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野球 コラム 2021年2月1日

米殿堂入り 今年もダメだったボンズ、クレメンス、シリングはこの先どうなる?

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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現地時間1月26日に発表された今年の全米野球記者協会(BBWAA)選出の野球殿堂入り投票結果では、規定の75%以上の票を得た候補者がおらず、2013年以来の選出なしとなった。

最大の注目対象であったステロイド疑惑のバリー・ボンズとロジャー・クレメンス、差別的かつ極右的な言動で物議を醸すカート・シリングは、いずれも前年から足踏みとなった。彼らは、来年、被投票資格最終の10年目を迎える。

この3人のフィールド上の業績自体には殿堂入りに議論の余地がない。ボンズはMVP7回受賞で通算762本塁打、クレメンスはサイ・ヤング7回受賞で354勝、シリングは通算勝利こそ216だが、最多勝利2回でなによりもポストシーズンでの大活躍で球史に名を残している。

しかし、率直に言って来年もこの3人は選出されないだろう。

ボンズとクレメンスは資格を得て5年目の2017年に前年の40%台から50%に明確に票を伸ばした。実は殿堂入り投票にはある傾向があり、一度でも50%台に乗せた者は最終的には選出されるのだ(例外はある)。あくまで個人の主観投票なので、ある候補者が50%以上になるとその候補者に票を入れていなかった投票者も「入れなきゃ」という気になるのだろうか。また、資格最終年に近づくと得票率が上がるという傾向もある(それがあるべき姿かどうかは別だが)。

しかし、ボンズとクレメンスに関しては異なる。2018年以降も目に見えた票の伸びはない。むしろ、「当選ライン」の50%に乗ってしまったことで、投票者に躊躇させる効果をもたらしてしまったとも言えそうだ。今回もボンズは61.8%で前年からわずか1.1ポイントの上乗せ、クレメンスも61.6%で0.6ポイントのみのプラスと、停滞している。

これは、シリングに関しても同様だ。お騒がせキャラが災いしもともと実績の割には票の伸びが遅かったのだが、それでも昨年はついに70.0%に達した。「70%」にもジンクスがあり、過去70%以上75%未満の得票率だった候補者は、翌年は資格をまだ保持していれば選出される、というものだ(これも例外がある)。そして、今回71.1%だったシリングはその数少ない例外となった。現地関係者の見方は結構シビアで、シリングは1月6日の熱狂的トランプ支持者による議会議事堂襲撃に関しても肯定的なツイートを発しており、「もし(昨年末だった)投票の締め切りが事件発生以降だったら、票ははるかに少なかっただろう」と言われている。

したがって、3人とも来年も見通しは極めて厳しいのだけれど、これでジ・エンドかと言うとそうではない。殿堂入りには別ルートもある。

BBWAA選出とは別に、少人数からなる「時代委員会」が過去の歴史を4つに分け、一定のサイクルで各時代ごとにまだ殿堂入りしていない名選手を拾い出し選出しているのだ。なお、BBWAAは選手のみを対象としているが、こちらは審判、監督、経営者もカバーしているので、単なる敗者復活戦ではない。

ボンズら3人は、時代委員会の4つのカテゴリーのうち、1988年以降を対象とする「Today’s Game」でその資格が吟味されることになる。時代委員会経由でも75%以上の得票を必要とするが、400名前後が投票するBBWAAとは異なり、こちらはわずか16人。しかも投票一本ではなく、その前にしっかり審議も行われる(そのため、2021年度の選出は新型コロナ感染拡大回避のため見送られた)。

元選手の選出が、BBWAAと時代委員会の二段構えになっている意義としては、時間の経過とともに変化する価値観や選手の評価基準への対応が挙げられる。比較的近年では、セイバーメトリクスの発達と浸透により、殿堂入りボーダーラインもかつてのような「打者は3000本安打か500本塁打」というような画一的なものではなくなっている。また、後年の統計の専門家が、ステロイド時代の異常な成績を公平に評価する手法を見出すかもしれない。

歴史観の変化もあるかも知れない。ボンズらがステロイドを使用したことはほぼ確実だが、MLBで禁止薬物に指定されたのは彼らが手を染めた後の話だ。また、薬物検査で陽性反応を示したことはない。一方で、すでに殿堂入りしている者の中にも、マイク・ピアッツア(2016年)、ジェフ・バグウェルとイヴァン・ロドリゲス(ともに2017年)、など現役時代から薬物使用の噂がついて回った者もいる。いや、ボンズなどはそもそも薬物を使用し始めたとされる90年代末以前から、すでにパワー&スピードで殿堂入りに相応しい成績を挙げていた。後年、ステロイドボーイズたちを再評価しようという動きが出てくる可能性はある。

シリングにしても、そもそも殿堂入り資格の有無はフィールド上の業績だけで判断すべきで、そこに「人格」を持ち込むべきではないという意見もある(規定上は、人格も入っている)。

いずれにせよ、時代委員会は、重い課題を受け継ぐことになりそうだ。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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