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この時間帯に「2点目」を奪えなかったこと。それが、最後に響いてきてしまった。
時間が経過するとともに、前半からスプリントを繰り返してプレッシングをかけ続けた札幌の選手たちの足が止まってしまうことは、当然予想できることだった。そして、実際60分前後に試合の流れが変わっていく。
そして、まるでこの時間帯を待っていたかのように横浜FMのベンチが動き始める。
63分に最初の交代。攻撃の形ができずに苛立ちを隠せず、直前にはイエローカードをもらって主審に異議を唱えていたマルコス・ジュニオールと最前線のレオ・セアラに代えて天野純とエウベルの2人が投入され、そして74分には杉本健勇と水沼宏太が入る。
控えの選手層も厚い横浜FMだけに、控え選手が入ってもけっして選手のクオリティーが落ちることはない。足が止まり始めた札幌に対して、フレッシュな選手がプレスをかけて、試合の流れは完全に変わった。
札幌も、もちろん対応して控え選手を投入するが、控え選手の層の厚さを比べればやはり横浜FMに劣る。そして、札幌は前半の立ち上がりにシャドーストライカーとして先発したルーカス・フェルナンデスが負傷して、7分に青木と交代していたのだ。青木が活躍したために、この交代自体にはまったく問題はなかったのだが、足が止まり始めた後、札幌には交代枠が4つしか残されていなかったのだ。
必死で1点のリードを守る札幌。だが、ゲーム最終盤の84分に横浜FMは右から左にパスをつないで、最後はエウベルが入れたクロスを杉本がヘディングでたたき込み、さらに89分には左サイドで天野がクロスを入れ、一度は相手DFに引っかかったものの、天野は再びボールをコントロールして強引に持ち込んでクロスを入れ、逆サイドで抜け出した前田大然が決めて最後の最後で横浜FMが逆転勝利を決めた。
横浜FMは川崎との勝点差を9ポイントに縮めて、辛うじて逆転優勝の可能性を残すことになったのだが、そんな優勝争いの話題は別として、この両チームが死力を尽くした戦いをまず大いに称えたい。公式記録によれば、シュート数は横浜FMが16本。札幌が18本。2つのチームが掲げる“超攻撃的”の看板は偽りではなかったようだ。
逆転勝利した横浜FMはもちろん、敗れはしたが、攻撃的サッカーの魅力を精一杯に表現した札幌の選手や“ミシャ”ことペトロヴィッチ監督にも「おめでとう」という言葉を贈りたい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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