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6年振りのマーチ・マッドネスが、いよいよ始まる……!第5回WBCは全20チームが各5チーム、4つのPOOLに振り分けられ、3月8日(水)日本時間13時に開幕します。侍ジャパンが戦うPOOL B、前回優勝のアメリカが入るPOOL C、そして中南米の強豪国がひしめくPOOL D、いずれも目が離せない試合が目白押し。でも、正味の話、一番楽しみな「死の組」は、実は台中で開催されるPOOL Aなのではないでしょうか……!?
実力伯仲、MLB選手やNPB出身者も多数出場、どこが勝ち抜けるか全く予想がつかない、そして勝ち抜けた2チームのうちどちらかが、同じくPOOL Bを勝ち抜けること間違いなしの侍ジャパンと準々決勝で対戦する、POOL Aの5チームをご紹介していきます。(※紹介する順番は予想順ではなく、WBC公式の組み合わせ表に準じています)
文責はJ SPORTS唯一の音楽番組「MLBミュージック」を担当している、私オカモト“MOBY”タクヤです。何と私、台中インターコンチネンタル野球場に赴き、全10試合を取材観戦してきます。現地での情報を逐一東京のスタジオに伝えるなど、レポーター的な役割を担う予定です。では、いってみましょう!
<チャイニーズ・タイペイ>
国際大会は19年プレミア12以来、東京五輪最終予選はパンデミックの影響で出場を断念したチャイニーズ・タイペイ。13年以来となるWBC自国開催となるチャイニーズ・タイペイ代表(以下、台湾)は、台湾プロ野球(以下、CPBL)が全面協力する形で監督やコーチ、そして選手の選出を進めてきました。CPBL組23人、海外組7人、また全体のうちMLB経験者4人というメンバーで構成されました。平均年齢27.4歳、若い力を結集し、2大会振りの1次ラウンド突破、東京行きという感激を手に入れることが出来るでしょうか。ちなみに初戦の3月8日(水)対パナマで始球式に登場するマリアノ・リベラの元チームメイト、王建民はチームの投手コーチとして参加。つまりヤンキースのスターターとクローザーが台中で再会する……!
【投手】
オフに埼玉西武に移籍した張奕は右肩、元カブスの曾仁和(CPBL楽天)は背中の炎症で残念ながら辞退となりました。しかし、台湾出身投手として昨年8年振りにCPBL最優秀防御率を記録したサイドスローの黄子鵬、また王維中や胡智為、李振昌、江少慶といったMLB組織からのカムバック組、千葉ロッテで活躍した「チェンチェン大丈夫」陳冠偉、21年CPBL新人王の曾峻岳など、先発・リリーフともに左右、そしてベテランと若手、タレントは豊富に揃っています。そしてNPB楽天イーグルスで安定した成績を残している宋家豪は台湾代表として初めてのホームゲーム。本人も「台湾のファンの前でプレーすることにとても興奮している」と意気込んでいます。
【野手】
注目は何といっても昨年CPBLで打撃“ほぼ”三冠王だった林立(CPBL楽天)。本塁打数が他の選手と同数、CPBLの規定により「打数が少ない方が受賞」というルールで惜しくも本塁打王は逃しましたが、MVPも受賞、打線の中心として期待されます。その本塁打王に輝いた捕手、吉力吉撈・鞏冠(味全)は18年に当時のインディアンズ3Aまで昇格した実力の持ち主。今オフに古巣レッドソックスとMLB契約を結んだ張育成にも長打が期待されます。他には西武のユーティリティー呉念庭、20年にCPBL記録となるシーズン174安打を放った陳傑憲、選球眼が良くバントも巧い出塁マシーン江坤宇など、バラエティに富んだラインナップとなっています。スモールベースボールで得点チャンスを逃さずに行けば、次は楽しい東京直行!
