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サイクル ロードレース コラム 2025年2月17日

王者タデイ・ポガチャルがシーズンイン、初戦からエンジン全開か!? スプリントや砂漠地帯での分断作戦も大会の華【Cycle*2025 UAEツアー:プレビュー】

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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UAEツアー

砂漠の風景と近代建築物に圧倒されるUAEツアー

2024年シーズン、実に26年ぶりとなるジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの「ダブルツール」を果たし、UCIロード世界選手権での圧勝劇と、ビッグタイトルを欲しいままにしたタデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)。現在のサイクルロードレースシーンの頂点に立つ男の新シーズンは、3年ぶりにUAE(アラブ首長国連邦)で迎える。

いま一度、ポガチャルの2024年シーズンを振り返っておきたい。はじまりはストラーデ・ビアンケでの約80km独走劇だった。未舗装路での激走で世界を驚かせると、ボルタ・ア・カタルーニャでライバルに大差をつけ、春の最大目標に据えたリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは2位に1分30秒以上の大量リードで勝利。前年に落車で手首を骨折した“鬼門”をクリアすると、完全に波に乗った。

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満を持して乗り込んだジロではステージ6勝を挙げて、個人総合で2位に約10分もの差をつける“完勝”。3年ぶりの王座返り咲きをかけて挑んだツールも、ヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク)やレムコ・エヴェネプール(スーダル・クイックステップ)らとの争いを制し、グランツール2冠を達成。これまで幾人ものグランツールレーサーがチャレンジしては跳ね返された「ダブルツール」の偉業を、初挑戦にして成し遂げたのだった。

それからも勢いは止まらず。ロード世界選手権では約100kmを逃げてライバルに付け入る隙を与えない。悲願のマイヨ・アルカンシエルに袖を通し、イル・ロンバルディアでもレムコらに3分以上のリードを奪う快勝でシーズンを締めた。

圧巻の1年を経て、新たなシーズンはどれほどの強さをわれわれに見せつけるのだろうか。今季もツールに軸を置きつつ、ミラノ〜サンレモやロンド・ファン・フラーンデレン、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、イル・ロンバルディアといった要所にも注力する。ブエルタ・ア・エスパーニャへの参戦が有力視されているほか、先ごろはパリ〜ルーベのレコン(試走)も行った。今大会開幕を前に、「ブエルタについてはまだ何も確認できることはない。ルーベに関しても同様で、まずはUAEツアーに集中するよ」とコメント。ここからの長きシーズン、常に王者の動向には注視する必要がありそうだ。

ポガチャルを擁するUAEチームエミレーツ・XRGにとっても、このコンペティションは「シーズン序盤の最重要レース」。チーム本拠でのレースは、勝つことが使命にある。ポガチャルを総合表彰台の最上段へ送り込むべく、総力戦を演じることだろう。「どんな状況においてもタデイを守ることのできる最高の布陣だ」とは、チーム監督のひとりであるホセ・フェルナンデス氏。

そのうえで、大きな意味を持つステージは3つ。12.2kmの個人タイムトライアルが設定される第2ステージは、平均時速50km超の高速決戦が見込まれる。ここである程度脚見せをしたところで、今大会1つ目の山頂フィニッシュとなるジェベル・ジャイス登坂の第3ステージ(181km)へ。上り口からフィニッシュまでの21kmは平均勾配5.4%。フィニッシュ前2.5kmで最大勾配9%に達する。この2ステージを終えた時点で、優位に立てるかがひとつポイントになる。

UAEツアー

ジェベル・ジャイス登坂の第3ステージ

そして最終日・第7ステージ(176km)。大会を語るうえで外せない、ジェベル・ハフィートの山頂フィニッシュが「最終審判」となる。個人総合争いのハイライトは、登坂距離10.8km、平均勾配6.6%、最大勾配11%の上り。登頂を果たしたとき、リーダージャージの行方が決することになる。

UAEツアー

ジェベル・ハフィートの山頂フィニッシュの第7ステージ

今大会へのモチベーションやコースレイアウトから見て、ポガチャルの1強は揺るがない。ただ、サイクルロードレースは何が起きても不思議ではないスポーツ。カルロス・ロドリゲス(イネオス・グレナディアーズ)やペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)、フェリックス・ガル(デカトロン・AG2Rラモンディアール チーム)、ジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)といった、実力・実績とも申し分のない選手たちもUAEに乗り込み、上位争いに加わる。

前回大会の覇者、レナルト・ファンイートヴェルト(ロット)は、「現実的には個人総合2位を目指すレースになりそう」と述べてはいるけど、1年経っての進化は証明しておきたい。オスカー・オンリー(チーム ピクニック・ポストNL)やフィン・フィッシャーブラック(レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)ら、次世代のオールラウンダーも一気に浮上する可能性を秘める。

と、ここまでついついポガチャル、さらには個人総合争いにばかり目を向けてしまったけど、UAEツアーといえばスプリント、そして砂漠地帯でのチーム単位での分断作戦も“大会の華”。第1・第4・第6ステージがスプリントステージにカテゴライズされていて、それぞれに趣きが異なっている。

UAEツアー

第1・第4・第6ステージではスプリンターたちが輝く

前半部で45kmに及ぶ直線道路を行く第1ステージ(138km)から、早速「これぞ中東レース!」と唸ることになるだろうか。風向きと強さ次第では、あっという間にプロトンが散り散りになってしまう。とにかく前方でレースを進めなければならないし、それができない限りはスプリントも、個人総合争いにも名乗りを上げることは不可能。このステージ後半のモリーブ砂丘に待つ断続的な急坂も、選手たちの脚を試す。

第4ステージ(181km)は高低の変化こそ少なめだが、針路を変えたときの風向き・強さ次第でレースの流れが変わることも。ドバイを駆ける第6ステージ(165km)は、風よりも市街地特有のラウンドアバウトや鋭角コーナーに集中力が求められるテクニカルなレイアウト。

UAEツアー

方向転換が連続する第6ステージ

そんなスプリンターの競演。ヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)、ティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)、ジョナサン・ミラン(リドル・トレック)、オラフ・コーイ(ヴィスマ・リースアバイク)といったスーパースプリンターの直接対決が実現する。メルリールはアルウラー・ツアーで、ミランはボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナで、コーイはツアー・オブ・オマーンで、それぞれステージ2勝。フィリプセンはこれが今季初戦。順当にいけば、彼らの中からポイント賞が出ることだろう。

彼らのほかにも、TTステージでの走りが楽しみなジョシュア・ターリング(イネオス・グレナディアーズ)や、ツール返り咲きをかけて今季に期するクリストファー・フルーム(イスラエル・プレミアテック)も参戦。その走りを押さえておこう。

UAEツアーは、2014年に初開催されたドバイ・ツアーと2015年に初開催のアブダビ・ツアーの流れを汲み、2019年に統合される形で誕生。アブダビ・スポーツカウンシルが運営主体となり、ジロを主催するRCSスポルトも参画する。今年は2月17日から23日までの日程で行われ、全7ステージ・総距離1013.2km。UAEを構成する7つの首長国のうち、6つを通過する。

各賞は、個人総合時間賞をメインに、ポイント賞、ヤングライダー賞、そして中間スプリントポイントでの通過をもとに決定するスプリント賞が設けられ、それぞれ首位の選手がリーダージャージを着用。このほか、チーム総合時間賞も設定される。

シーズン序盤に欠かせないものとなった「中東シリーズ」は、今大会で締めとなる。15のUCIワールドチームと、5つの同プロチーム、合計20チームが2025年の“アラビアン・ロード”の最後を彩る。

文:福光 俊介

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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