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サイクル ロードレース コラム 2025年5月14日

23歳カスペル・ファンウーデンがレッチェのナローロード攻略でグランツール初勝利!|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第4ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ジロの到来を待ちわびた観客が沿道を埋め尽くす

ジロの到来を待ちわびた観客が沿道を埋め尽くす

イタリア本土でのステージが始まった! ここから先、プロトンは半島の南側から少しずつ北上していく。その旅をまるでスタートダッシュかのごとくハイスピードで駆けた第4ステージ。レッチェ市街地のテクニカルな最終局面を制したのは、23歳のカスペル・ファンウーデン(チーム ピクニック・ポストNL)。グランツール初勝利はもとより、UCIワールドツアー初勝利である。

「僕ひとりではなく、チーム全員の勝利だよ。もっといえば、スタッフを含めたすべての人だね。最後の200mまで風を感じないくらいみんなが僕を守ってくれて、あとは得意のロングスプリントに集中するだけだった。僕にとっても、チームにとっても、この勝利は大きな自信になるだろうね」(ファンウーデン)

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ファーストアタックのムニョスがしばし先行

いよいよジロ2025もイタリア本土での戦いがスタート

いよいよジロ2025もイタリア本土での戦いがスタート

この日が今大会最初の平坦ステージ。アルバニアでのスプリントフィニッシュもあったけれど、ピュアなスプリンターにとってはこれが“本当の始まり”。アドリア海を越えて本来の舞台であるイタリアへと入ったプロトンは、ほぼほぼ下りと平坦だけの189.0kmを手始めにこなすこととなる。

ファーストアタックを打ったフランシスコ・ムニョス(チーム ポルティ・ビジットマルタ)が容認され、ひとり先行を続ける。スタートから15kmほど走った先でシルヴァン・モニケ(コフィディス)やロレンツォ・フォルトゥナート(XDS・アスタナ チーム)らがアタックしたが、この日唯一の4級山岳めがけての動き。労せず1位通過したムニョスに続き、モニケ、フォルトゥナートの順に通過。山岳賞トップでスタートしていたフォルトゥナートは、1ポイント加算している。

30km地点を超えて、ムニョスとメイン集団との差はこの日最大の約5分まで拡大。このあたりをきっかけに集団が少しずつペーシングを始めて、少しずつタイム差は調整されていく。この間、39.3km地点に設定された1回目の中間スプリントもムニョスが1番に通過をしている。

ムニョスのひとり旅は131kmで終わる

この日、単独で100km以上の逃げを見せたムニョス

この日、単独で100km以上の逃げを見せたムニョス

緊張が走ったのはフィニッシュまで120km以上を残したタイミング。15人を超える選手が絡むクラッシュが発生。ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)やロマン・バルデ(チーム ピクニック・ポストNL)らが足止めを余儀なくされる。両人は大きなダメージはなく、アシストとともに集団へと戻ったが、ニコラス・ズコウスキー(Q36.5プロサイクリング チーム)が右肩を押さえて動けない。結果的に、この日唯一のリタイア者となった。

84.2km地点にラインが敷かれたレッドブルKMスプリントは、ムニョスの一番通過から少しおいてメイン集団がタイムボーナスをかけてアクション。フアン・アユソ(UAEチームエミレーツ・XRG)のフォローに動いたイサーク・デルトロが2位通過のあと、プリモッシュ・ログリッチ(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が3番手で抜けて2秒ボーナスを獲得。最大のライバルであるアユソの先着を阻止した。

この間も着実にムニョスとのギャップを集団は縮めていて、残り60kmでその差は50秒。追い風に乗った集団は勢いを制御することなく、そこから4kmほど先でレースをふりだしへと戻した。

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マリア・ローザのピーダスンはスプリントを前に脚を削られる

もっとも、集団が見ていたのは135km地点に置かれた2回目の中間スプリント。ここはオラフ・コーイ(チーム ヴィスマ・リースアバイク)とマリア・ローザのマッズ・ピーダスン(リドル・トレック)が競って、前者が先着。

なおもハイスピードを維持する集団は、各チームで隊列を編成してポジションを固めながら進んでいく。しかし、フィニッシュ地レッチェの市街地周回を迎えると、急激に狭まった道と連続するコーナーにムードは一変。一瞬でその並びは乱れ、縦長となった集団ではクラッシュが発生。先頭付近にいたはずのピーダスンがまたも足止めを食い、集団最後尾まで下がってしまった。

