、最後に1級山岳タリアコッツォを上ることになる。マリア・ローザ争いの主役になると目される選手たちが動き出すだろうか。
個人総合2位につけ、覇権争いのポールポジションにいるログリッチは、重要なチームメートのヒンドレーを欠く。その他のアシスト陣も数人が負傷したほか、前回大活躍のダニエル・マルティネスのコンディションが良くないとの指摘もある。一方で、UAEチームエミレーツ・XRGは総合トップ10に3人を送り込んで、チーム力の高さを見せている。
彼らがどんなアクションを起こすのか、先々の指標となる1日がやってこようとしている。
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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