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そのWBCは、肝心のメジャーリーガーの出場回避傾向などの問題を抱えていたが、前回の2017年大会でついにアメリカが優勝したこともあり、少しずつではあるが認知が高まっている。また、先日、前回大会MVPのマーカス・ストローマン(メッツ)がSNSでメジャーリーガーにWBCへの参加を呼び掛けたところ、あくまで非公式ではあるが、今やドジャースのエース格のウオーカー・ビューラー、昨季ナ・リーグMVPのコディ・ベリンジャー(ドジャース)、本塁打王3度のノーラン・アレナード(ロッキーズ)らの超一流が参加意思を表明している。選手の意識も変化しつつあるのだ。
そんな環境下、MLBが五輪の延期を理由に自発的にWBCを2022年にリスケするとは思えない。むしろMLBが、すでに東京五輪出場枠を獲得している日本や韓国、メキシコ、イスラエルに対し、2021年はWBCにより重点を置いた編成を迫るのではないか。これはこれで理に叶っている。なにせ、五輪野球はしょせん東京大会だけで、2024年のパリでは採用されない。その次は、2028年アメリカのロサンゼルス大会だが、夏場の開催でかつMLBが公式戦を中断する意向がない限り、米国側から野球をプロが参加する正式競技として採用させようという動きもない、と考えるのが普通だろう。
それでも、MLBが自発的にWBCを1年遅らせるとすれば、それは今季ペナントレースの開幕が遅れに遅れ、噂されているようにポストシーズンが12月にずれ込む展開になった場合だろう。さすがに年内近くまで熾烈な戦いをこなし、その3ケ月後にWBCというのは酷だ。これでは、トップクラスの出場が望めなくなってしまう。
その一方で、この3月にアリゾナで開催予定だった次回大会の予選ラウンドがキャンセルされたことは、本大会の1年延期への強烈な動機にはならないだろう。すでに実績ある16の国と地域の参加が決定しており、予選を戦う12ケ国が争うのは2021年大会から拡大される残り4枠なのだ。どこが勝ち抜くにせよ、本大会での優勝の行方にはほぼ無関係だ。MLBが、予選を慮るあまり大切な本大会の開催を危ういものにするとは思えない。
もし、MLBが「WBCにこそベストメンバーで臨むように」と要望してきたら、NPBは五輪開催国としてかなり困難な選択を迫られることになるだろう。
文:豊浦彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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