「先頭に戻るまで15kmを費やすことになったし、脚を使わざるを得なくなってしまった。チームメートも僕の引き上げに力を使って、スプリントトレインを組むことが難しくなってしまったね。難しい状況になったのは確かだよ」(ピーダスン)

第2ステージの個人TTを勝ったジョシュア・ターリング(イネオス・グレナディアーズ)が先頭で牽引を始めたことで、一層状勢は難しくなった。誰もターリングをふさぐことはできないし、ただただ集団は縦長で進むだけ。ピーダスンは残り7kmを切ったところでどうにか最前線まで戻ってきたが、そこまでに脚を使ったアシスト陣をもはや頼れない。ここからは自力でフィニッシュまで持ち込む必要に迫られた。

ピクニックトレインの“完勝”

ターリングが牽き終えると、残り2kmからはアルペシン・ドゥクーニンクのトレインが先頭へ。連続コーナーでピーダスンもコーイも番手を下げる中、デカトロン・AG2Rラモンディアルが好位置をキープ。さらにはエガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)も先頭に立った。

そして運命の残り1km。一瞬2選手が集団前方を割ったが、これをヴィスマ・リースアバイクのトレインが埋める。その脇からはチーム ピクニック・ポストNLが上がってきて、そのまま先頭へ。食らいついたヴィスマトレインを最後の左コーナーで振り切ると、その流れのままブラム・ウェルテンがファンウーデンを発射した(それまでの動きの中でウェルテンはイエローカードを受けている)。

ファンウーデンがジロ初挑戦で初勝利を飾った

ファンウーデンがジロ初挑戦で初勝利を飾った

絶好の態勢から解き放たれたファンウーデンは、何とかスプリント態勢を整えたピーダスンらを寄せ付けずスプリント開始時と同様に一番にフィニッシュラインを通過。雄たけびとともに全身で喜びを表現した。

「全員で取り組んだ仕事の成果を何としてでも残したかった。チームメートのためにもこの勝利は本当に良かったよ。僕たちを信じてくれるチームには感謝してもしきれないね」(ファンウーデン)

エアロヘルメット装着は「シンプルに速く走れるから」

ジャイアントキリングともいえる大勝利を挙げたファンウーデン。2022年には「若手の登竜門」ツール・ド・ラヴニールでポイント賞を獲り、昨年はアルウラー・ツアーやZLMツアーといった名のあるレースで勝っているが、紛れもなくこのジロでの勝利がキャリア最大の勲章である。

何より、この日装着したエアロヘルメットが勝利を近づけた一端かもしれない。スタート前のサイン台にはノーマルヘルメットで登壇していて、その後考えが変わったのか、他選手に対する牽制のつもりだったのかはわれわれには分からない。いずれにしても、勝ったのだからこの判断は成功である。

「理由はシンプルで、速く走るための要素となるからだよ。見た目は不思議に思うかもしれないけど、そんなことはどうだって良いんだ。勝てば誰も何も言わないからね」(ファンウーデン)

今季終了時に決まるUCIワールドチームと同プロチームの入れ替えで降格の危機にあるチームにとっても、ファンウーデンがもたらした180点はかなり貴重。猛追しているXDS・アスタナ チームは、マックス・カンターが5着に入っていながらピーダスンとの接触で103位まで降着。ポイント圏外に終わっており、チーム ピクニック・ポストNLにとっては勢いを取り戻すチャンスがめぐってきている。

「そんなに心配はしていないし、チームの計画通りに取り組めば大丈夫じゃないかな」(ファンウーデン)

惜しくもステージ3勝目とはならなかったが総合首位を守ったピーダスン

惜しくもステージ3勝目とはならなかったが総合首位を守ったピーダスン

マリア・ローザはピーダスンがキープ。再三のピンチを乗り切り、4位フィニッシュは意地と言っても良いだろう。ポイント賞でも首位に立っており、まだ30点以上のリードはあるけど、コーイやファンウーデンとの争いが本格化していきそうだ。

次、第5ステージも平坦にカテゴライズされているけど、レース終盤がひたすら上り基調になっていて、第4ステージと同じようにはいかないかもしれない。最後の3kmはコーナーが連続するし、ほんの一瞬ながら10%勾配も控える。ひと波乱あっても不思議でないような、ジロらしい魅惑の1日となるかもしれない。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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