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野球 コラム 2021年5月23日

「多すぎるノーヒッター」の背後に潜む本当の問題点

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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また、打者も「フライボール革命」の波に乗り、従来以上に長打を狙い、その代償として三振を厭わなくなっている。メジャーでは昔から「ホームランバッターは(アメリカの高級車の象徴であった)キャディラックに乗る、シングルヒッターはフォード(ここでは大衆車の意味で用いられている)に乗る」という格言があるが、それに対する信奉が強まった?のだ。

低打率化傾向には、三振増だけでなく、近年すっかり普及した極端な守備シフトも貢献しているかもしれない。本来なら、野手の間を抜けていく打球が凡打になるケースは多い。性急な判断は禁物だが、「長い目で見れば3割」のはずのBABIPが今季は.288で、これは1993年以降では最低だ。

そして、今季から採用されている低反発と言われている公式球の影響もあるかもしれない。ただし、本塁打数は減っているとはいえ、ひと昔前と比較すると依然高水準にある。

ここに紹介した要素の総合が、やたら多いノーヒッターという現象に繋がっているのだと思う。しかし、ここで本当に問題視すべきは、ノーヒット・ノーランのインフレとそれによる価値の低下ではない。

真の問題は、投手と打者の対戦の結果に対し、本塁打と三振(さらに言えば四球)の構成比が高くなったことなのだ。ある程度数が抑制されている限り、本塁打はやはり野球の華だと思うし、奪三振シーンもエキサイティングだ。しかし、それらは四球も含めアクションの停止をもたらしてしまう。打球を追いかける野手、メジャーならではのダイビングキャッチ、スリルに満ちた走塁、これらがどんどん減少しているのだ。野球はよりアクションの少ない退屈な競技になりつつある。

われわれは、ノーヒッターの大安売りという直接的な現象だけでなく、その背後に潜む野球の魅力の本質への危機にも目を向けるべきだろう。

文:豊浦彰太郎

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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