ブエルタ開幕直前！「第1週目からチャンスを探っていきたい」生まれて初めてのブエルタに臨む新城幸也

2009年にツール初出場（出走・完走5回）、2010年にジロ初出場（出走・完走2回）を果たした新城幸也が、2015年8月22日、いよいよ生まれて初めてのブエルタ・ア・エスパーニャへと走り出す。

「3大ツール全出走？いやいや、まだまだ。そういうことは、最後まで走り終わってから、ようやく大きな声で言えるんです。まあ、ブエルタは、うーん、楽しみではありますけどね……」

と、開幕の日の朝を迎えた新城は、苦笑いだ。というのも1時間もかけてチームプレゼンテーションの会場へとたどり着き、「何時に始まるのか、チームの監督さえ知らされていない」状況で2時間も現場で待たされた。

「ようやく順番が回ってきたと思ったら、1分もない、たったの40秒で終わっちゃったんですよ！カナダ人チームメートのアントワーヌ・デュシェーヌなんて、生まれて初めてのグランツールなのに、あまりのあっけなさにびっくりしてました（笑）。まあ、これが、ブエルタかな、と」

つまり開幕前に早くも、新城はブエルタの洗礼にあってしまったというわけだ。もちろん、レースへのモチベーションは、決して失ってはいない。

「たとえブエルタであろうとも、グランツールはグランツールなんですよ！ここで勝てば、グランツールの区間優勝を手に入れたことになりますからね。監督やチームのみんなから、『僕にあったステージがいくつもある』ことを、理解してもらっています。だから、任された時には、しっかりと結果を出したいと思っています」

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの落車によるフィジカル面への影響は、もはや感じない。あとはレースモードに頭をしっかり切り替えるだけ、とのこと。だから体と頭の調子がぴったり合うであろう3週目にこそ、大きな結果を出したいと考えている。また大逃げだけでなく、アップダウンを越えた後の中集団スプリントにも積極的に絡んでいきたいと意気込む。

「序盤3ステージのコースで軽くトレーニングしてみて、コース図と実際の地形が、ブエルタではずいぶんと違うことが分かりました。単純なるピュアスプリンター向けのステージというものが、存在しないことも。3週目とは言わず、第1週目から出来るときにはチャンスを探っていきたい。ステージの終わりは精一杯もがいていきたい」

この夏のツール・ド・フランスを総合リーダーとして走ったピエール・ローランも、新城と共にスペインに乗り込んできた。ただ、今回のブエルタに限っては、それほど「唯一絶対リーダー」という立場でもなさそうだ。

「ピエールだけじゃない。今回はロメン・シカールも総合上位を狙える位置にいる。シリル・ゴチエもがんばればいいところにいけるんじゃないでしょうか。だから、ピエール一本、という感じではないと思います。まずは最初の3日間が鍵です。第2ステージはいきなり上りフィニッシュだし、第3ステージに登場する上りは……、ホテルの近くなんですでに走りに行きましたけれど、なんかトゥルマレみたいなすごい上りですから。だから、まずは3日間。その後は成績次第で、総合を狙って行くか、行かないか、柔軟に対応していく感じでしょう」

インタビューする脇で、補給やバイクを準備するチームスタッフたちから、鼻歌が聞こえてきた。そのうちボトルを打楽器代わりにして、リズムをとったり、軽くダンスをしたり。アンダルシアはゆったりとした空気に包まれている。ユーロップカーが第4ステージの朝まで滞在するホテルの、目の前の大通りを一本越えると、そこにはコスタ・デル・ソル海岸が広がっていた。夏のバカンスの最終週を楽しむ老若男女で、賑わう

「暑いですね。合宿に行っていたタイのほうが、ずっと涼しかったくらいですよ。まあ、暑いのは、問題ありませんけど。海？……海辺で生まれ育ったので、海だからって特に感慨はないんです。海はもうおなかいっぱい！」

カラカラと笑い飛ばして、新城は、開幕前最後の軽いトレーニングへと走り出していった。