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野球 コラム 2023年7月31日

「大谷翔平の放出回避」は一見非合理的だが戦略的

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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大谷の処遇に関しては、球団の中ではペリー・ミナシアンGMの域を超え、アート・モレノ・オーナーの専権事項であったと報道されている。もともとこのオーナーは、精緻な分析に基づいた編成戦略より、スーパースターをドーンと獲得するような「打ち上げ花火」を好む傾向にある。

過去にも2003年オフにブラディミール・ゲレーロ(ブルージェイズの同名のスラッガーの父)、2011年オフにアルバート・プーホルスを獲得した。また、球界の至宝でもあるマイク・トラウトとは2019年に超大型の延長契約を結んで囲い込んだ。彼の指向からすると、今回大谷放出を回避したのは過去の事例通りの判断と言えるだろう。

また、MLBもプロスポーツである以上、ポストシーズン進出やその先にあるものを目標とするのは当然だ。しかし、その可能性が減少すると、いわゆる「売り手」に回りシーズン後半の勝敗や順位の優先度を下げることが正当化される風潮は個人的にはどうかと思う。

また、数年後に優勝を狙えるチームに再建するため、一旦高年俸のベテラン選手を根こそぎ放出する行為(タンキングという)は、それにより世界一の座についたカブス(2016年)やアストロズ(2017年)によって脚光を浴びたが、それなりの年数の低迷という大きな代償を伴っている。

レギュラーシーズンはわずか16試合のNFLなどとは異なり、ベースボールは長い夏の「日常」だ。ファンの心理を考えると、稀なポストシーズン進出のために何年も負け続けるより、毎年終盤まで一縷の望みを繋いでくれることのほうが、地元にしっかりファンベースを築き維持するには重要だと思う。

その観点からは、たとえ今季もエンジェルスがワイルドカードすら掴めずに終わることになったとしても、オフにFAの大谷との再契約に失敗し逃げられることになったとしても、球界最大のスターを手放さない、決して今季を諦めない姿勢を示したことは、ファンへのメッセージとしては重要だった。

加えて、(モレノ・オーナーがそこまで意識していたかどうかはわからないが)、ここで大谷に彼を放出しない、それどころか「買い手」にまわり補強する姿勢を敢然と見せつけたことは、オフの再契約交渉において他球団に対して大きなアドバンテージを得たとも言えるだろう。

文:豊浦彰太郎

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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