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別府選手
別府はすべてのグランツール(ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ)の完走経験者であるとともに、日本で唯一すべてのモニュメント(世界五大クラシックレース)完走を果たしている選手だが、レースでは自身の完走よりもチームの働きを優先する。「グランツールでは完走という目標もあるけど、ワンデーレースでは50位とか60位に入っても意味がない。だから上位を狙える選手をサポートする走りに徹します。逆に、仕事をしないで完走しても意味がない。チームメイトのために仕事をしながら、チームとして機能できるように動くのが自分の中のプロフェッショナリズム。ある程度自由に走ることができる格下チームとは違い、UCIワールドチームではチームメイトのために仕事をする意識が強い。それがプロサイクリングであり、ずっと僕が続けてきたキャリアです」。
まだ次戦は確定していないが、別府のレーススケジュールは4月から再び本格化する予定。2月末の2連戦で感じたのは「レースは楽しい」ということ。「レース前にスーツケースにシューズやサングラスを入れて準備している時、遠足に行くようなワクワク感があった。ミーティングでレースについて話して、戦略を練って、レース後に改善点を話し合ったり、その感覚がやっぱり楽しい。自分が求めているのはレースで走ることだと再確認しました」。
現在ヨーロッパでは、多くのレースが中止や延期に追い込まれながらも、シーズンは前に進み続けている。大人数が一般道を移動するという特性をもつロードレースは、隔離しやすいスタジアムスポーツとは異なり、新型コロナウイルス対策を施しにくい。それだけに複数回のPCR検査やレースバブル(外部と接触させない仕組み)などが徹底されている。「レースの週には合計3回もPCR検査受けないといけないし、国境を越える時も陰性証明書が必要。偽陽性が出ることもあるし、ストレスは多いです」とコロナ禍ならではの動きにくさを説明する。
「それでも2020年のロードレースはコロナ禍のスポーツイベント開催の成功例とされていますし、ロックダウンになったからレースも中断するのではなくて、開催に向けての糸口を見つけながらレースを開催してくれると信じてます。いつ中断するか分からないので、2021年も一つ一つのレースが大切。なので100%の力で挑みたい」。チームから託された役割を完璧にこなすために、プロ選手として17回目の春を迎える別府はフランスの地で静かに身体を研ぎ澄ましていく。
文:辻 啓
辻 啓
海外レースの撮影を行なうフォトグラファー
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