<オランダ>
ここ2大会連続で準決勝進出、ヨーロッパ最強チームであることは間違いないオランダ。オランダ本国、そしてキュラソーやアルバといった旧オランダ領出身の選手たちで構成されるこのチームは、過去のWBCでは対キューバに対して3連勝中、韓国に対しても2連勝中、そしてWBSC世界ランク7位。野球大国の仲間入りを果たしているといっても過言ではありません。そして今大会の開幕戦はそのオランダとキューバが対戦。大混戦のPOOL Aにおいて、その後の大勢を占う非常に重要な一戦となることは間違いないでしょう。
【投手】
MLB組織でプレーをした経験がある投手が数多く選出されてはいるものの、MLB経験者は第1回WBCでパナマ相手に7回参考記録ながらノーヒットノーランを達成したシャーロン・マルティネス(オランダ)のみ。他はマイナーでも2A以下、あるいはオランダやドイツで投げている投手で構成されています。強化試合の結果によってロースターも少々入れ替えている模様。ただ投手力に関してはPOOL Aの中では一番低いのではないか、というのが専らの評判……。
【野手】
一方の野手は、特に内野陣に関してはPOOL A屈指の顔ぶれを誇ります。今オフに11年2億8000万ドルの大型契約をパドレスと結んだザンダー・ボガーツをはじめ、ジョナサン・スコープ(タイガース)、ディディ・グレゴリウス(元ヤンキース他)、アンドレルトン・シモンズ(元エンジェルス他)といったお馴染みの面々。外野も現在FAのジュリクソン・プロファーにリッチー(ガーディアンズ)とジョシュ(パイレーツ)のパラシオス兄弟、そして今大会を最後に引退するウラディミール・バレンティンが名を連ねます。ただ正直、ボガーツやパラシオス兄弟はともかく、前回や前々回からあまり代わり映えのしないラインナップ。もちろんチームとしてのまとまりや経験の豊富さは間違いないでしょうが、ちょっと『昔の名前で出ています(小林旭)』といった印象もあり、今大会で新たなヒーローの出現があるといいな〜、と思っている自分もいたりします。
<キューバ>
2021年からバイデン政権になったことも影響し、アメリカ政府はMLBに所属しているキューバ出身亡命選手たちに対し、キューバ代表として今回のWBCに出場することを許可しました。1990年代以降、亡命による人材流出が止まらず、東京五輪には出場すら出来なかったキューバ代表ですが、今回はそれに歯止めがかかり、MLBでレギュラーを張る選手も出場、NPB経験者も多数選ばれ、かつての世界野球最強国が反撃の狼煙を上げる大会になりそうです。
【投手】
4年連続防御率1点台リヴァン・モイネロ(福岡ソフトバンク)、昨年セ・リーグでセーブ王ライデル・マルティネス(中日)、また開幕戦3月8日(水)の対オランダで先発が発表されたジャリエル・ロドリゲス(中日)といったNPB組は、日本・台湾で行われた練習試合でも相手を寄せ付けない好投。他にはトミージョン手術を経て昨年3年振りにMLBで登板、予選を勝ち抜き日本と対戦することになると登板するのでは?と噂されている左腕ロエニス・エリアス(カブス3A)、直近4年でMLB18登板のロナルド・ボラーニョス(ロイヤルズ3A)といったMLB組と、メキシコ・台湾・キューバでプレイする投手たちで構成されています。とりわけ評価が高いのがチーム最年少投手の左腕、23歳のナイケル・クルーズ。伸びるストレートと大きく曲がるカーブ、ついた異名は「第二のモイネロ」。NPBのチームも既に狙っているとかいないとか……。
【野手】
何といっても、ヨアン・モンカダとルイス・ロバートのホワイトソックスでレギュラーを張るコンビが、それぞれU18時代にプレーして以来のキューバ代表に復帰することでしょう。このふたりが台中でプレーすることに胸アツなMLBファンも少なくないはず。更にはあのヨエニス・セスペデスも。11年振りに代表に復帰した3月5日の練習試合では早速タイムリーヒットを放ったそうで、ここ数年MLBではまともにプレー出来ていないものの、実績は間違いありません。そこにWBC通算本塁打王(7本)のアルフレッド・デスパイネやジュリスベル・グラシアルといったNPBファンにはお馴染みのベテラン勢、更にはNPBやMLBマイナー経験組が脇を固めます。大会前の合宿で左膝を痛め心配されていた捕手アリエル・マルティネス(北海道日本ハム)もどうやら間に合いそうです。
<イタリア>
前回大会までは1次ラウンドでアメリカ開催のプールに入り、並み居る強豪相手に最後の最後で苦杯をなめることの多かったイタリア。今回、初めて1次ラウンドでアジア開催のプールに入ることになったことにより、POOL Aが一気に大混戦になったことは間違いありません。残念ながら辞退してしまった選手も出ましたが、MLB選手も数多く参加します。そして第1回は選手として、第2・3回は打撃コーチとして、今回は監督として参加するマイク・ピアッツァが台中で采配をふるうことに、ボクは既に心躍っています……!
【投手】
残念ながらブルージェイズのクローザー、ジョーダン・ロマノが出場回避となったものの、昨年デビューし先発・リリーフ両方で活躍したゴロマシーンのアンドレ・パランテ(カーディナルス)、昨年54回を投げ奪三振64のマット・フェスタ(マリナーズ)、21年まで通算222登板と経験豊富なジョー・ビアジーニといったMLB組を中心に、マイナー各クラス、そしてKBO経験者などバラエティに富んだラインナップが集まっています。中でも注目は13年MLBオールスターのナ・リーグ先発投手を務めたマット・ハービー。メッツでワールドシリーズに出場した15年をピークに下り坂、22年はマイナー止まりでしたが、WBCで是非とも輝きを取り戻して欲しいものです。メッツ時代のチームメイト、ヨエニス・セスペデス(キューバ)との対戦も観たいしですし、ましてやPOOL Aを勝ち上がり東京ドームで先発、とか想像してみてくださいよ……!
