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B1最高成績を残していた川崎ブレイブサンダース対宇都宮ブレックスの2連戦はファンの期待を裏切らない激戦となり、1勝1敗という結果に終わった。2月9日の試合は、宇都宮は天皇杯を含めて4連敗していた川崎にこれ以上負けられないという危機感がファンを含めた会場全体に浸透。後半にディフェンスの質が上がり、オフェンスでもペイントにアタックして得点を狙う姿勢を何度も見せたことによって、勝利を手にできたと言っていい。
8日の初戦、川崎は天皇杯準決勝で大勝した際3Pを10本決めていたが、佐藤賢次コーチはドライブでペイント内をアタックすることを重視したゲームプランを用意。藤井祐眞を中心にスクリーンを使ってのドライブ、オフボールのカットでボールをもらってのアタックなど、3Pを警戒していた宇都宮の裏を突くような展開で主導権を握っていた。
「終始ブレックスさんの激しいディフェンスに苦しめられた試合になりましたが、それは予想していて、激しく来る中でしっかりリングにアタックしようと(話をしていて)」と佐藤コーチが振り返ったように、川崎は藤井のアシストからジョーダン・ヒースがアリウープダンク、ニック・ファジーカスもミスマッチとなるとすぐにペイント内へとディフェンダーを押し込み、得意のプッシュショットで得点を量産。藤井のドライブも効果を発揮するなど、ペイント内のスコアで42対24と圧倒していた。
この日の宇都宮は、ディフェンスで後手後手になった状況が修正できないまま試合が進行。オフェンスではしっかりとボールを回し、オープンの3Pシュートを打つ機会も多かった。成功数は11本を数えたものの、FG成功率が36.8%。何が違うのかと考えたとき、ペイントアタックで得点するという姿勢で川崎がより強気だったという印象を持った。
そうなってしまった一因として、機動力、身体能力、サイズと腕の長さを備えたヒースの存在があげられる。リングをプロテクトできるショットブロッカーの存在は、ディフェンス面でアドバンテージになる。8日の宇都宮はヒースによってミスショットとなったシーンや、アタックしてもすぐにアウトサイドへキックアウトしてからの展開の連続していた。「ヒースとファジーカスが本当に大きいので、ドライブしに行ってもいうのがあるんですよね」という渡邉裕規の言葉は、強気に攻めきれなかったことを象徴するものだった。
しかし、2戦目は違った。川崎はペイントアタックで得点を狙いながら、それぞれの選手たちのいい判断でオープンの3Pを決める形を作り、ハーフタイムで10点のリードを奪う。しかし、篠田和之アナウンサーが実況したように、Bリーグ発足以降ブレックス・アリーナ宇都宮でアウェイチームが連勝したのは千葉ジェッツ(2016年と2017年に1回ずつ)のみ。これ以上負けられないという宇都宮の危機感がタフなディフェンスへとつながり、前半当たっていた川崎の3Pシュートは13本ともリングを弾く。
ペイントアタックということでは、3Q開始早々からジェフ・ギブスがクイックネスとフィジカルの強さを生かし、ゴール下から立て続けに得点したことで流れを引き寄せた。ライアン・ロシターもリバウンドを奪ってからボールをプッシュするだけでなく、そのままフィニッシュに持ち込むシーンが増加。安齋竜三コーチが「アタックするメンタルが常にあった」と語った2戦目は、ペイント内の得点で40対24と大きく上回った宇都宮が、川崎から今季初勝利を手にしたのである。
現代のバスケットボールは、NBAを含めて世界的に3Pシュートが重視されている。しかし、ペイントアタックから得点できなければ、オープンで3Pを打てる形はなかなか作れないのも事実。B1最高成績を争う2チームによる2連戦は、ペイントアタックからフィニッシュに持ち込むことの重要性を示す好ゲームだったと言えよう。
文:青木 崇
辻直人の「 辻な音 」第7回
青木 崇
NBA専門誌「HOOP」の編集者からフリーのバスケットボールライターとなる。NBAファイナル、NCAAファイナル4、世界選手権などビッグイベントの取材や執筆活動を行なっている。
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