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野球 コラム 2021年7月22日

大谷翔平、ルースも成しえなかった「二刀流でシーズン完走」なるか?

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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大谷翔平

大谷翔平

「極端な三振率の高騰」「歴史的低打率」「粘着物質による不正投球」、今季のMLB前半戦の話題は多々あるが、やはりもっとも注目を集めたのは大谷翔平の投打にわたる大活躍と言うべきだろう。

現在、日米のメディアとファンの関心は「本塁打王獲得なるか」であり、さらにその先の「60本超えの可能性」に集中している。

「60本」というのは特別な数字だ。メジャーの歴史でシーズン60本を達成した選手は5人しかいない。ベーブ・ルース(27年60本)、ロジャー・マリス(61年61本)、マーク・マグワイア(98年70本、99年65本)、サミー・ソーサ(98年66本、99年63本、01年64本)、バリー・ボンズ(01年73本)だ。しかし、マグワイア、ソーサ、ボンズに関しては能力増強目的でステロイドなどの薬物を使用したことが確実視されている。いわば、自力で達成したのはルースとマリスの2人だけなのだから、大谷の60本を目指す戦いに注目が集まるのは当然だ。現地7月20日終了時点で34本塁打。チームは94試合を消化しており、現在59本ペースだ。

しかし、個人的にそれと同じくらい、いやそれ以上に注目しているのは、果たしてこのまま故障に見舞われることなく、二刀流でシーズンを全うできるのか、ということだ。

大谷のプロキャリアを通じて、これまで故障なくシーズンを過ごし、投打の両方で周囲を唸らせる成績を残したのは、NPBでMVPに選出された2016年だけだ(「だけ」という表現は適切ではないかもしれない。一度でもあること自体が驚異だからだ)。そして、その後はNPB、MLB を通じ、4年連続で大きな故障に見舞われている。

今季の大谷は、成績もさることながら、そのタフネスぶりにも驚かされる。ここまでチームの94試合中92試合!に出場し、うち87試合がスタメンなのだ。その内訳はDHで73試合、投手として14試合で、その14先発登板のうち、11度はリアル二刀流である。俄かファン(失礼!)は、彼の鉄人ぶりを賞賛するだけかもしれないが、決して故障とは無縁の選手ではないだけにこのあたりは大いに心配だ。特に、先発登板前後の試合に関しては、もっと配慮が必要ではないか。

大谷は二刀流の元祖であるルースと比較されることが多い。ルースは1915年から17年の3年間に通算65勝も挙げているが、基本的にこの頃の本職は投手で、時折打者としても出場した程度だ。本格的に投打両方で出場し始めたのは18年で、投手として13勝7敗の傍ら11本塁打で本塁打王になっている(まだ、世は「飛ばないボール」の時代だった)。そして、翌年は当時としては驚異的な29本で本塁打王に輝きながら、9勝(5敗)を挙げている。

しかし、ESPN のデビッド・ショーンフィールド記者も指摘しているが、その2年間に関しても、18年は開幕を投手として迎え、打棒好調なため5月からは一塁手や外野手での起用が多くなり先発登板は減少。8月に再び投手に専念(この年は第一次大戦のため、9月頭にはシーズンが終わっている)という変則起用だった。

翌19年は投手での起用は基本的にシーズン前半戦のみだった、と言って良い。当時は、先発すると基本は完投したため、年間の投球回数と勝利数や敗戦数が現代の基準からすると多いためわかりにくいが、シーズンを二刀流として全うしたことはない、とも言えるのだ。そうなると今季の大谷が二刀流のまま、故障欠場なく閉幕を迎えることになると、空前にして絶後だ(ルースの時代にはなかったDH制の恩恵を享受している点は否定できないが)。

この秋、われわれは歴史の証人となる可能性が高い。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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