【横浜好き】ベイスターズの『専属捕手』システム

山本祐大とジャクソン（左）

各ポジションで熾烈な争いが繰り広げられている今季のベイスターズですが、捕手も例外ではありません。

扇の要であるこのポジションには、昨季は終盤の戦線離脱まで首位打者争いに加わった山本祐大、日本シリーズMVPの活躍で下剋上の立役者となった戸柱恭孝、2022年ドラフト1位入団で将来の正捕手候補最右翼の松尾汐恩の3人がスタンバイしています。

ベンチに置いておくには惜しいと思われる3人の起用法として、三浦大輔監督が採用しているのが『専属捕手』です。かつては濱口遥大に高城俊人、今永昇太に戸柱恭孝などが、限定された期間で集中的にバッテリーを組むことがありましたが、今季はそれがより徹底されています。

今季も防御率1点台と、絶対的エースとして君臨している東克樹の登板試合では、ここまでの10戦全てで山本がスタメンマスクを被っています。最多勝、最高勝率の投手2冠に輝いた2023年には全ての試合でバッテリーを組み、昨季も山本が故障離脱するまでの23試合で共闘しました。

お立ち台での仲睦まじい姿は、ハマスタの風物詩と言える光景となっており、近年では最強のコンビと言えそうです。さらに来日2年目で左右の2枚看板となっている外国人2人、ジャクソンとケイも、今季は登板全試合で山本とバッテリーを組んでいます。

1年目はジャクソンが戸柱、伊藤光ともコンビを組んでいるのに対して、ケイは東と同様に山本離脱まで全ての試合で山本と組んでいますが、今季はいずれも防御率1点台と、山本が2人の実力をうまく引き出す結果となっています。

もう1人の先発助っ人右腕、バウアーは松尾が専属捕手に名乗りを挙げています。初来日時の2023年は、19試合中18試合で伊藤光とバッテリーを組んでいましたが、2年ぶりにNPB復帰となった今季は、初戦で山本、2戦目で戸柱、3戦目で再び山本とバッテリーを組み、6回1失点、5回5失点、7回4失点の内容で、まさかの3連敗。

しかし、今季4度目の先発となった4月27日の広島戦で、松尾がスタメン起用されると、8回1失点、10奪三振の快投で、NPB復帰後、初勝利をマークしました。

続く、5月3日の巨人戦で9回122球を投げて被安打6の完封勝利をマークすると、その後は交流戦の北海道日本ハム戦で今季2度目の完投勝利を挙げるなど、中5日と中4日登板を含めた7試合で8回以上を投げた試合が5回と、全て松尾とのコンビでフル回転の働きを見せています。

まだ20歳と若い松尾は、プロ2年目で23歳の石田裕太郎の専属捕手にもなりそうです。

石田裕は今季初先発となった4月4日の広島戦では、山本とバッテリーを組んで4回3失点と試合をつくれず負け投手になりましたが、2度目の先発では松尾がスタメンマスクを被り、9回107球、被安打1の完封劇で今季初勝利をマーク。その後の3試合では全て松尾とのコンビで先発に挑んでいます。

今季は戸柱が専属捕手になっているのが大貫晋一です。大貫は今季、バウアーの不定期な登板間隔の煽りも受け、一軍登録と抹消を繰り返すローテーションで7試合の登板にとどまり、1勝4敗と結果を残せていませんが、クオリティ・スタート率は71.4％と悪くなく、5試合で6イニング以上を投げて2失点以内に抑えています。

今季初勝利をマークした5月30日の東京ヤクルト戦では、「自分らしい打たせて取る投球ができた。トバさんのおかげ」と恋女房を称えるコメント。大貫は2023年にも戸柱とのコンビで3連勝をマークするなど相性は悪くないようで、このまま熟成を続ければ、いぶし銀の渋いバッテリーが誕生しそうです。

「不動の正捕手」は理想的な形かもしれませんが、現代野球では、複数捕手はむしろトレンドと言えるかもしれません。いずれにしても、投手にとって、そしてチームにとって、もっとも良い形になることを望みたいところです。

文：大久保泰伸