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あちらではサスペンデッドゲームは珍しくないのだが、歴史に残る展開となった例を2つ紹介しよう。いずれもサスペンデッドとなった理由は荒天ではない。
<パインタール事件>
1983年7月24日、ニューヨークでのヤンキース対ロイヤルズ戦でのこと。9回表にロイヤルズのジョージ・ブレットがリッチ・ゴセージから逆転2ランホームランを放ったが、直後にヤンキースのビリー・マーチン監督がブレットのバットに塗られている滑り止めの松やに(パインタール)が規定を超えて塗布されておりホームランは無効と主張。審判団はこれを受け入れ、ブレットはアウトとなった。(ブレットは血相変えて猛抗議も受け入れられず)。実は、マーチンは随分前からブレットのバットの問題に気づいていたが、抗議はここぞという場面に取っておいたという。
しかし、後日ロイヤルズがア・リーグに提訴するとリー・マクフェイル会長は「悪意なし」と判定を覆し本塁打を認め、9回表二死5対4でロイヤルズリードの場面からやりなおしとなった。一旦、完了した試合がサスペンデッド扱いになったのだ。そして、西地区所属(当時は東西2地区制)のロイヤルズが東海岸(ボルティモア)に遠征する途中の8月18日にヤンキー・スタジアムでゲームは再開され、ロイヤルズの勝利で終わった。このやりなおし試合を見届けんと球場に足を運んだ観客はわずか1200人だったのだが、その後は大げさに言えば球史に残る大珍事として語り継がれている。その理由には、顛末のレア度に加えキャストの豪華さもありそうだ。ブレット、ゴセージ、マクフェイルの全員が殿堂入りしているし、仕掛け人のマーチンも背番号1はヤンキースの欠番となっている。
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