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野球 コラム 2023年4月5日

WBCは野球のワールドカップというより、球団ではなく母国・ゆかりの国で再編したMLB春のプレーオフである

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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WBC

2026年大会の開催も発表されているWBC

WBCが終わって半月が経過したが、多くのファンがまだその余韻に浸っているだろう。もちろん、それは侍ジャパンが3大会ぶりの優勝を果たしたこと、その戦いぶりは東京での5試合はほぼ完勝で、マイアミでの2試合は永遠に語り継がれるべき名勝負であったこと、によるものだろう。

WBCの実質的な主催者はMLB機構とその選手組合だが、機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーはいち早く2026年の開催を明言した。

WBCは過去5回の開催を経て着実に成長してきた。しかし、サッカーのワールドカップ(以下W杯)に比べると、ビジネス規模、ステータスは著しく劣っている。

サッカーW杯を比較対象にするのはおこがましすぎるにしても、WBCを真の世界一を決める大会と呼ぶのははばかれる要素は少なくない。

そもそも野球の盛んな国や地域は圧倒的に限られているし、決勝ラウンドの開催地は今のところアメリカ以外は考えられない状況だ。一次ラウンドの参加国・地域の配分も公平性よりビジネス重視のそしりは免れない。今回、決勝ラウンド寸前に、主催者が営業的観点から日本対アメリカの決勝戦を望むあまり組み合わせを変更したが、それなどあってはならないことだ。また、フィールド上でも、一流選手の出場回避傾向こそかなり解消したが、投手にタマ数制限が課せられていることや、順位決定要素に野球の本質にそぐわない失点率も入っていることなどには萎えてしまう。

しかし、それでもWBCは面白い。なぜか?

もちろん、それはわれわれが日本のファンで、侍ジャパンがとても強いからなのだけれど、それ以外にも大事な要素があると思う。

この大会をサッカーW杯との対比で見ると至らない点ばかりが目についてしまう。しかし、WBCは野球版W杯ではなく、「MLBのもうひとつのプレーオフ」ではないか(もうひとつポストシーズンとは言わない、プレシーズンに開催されるからだ)。

野球はアメリカで生まれた。そして、世界ナンバーワンのプロリーグであるMLBは基本的にアメリカ(とカナダ)で開催されている。しかし、その選手たちの構成は国境をはるかに超える。MLBとその選手組合によって運営され、最終決戦の場はアメリカに固定されているWBCは、球団ではなく母国やゆかりの国(ここでの「国」には「地域」も含む、以下同様)で再編されたMLBのもうひとつのフォーマットである。そう考えると、イタリアやイスラエルの選手が主としてイタリア人やイスラエル人ではなく、そこにルーツを持つメジャーまたはマイナーリーガーのアメリカ人であることにもそれほど違和感はない。

また、WBCは短期決戦だ。野球という競技の本質は「勝ったり負けたり」なので、大きなアップセットもあり得る短期決戦にファンは痺れるものだ。だから1戦たりとも応援するチームから目を離せない。

もちろん、WBCにはここでも挙げた数々の問題点を克服して欲しいのだけれど、サッカーW杯との対比で論じるのは正しくないと思う。WBCを哲学的に定義すると、球団ではなく母国・ゆかりの国で再編されたMLBのもうひとつのフレーオフなのだ。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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