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キング開(横浜ビー・コルセアーズ #23)
専修大学では非凡な身体能力を生かしたプレーだけでなく、タフにプレーし続けることで知られるキング開。昨年末のインカレ後にU15のときから縁のある横浜ビー・コルセアーズとプロ契約を結ぶと、直近の13試合中12試合で10分以上の出場機会を得ており、2度の2ケタ得点試合でチームはいずれも勝利するなど、即戦力として活躍している。アメリカ人の父から教え込まれた心身両面でタフさ、大学時代に学んだコミュニケーション力やリーダーシップについてなど、プレー以外の部分でもいろいろ話を聞くことができた。(3月11日取材)
Q 中学時代にU15のメンバーとして過ごした横浜ビー・コルセアーズと、プロ選手として契約できました。当時から7年経過した今、改めてどんな道のりを歩んできたと思いますか? 思い出せることをできる限りたくさん話してもらえますか?
「自分の中では中学でアンダー15に入ることが、いつもの部活と違ったメンバーでレベルの高い中でできたというのが大きいです。その中でも次の高校に向けて、“自分が今どのくらいのレベルにいるのか”というのが、ビーコルのユースに入っていろいろなレベルの人とやれたことによってわかったので、それは自分の中で大きな財産になりました。高校はアレセイア(湘南)に進学し、引退した後にアンダー18の方に入らせていただいたんですけど、広島の佐土原(遼)とか今アメリカにいる田中力や小林良と一緒にやっていました。みんなレベルが高いですし、大学生との練習試合があったりして、本当に育成面に関してはいい環境でやれたなというのがあります。自分はずっとこの横浜でずっと育ってきているだけあって、ビーコルのユース出身でプロ契約になれたのはすごく光栄なことだと思っています」
Q 専修大学での4年間で自分が最も成長、レベルアップしたところはなんでしょうか?
「自分はもちろんスキル面とか、ガードにコンバートし始めたというのもあるのですが、4年間の中で一番成長できたなと思えるのは人間性の部分かなと思っています。メンタルの部分でもそうですけど、自分が2、3年生のときは先輩に盛實海翔さんとか西野曜さん(ともに現サンロッカーズ渋谷)がいて、どちらかと言えば引っ張っていくという存在よりは、エースたちについていくいうことでやっていました。自分が4年生でキャプテンになり、チームを引っ張っていく存在、チームを勝たせなければいけない存在になったときに、今までみたいなマインドではなく、“チームを勝たせるんだ”というマインドとキャプテンシー、コミュニケーション力もそうです。コミュニケーションの部分に関しては、3年生のとき特別指定選手でビーコルに入ったことでコミュニケーションの大切さを知ることができたので、それを自分のチームに持ち帰って還元できたのは非常に大きなことかなと思っています」
Q 積極的なコミュニケーションとリーダーシップの重要性を学んだと思います。キング選手の中で理想のリーダー、参考にした人物などはいますか?
「理想というかこの人というのはいないのですが、NBAを見ていてキャプテンシーのあるクリス・ポール(フェニックス・サンズ)やドレイモンド・グリーン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)とか、たまにYouTubeで試合中に何を話しているかがわかる動画を見たりします。そういう中でチームにどう声を掛けるのか、声の掛け方とかも英語でしたけど、それを日本語にしてという感じです。よくないことはよくないと言わなければいけないので、そこは相手の気持ちを考えてちゃんと伝わるように、だけど機嫌を損ねないような言い方をしてみたり、あとはキャプテンが下を向くとチーム全体が下を向いてしまうので、そこはどんなに負けていても、どんなに雰囲気が悪くなっても、自分だけは下を向かずに“チームで頑張ろう”と言ったら(みんなが)ついてきてくれると信じていたので、それは意識してやっていました」
Q 最後のインカレは4位という結果でしたが、東海大戦では右足首を捻挫しながらも、少しベンチに下がった後にまたプレーしました。「ここで下がったらカッコ悪い」という思いで復帰したようですが、そういったタフさの源はどこから来たのですか?
「多分親ですかね。お父さんもお母さんもバスケをやっていて、自分が小さいころからずっとバスケを見て育ってきました。やはりお父さんがアメリカ人なので、海外の選手とか本当にタフさがすごくあって、メンタルの部分もそうです。トラッシュトークとかも全然やる中でそこで負けないというところとか、どんなに相手がデカくて速くても立ち向かうタフさは、小さいころから“そのタフさを失くしていたら絶対にやっていけない”とずっとお父さんから言われていました。そのタフさを表現するのは、小さいころからの親の教えです」
Q アメリカ人の血が入っているからですね?
「それは非常に大きいと思います」
Q 大学時代には厄介な相手の司令塔だった河村勇輝選手とともに、横浜でプロのキャリアを歩むことになったことについてどう感じていますか?
「素直に自分はうれしく思います。本当に彼もこの世代で日本を代表するポイントガードの一人で、自分も今後代表に絡んでいきたいという目標があるので、こうしたレベルの高い選手と試合だけじゃなく練習から対峙できるというのは、自分の中でもプラスだと考えています。バスケに関して年齢は関係ないと思っているので、うまい選手からすごくいいものを吸収していきたいという気持ちがあります。そういう面に関しては勇輝のいいところを学びながら、自分も選手として成長していきたいと思っています」
Q キング選手から見た河村選手のすごさとは?
