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2019年MLBも米本土での開幕から2ヶ月以上が経過し、各球団とも60試合前後を消化した。そこで、ここまでのペナントレースを振り返ってみたい。シーズンの1/3強が過ぎ、勝ち組と負け組の明暗、傾向は概ね明らかになったと言えよう。なお、記事中の数値は全て現地6月3日時点でのものだ。
■故障者続出でも昨年の100勝を上回るペースのヤンキース
ここまで累計18人がのべ20回も故障者リスト入り。現在も、ルイス・セベリーノ、アーロン・ジャッジ、ジャンカルロ・スタントンら投打の柱を含む13人が故障者リスト入りしているが、勝率.655でア・リーグ東地区首位。このペースならシーズン106勝で、100勝だった昨季を上回る勢いだ。その理由は層の厚さ。JD・ラメイヒューなど他球団ならレギュラークラスが出番を待っていた。ドミンゴ・ヘルマンやジオ・ウルシュラはチャンスを与えられると一気にブレイクした。
■最激戦区のはずが・・・ナ・リーグ東4強の明暗
この地区は、最弱のマーリンズ以外は全てが優勝候補の最激戦区と見なされていた。昨季地区優勝のブレーブス。元々戦力は充実しており、オフにはブライス・ハーパー流出も効果的な補強を展開したナショナルズ、そのハーパーを手始めにカネに糸目をつけぬ補強を展開したフィリーズ、フィリーズほどではないがオフに積極的に動いたメッツ。しかし、4強からメッツとナショナルズが早くも脱落しかけている。残るブレーブスとフィリーズも相対的に上位にいるが、圧倒的な強さは感じられない。
■優勝候補から一転・・・バウアー放出すら噂されるインディアンス
オフには目立った補強は皆無だった。それでもインディアンスは鉄板の優勝候補に挙げられていた。ア・リーグ中地区には再建途上の球団が多いためだ。しかし、蓋をあけると昨季凹んだツインズが躍進。インディアンスは自慢の先発投手陣からコリー・クルーバーとマイク・クレビンジャーが故障で離脱する不運もあり、大きく引き離されている。このため、7月には孤軍奮闘のエース、トレバー・バウアー放出に動くのではとの憶測すら出ている。
■新人の台頭
多くの有望新人がデビューしたことも、今季のここまでの特長だ。
話題性なら、開幕から正遊撃手で起用された(現在は故障者リスト入り)フェルナンド・タティース・ジュニア(パドレス)と、4月下旬に昇格すると5月には週間MVPに選出されたブラディミール・ゲレーロ・ジュニア(ブルージェイズ)が、双璧だ。
しかし、他にも3〜4月の月間新人王に選出された2人、メッツのパワーヒッター、ピート・アロンゾとレイズの二塁手ブランドン・ロウ、投手では今やパドレスのエース格クリス・パダック、57.1回で被本塁打がわずか1本で防御率1.41のマイク・ソロッカ(ブレーブス)など人材が揃っている。
ただし、この先の注目株としては、個人的な趣味も含めてナショナルズのビクター・ロブレスを挙げておきたい。まだ全体的に粗く三振が多いが、現在8本塁打&9盗塁で30−30(30本塁打&30盗塁)も狙える。
■飛び過ぎ(本塁打乱発)
ここまでのチームあたりの1試合平均本塁打数は1.34本。1.26本で史上最多だった2017年を大きく上回っている。このペースなら、シーズンでは2017年の6105本の上を行くどころか、6500本に達する可能性もある。5年前の2014年には4189本だったので、そのインフレぶりがお分かりいただけるだろう。
現在、ツインズ、マリナーズ、ブルワーズがすでに100本を越えており、最終的に300本塁打を達成する可能性すらある。その中で、オリオールズが48試合目で被弾が100本に到達するという不名誉な話題もあった。
この状況は「フライボール革命」の影響もあるが、「明らかに今年のボールは飛び過ぎだ」との現場からの声も出ている。
また、本塁打が乱れ飛ぶのは三振増加とセットになっている。ここまでのチームあたりの1試合平均三振は8.75でこれも史上最多。ほぼ1イニングに1回三振していることになる。平均三振数は1989年には5.69だったので、この30年で5割増しだ。
この煽りを受けた?のが平均打率だ。今季の.248は昨季と並んで(正確には今季の方が0.0004ほど高いが)1972年の.244以来の最低だ。本塁打以上に三振が増えれば、BABIP(本塁打を除くインプレー打球の打率、長いスパンでは概ね3割前後になると言われている)の法則で平均打率は低迷するということか。
■入らな過ぎ(観客動員低迷)
平均観客数は26808人。これは前年同期比1.4%減で、4年連続の減少だ。
球団別では全30球団中17球団が前年割れ。特にマーリンズの不入りは深刻で、唯一平均1万人に満たない(9479人)。晩年のエクスポズや1970年代後半のアスレチックスを想起させる。
ロブ・マンフレッド・コミッショナーはテレビ中継の視聴率やウェブストリーミングの視聴者数は伸びていることを挙げ、「野球人気は低迷していない」と主張するが、心配な状況であることは確かだ。
原因としては、オリオールズやマーリンズを始め、開幕時点から白旗モードの球団が少なくないこと、近年チケット価格が上がりすぎたこと、試合時間が長引く傾向が続いていることが要因として考えられる。
文:豊浦 彰太郎
豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]
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