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サイクル ロードレース コラム 2023年9月10日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2023 レースレポート:第14ステージ】偉大なるチャンピオンとしての矜持「山岳賞首位としてマドリードにたどり着くことができれば、僕のブエルタは、救われるんだ」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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レムコ・エヴェネプール

レムコ・エヴェネプール

チャンピオンはペダルで答えを出した。マイヨ・ロホ争いから完全に脱落した24時間後に、前回大会覇者は自らの誇りと名声とを救った。持ち前の力強いペダリングと、誰よりも強靭な精神力とで。レムコ・エヴェネプールは今大会ステージ2勝目をつかみとり、山岳賞という新たな目標へと走り出した。はるか後方ではユンボ・ヴィスマがライバルたちを完璧に封じ込め、大会6度目の山頂フィニッシュの終わりに、総合トップ10には一切の変動はなかった。

「昨日はすごく難しい1日だった。夜も上手く寝付けなかった。ネガティブな考えが頭の中に次々と沸き起こった。でも、今朝、目が覚めた時に、思ったんだ。頑張ろう、ベストを尽くそう、って」(エヴェネプール)

スタートフラッグが振り降ろされた瞬間から、エヴェネプールは加速に転じた。ためらわなかった。飛び出しては、引きずりおろされた。決して諦めなかった。赤いジャージも白いジャージも失ったベルギーチャンピオンは、多くの選手に混ざって、繰り返し、攻撃を試みた。

時速50km近い追いかけっこは30kmほど続いた。ピレネーの谷間の、小さな町を抜け出した先で、エヴェネプールを含む大きなグループが遠ざかっていくと……総合トップ3を擁するユンボ・ヴィスマが道路に横一列に並んだ。アタック合戦の強制終了。すでに総合で27分以上もの遅れを喫していた元総合大本命は、逃げ出すことを許された。

24人からなる逃げ集団に、8チームが複数人を送り込んだ一方で、エヴェネプールは孤独だった。ただし、「ウルフパック」の仲間たちが、リベンジを誓うエースをひとりにはしておかなかった。すでに1分近いタイム差が開いていたにも関わらず、マティア・カッタネオは猛然と前を追った。幾多のブリッジの試みが無駄に終わったのに対して、イタリアのタイムトライアル巧者だけは……超級ウルセールへ上り始めた直後に、まんまとエヴェネプールのもとに馳せ参じた。

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