【野手】
日本でもお馴染みデイビッド・フレッチャー(エンジェルス)、そしてニッキー・ロペス(ロイヤルズ)の俊足かつ堅守でコンタクトヒッターという似たタイプの二人に、殿堂入り名選手ジョージ・ブレッドに名付けられた「イタリアン・ナイトメア」の異名を持つ長距離砲ビニー・パスカンティーノといったタレント揃いの内野陣は他のチームにひけを取りません。また、外野はトリプルAの選手で構成される中、注目は今年のMLB公式によるプロスペクト全体30位、新人王候補とも称される外野手サル・フレリック(ブリュワーズ)。広角に強い打球を打ち、選球眼も良く、俊足で守備範囲も広いとの評価。MLBデビュー前に台中で躍動する姿を、しっかりとこの目に焼き付けたいと思います!
<パナマ>
アメリカを代表するヒップホップ・グループ、ビースティ・ボーイズがラップで引用したほどの伝説的な「安打製造機」としてその名を轟かせていたロッド・カルー、そして史上初の得票率100%でアメリカ野球殿堂入りを果たし、3月8日(水)の対台湾で始球式を務める予定のマリアノ・リベラといった名選手を生んだ国、パナマ。昨年9月に自国で開催された予選を勝ち抜き、3大会振りに悲願の本大会出場を果たしました。実は、POOL Aの中でMLB40人枠に入っている選手がイタリアの8人に次ぐ2位(全体9位)、6人を要しています。大会通算0勝5敗、まずはWBC初勝利を挙げること。そうすれば、予選から勝ち上がってきたチームのまとまりを活かして「死の組」POOL Aでサプライズを起こす可能性も、ないとは限りません……!
【投手】
昨年はロングリリーフとしてキャリアベストの投球を見せた大谷翔平のチームメイト、ハイミ・バリア(エンジェルス)を筆頭に、MLB2年で57登板のジャスティン・ローレンス(ロッキーズ)、19年にショートから投手に転向し転向1年でMLBまで上り詰めた経歴の持ち主ハビー・ゲラといったMLB組が中心となるでしょう。MLB通算8年271登板のランドール・デルガド(ドミニカ)、同じくMLB通算2年34登板のセベリーノ・ゴンザレス(パナマ)といった経験ある投手から、マイナー組織や台湾、パナマリーグで投げる若手で構成されています。
【野手】
投手陣に比べると、層の薄さは否めないのが正直なところ。とはいえ、このチームの軸になるのが昨年MLBで101試合出場11本塁打、レイズの正捕手クリスチャン・ベタンコートというのは頼もしいです。そしてMLB通算663試合出場、メッツの正遊撃手を務めたこともあるルーベン・テハダ(米独立L)を中心に、MLB球団別のプロスペクトに名を連ねる若手、そしてパナマリーグでプレイする選手たちは全体的に四球を選び、足でかき回し、バントも多用する傾向にあります。また複数ポジションを守れる選手も多いのが特徴。日本に次いで高校野球が盛んな国といわれるパナマですから、やはり全員野球が持ち味なのでしょうか。
<まとめ>
実力拮抗、注目選手も多数出場、見どころ満載なことは間違いありません。ここでポイントとなるのは、やはり投手起用になってくるかと思います。
今回の1次ラウンドでは、
・1試合につき65球まで(打席中に到達の場合はその打者の打席完了まで)
・1試合50球以上投球した場合は、中4日を空けなければならない
・1試合で30球以上、また2日連続で投げた場合は、中1日を空けなければならない
となると、レベルの高いエース格の投手が抑えたその後を担う、後続の投手たちの踏ん張りが重要になってきます。エース格には抑え込まれたけれども、交代した後の投手だと一気に球が見やすくなって大量点に繋がる、なんてことが予想されるからです。
球数にも注目しながら、かつてない大混戦が予想されるPOOL A全10試合、
皆さんも是非楽しんでいただければ幸いです!
文・オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)
オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)
1995年結成、"LIVE CHAMP"の異名を持つロックバンド「SCOOBIE DO」のドラマー兼マネージャー。
MLBコメンテーターとしても精力的に活動し、J SPORTS「MLBミュージック」メインMC、そして2023年シーズンからMLB中継の解説を担当予定。2022年4月には初の著書『ベースボール・イズ・ミュージック~音楽からはじまるメジャーリーグ入門』(左右社)を出版。MLBに関するラジオ出演や執筆活動も多数。2021年にはテレビ東京系ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』で俳優としてもデビュー。
SCOOBIE DO http://www.scoobie-do.com/
Twitter: @moby_scoobie_do
Instagram: @moby_scoobiedo
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