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野球 コラム 2018年7月12日

レイズ新球場プランは画期的プラン?それとも絵に描いた餅?

MLB nation by 豊浦 彰太郎
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レイズが新球場プランを発表した。全球団中、最も魅力のないボールパークのひとつとまで酷評されるセントピーターズバーグのトロピカーナ・フィールドを出て、タンパに建設するという新球場は2023年のオープンを目指しているようだ。しかし、現時点では「Pie in the sky(絵に描いた餅)」に終わる懸念もある。

その新球場プランはいくつかの点で個性的だ。1992年にオープンしたボルティモアのカムデンヤーズに端を発し、その後主流となった復古主義デザインとは全く異なる近未来的デザインだ。大きな特徴としては、透過性の固定ルーフを持ち、周囲をガラスで覆っていることが挙げられる。この、まるで金魚鉢のような発想は、降水量が多く高温な気候対策とクローズドルーフの球場特有の閉塞感の排除を両立するためのものだろう。残念ながらコストの面でルーフの開閉は見送られたが、側面のガラスは一部可動式らしい(逆にすれば良かった?)。

他にも記すべき点がある。収容人員はわずか3万人強で、完成すれば全球団の本拠地中最少となる。その分、砂場エリアや噴水そばの席やピクニックシート、ブルペンバーと、アメニティの充実には力を入れている。少ない収容人員は近年のトレンドで、満員感を醸し場内の一体感を増すとともにチケット価格を上昇させることを狙ったものだ(個人的にはこの考え方には賛同できないが)。また、「小ささ」はこの新球場のテーマのひとつで、ファウルゾーンは極めて狭く、ダイヤモンドとの距離は、リグレー・フィールド、フェンウェイ・パークに次ぐ近さらしい。

また、コンコースは24時間の週7日解放となるようで、「試合がない日も人々が訪れる(お金が落ちる)施設に」というのも、2017年オープンのアトランタのサントラストパーク同様に最近のトレンドだ。

個人的には21世紀のアストロドームだと感じた。1965年にヒューストンにオープンしたアストロドームは、当時としてはめちゃくちゃ画期的な施設だった。何せ、野球を屋内に閉じ込めたのだから。「世界の七不思議」になぞらえてThe 8th wonder of the worldと評されたほどだ。

そして、オープン当時のアストロドームのルーフパネルは透過性の確保できるものだった。ところが開場後に選手から「ルーフがハレーションを起こしてフライボールが見にくい」と苦情が出た。そのため、ルーフをペイントしたら天然芝が枯れてしまった(当たり前だが)。その事態を解決するために導入されたのが、人工芝たるアストロターフだ。

ちなみにこの新球場では、フィールドには残念ながら人工芝が敷かれるようだ。ルーフが透過式でフロリダの強い日差しをもってしても、天然芝の維持は難しいとの結論に達したようだ。

ここまで述べてきた範囲では、人工芝(と個人的には観客席の少なさ)はマイナス点だが全体としては中々魅力的な球場のようだ。しかし、とても大きな問題点が残っている。

それは、総額約9億ドルとも見積もられている建設費の捻出だ。アメリカでは、球場建設に公費が投入されることは珍しくない。これは、球場以前に球団自体が地域の財産との考えが浸透しているからだ。しかし、必ずしも市民全体が野球を楽しむわけではなく、球場の建設費用捻出のために市民全体に増税を課すことに反対意見は根強い。今回のプロジェクトでも、レイズが負担する1.5億ドル以外の資金ソースは目処が立っていない。今のままでは、それこそ冒頭に記したように「絵に描いたモチ」だ。

レイズの新球場問題は、もうひとつの同様な問題を抱えるアスレチックスの動向にも影響を及ぼしそうだ。いや、それだけではない。ロブ・マンフレッド・コミッショナーが折に触れコメントしているように、「懸案のエクスパンション(球団数拡張)も、この2球団の新球場問題が片付いてから(場合によっては、他都市への転出の可能性もあるため)」なのだ。

まだまだ、レイズ新球場問題は楽観できない。

代替画像

豊浦 彰太郎

1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:[email protected]

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