「同じガードとしてすごいなと思うのは、ピック&ロールのときの判断力はズバ抜けているなと思っています。パトリック・アウダ選手とのホットラインが決まっていますし、どのタイミングで攻めるのか、パスを出すのかを瞬時に判断していて、それは見ていて本当にすごいなという印象があります。自分も気になるところは勇輝に“その使い方はどうやっているの?”とか聞いてみたり、そういったいい部分はすごく参考にしています」
Q インカレが終わってからチームに合流しましたが、年明け後は10分以上の出場時間を得ています。B1でやれるという自信のレベルは徐々に上がっている感じでしょうか?
「そうですね。去年特別指定で入ったとき、自分の中でチャレンジしてみないといけないというのがあったので、正直プレータイムはあまりなかったのですが、出たときにしっかり結果を残せていたと思います。その部分に関しては自信につながりましたし、その自信を今も失くさずにやっていけていますので、それがプレータイムが増えてきたということにつながっているのだと思います」
Q 1月26日の広島ドラゴンフライズ戦で10点、2月5日のレバンガ北海道戦で12点を記録しただけでなく、チームの勝利に貢献しましたことをどのように感じていますか?
「バスケはチームスポーツ。もちろんシュートが入らない日もありますし、調子が悪い日もあると思うんですけど、“自分がチームを勝たせるために何ができるのか?”を自分で一番理解するのも大事ですし、攻撃型ガードと言われていますけど、自分の中ではディフェンスやルーズボールといった泥臭いところ、そういった小さいことを積極的にやっていきたいという気持ちがあります。そういうところは試合の勝敗に直接ではなくてもつながってくると思っています。もちろん、得点することも求められると思いますが、そこだけではなく、スタッツに残らないものを積極的にやっていこうとずっと思っています」
Q 自分が絶対的な武器と認識できるプレーはどんなところですか?
「細かい部分になってしまうのですが、ディフェンスからオフェンスへの切り替えの早さと前に走る走力は結構武器かなと思っています。この前の試合も勇輝のスティールからバスカンを決めたのもありますし、攻守の切り替えの早さは自分の中でも早いほうかなと思っています」
Q 英語ができるということで、外国籍選手との関係性も深くなっていると思います。彼らとのコミュニケーションを通じて、何か学んだことやちょっとしたエピソードなどはありますか?
「外国籍選手は常に“どんな状況であっても自信を持ってやれ”という言葉をいろいろな選手から言われています。去年横浜にいたロバート・カーター(現三遠ネオフェニックス)もそうなんですけど、“若い選手だからたくさんミスとかもすると思うけど、今ここにいるということは努力してきた結果だから、それは続けていこう。ミスをしても下を向かずに自信を持ってやっていけ”というのは、結構いろいろな選手から言われていて、そう言われると自分ももっと頑張れるという気持ちにもなれますし、この先ベテラン選手になってから若い選手が入ってきたときに自分も伝えていきたいなという気持ちにもなりました」
Q 何度もConfidenceと言われたわけですね?
「そうですね。Confidenceは…やはり自信がないとプレーに直結するので、それは本当になくさずにやろうと思います」
Q 改めて、残りのシーズンでどんなことをチームにもたらしたいと思いますか?
「残りのシーズンも20試合くらいですけど、個人のスタッツよりかはチームが少しでも勝てるように、去年の成績を超えられるようにやっていきたいと思います。もちろん個人で活躍するのも大事ですけど、何よりもチームの勝利のほうが一番大事なので、(試合に)出されたら全力でやって、1試合1試合学びながら、成長できる選手になっていきたいと思います」
Q 英語で自分のモットーか好きなフレーズを話してもらえますか? 日本語訳付きで…。
「フレーズはずっと小さいころから家族で共有しているというか、家訓みたいなものですけど、“KING STRONG”という言葉があります。キングは強いという意味なんですけど、本当に言葉通りで、キングという苗字は珍しいじゃないですか、日本では。アメリカにはいますけど、やはりキングは王様という意味なので、王様は強くなければその国を守ることができない。キングという名前は偶然じゃないということをお父さんからずっと言われてきて、やはりメンタルの部分ですよね。ハートを持つことがどれだけ大切なのかというのは、小さいころから“KING STRONG”と言われ続けてきたので、それは自分が死ぬまで言っていきたいなと思っています」
Q 最後の質問になります。What is your small win today?この24時間でちょっとだけ幸せだったこと、何かありますか?
「昨日チーム練習自体はなかったんですけど、ちょっとバスケがしたかったので、弟と一緒にバスケをしに行きました。そこでシュート対決をして、弟にしっかり勝ってきたというスモール・ウィンがありました。弟にはまだ早いぞというのを見せつけられたかなと思います」
文:青木 崇
【Bリーガーインタビュー】
【Bリーガーインタビュー】横浜ビー・コルセアーズ 23番PG/SG キング 開(取材日:2022年3月11日)
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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