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野球 コラム 2019年10月18日

ポストシーズンをも回避したかつてのガラスのエース、ストラスバーグが迎える初のワールドシリーズ

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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ワシントン・ナショナルズが、前身のモントリオール・エクスポズ時代も含め初のワールドシリーズ出場を決めた。その原動力は強力な先発投手陣で、その中核であるスティーブン・ストラスバーグにとってはようやくたどり着いた夢の舞台だ。

ナショナルズはリーグチャンピオンシップシリーズでカージナルスに4連勝。これでシーズン終盤から18試合で16勝とまさに破竹の勢いだ。

しかし、今季の出足は最悪だった。5月23日時点では19勝31敗と大きく負け越し、首位フィリーズには10ゲーム差。トレードデッドラインを控えた7月のフラッグディール戦線では売り手に回るのでは、との見方もあった。その一方で、正反対の意見も根強かった。確かに低迷はしているが、先発投手陣にはタレントが揃っており、アキレス腱のブルペンを補強すれば巻き返しは可能という見方だ。

首都移転以降では最大のスターだったブライス・ハーパーがFAで流出し迎えた今季だったが、その分外野に超有望株のビクトル・ロブレス起用が可能となり、補強予算にも余裕が生まれたナショナルズの開幕前の下馬評は決して低くなかったことも強調しておきたい。

そして、ナショナルズはワイルドカードを獲得した。そこまでの巻き返しとポストシーズンに入ってからの躍進の原動力は、やはりストラスバーグ、マックス・シャーザー、パトリック・コービンの200奪三振トリオを核とする先発投手陣であったことは間違いない。特に、カージナルスとのシリーズでは彼らにアニバル・サンチェスを加えた4人の先発投手が、計26.1回で40奪三振、防御率は1.35と無敵ぶりを誇った。

で、本稿の主題であるストラスバーグだ。

故障の多さからガラスのエースというイメージがついて回っていたが、今季はリーグ最多の209投球回と大車輪の活躍を見せ、18勝で最多勝利のタイトルも獲得した。

しかし、彼をポストシーズンとの関連で語る際に、2012年シーズンは避けて通れない。

2009年のドラフトで全体第1位でナショナルズに指名されたストラスバーグは順調に成長し、2010年にはメジャーデビューを飾った。しかし、その後右ヒジ靭帯に損傷が発見されトミー・ジョン手術。2011年はそのほとんどをリハビリで過ごし、終盤に復帰したばかりだった。

翌2012年、開幕前にナショナルズはストラスバーグに対しシーズン160回を上限とする厳格な投球回制限を明言。そして、9月上旬にそのリミット寸前に達するとあっさり彼の起用を打ち切った。この年、ナショナルズは移転後初のポストシーズン進出(地区優勝)を果たし、この年開幕時23歳のストラスバーグは、ルーキーで19歳のブライス・ハーパーと並ぶ象徴だったが、球団の方針はぶれなかった。一説には、ストラスバーグ代理人で辣腕で知られるスコット・ボラスが球団に対し強い影響力を発揮したとも言われている。

そして、ストラスバーグ不在のナショナルズは2勝3敗で地区シリーズで敗退した。

このことは大きな議論を招いた。故障上がりの若い有望な投手の起用に細心の注意を払うことにだれも異論はないが、その時点で故障を抱えているわけではない。しかも、160回という基準に明確な医学的根拠があるということでもない。そもそも、選手にとっても球団にとっても究極の目標であるポストシーズンの機会は、翌年以降も保証されているものではない。ナショナルズは、その後も2014年、2016年、2017年、そして2019年とプレーオフに進出したが、それはあくまで結果である。

実はナショナルズは2017年まで、出場した全てのポストシーズンでその最初のラウンドとなる地区シリーズで敗退しているのだが、一方でストラスバーグはしっかり結果を残している。2016年も故障で9月上旬にはシーズンシャットアウトとなり登板機会はなかったが、2014年、2017年合計で3試合19回を投げ、星は1勝2敗ながら防御率は0.47だ。

そして今季の3先発と1救援を加えると、プレーオフ通算では41回、7登板、6先発で防御率1.10、57三振&5四球は驚異的だ。

ワールドシリーズでストラスバーグをはじめとする強力先発陣がここまで同様のパフォーマンスを発揮しナショナルズが世界一になれば、彼自身もようやく2012年の措置の呪縛から解放されるのではないか。

なお、ストラスバーグは2016年5月に翌年からの7年総額1億7500万ドルという大型契約を結んでいるが、このオフはその残4年1億ドルを破棄しFAとなる権利を有している。ここ2年ほどのFA市場の冷え込みを見るとFA宣言にはそれなりのリスクが伴うと言わざるを得ないが、キャリアベストのシーズンを過ごした31歳のストラスバーグにとっては、ビジネスの面でも有終の美を飾りたいワールドシリーズの舞台となる。

文:豊浦彰太郎

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豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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