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五輪種目継続に向けて厳しい改善が求められているノルディック複合
■オフに舞い込んだ衝撃の報道
今夏、五輪種目からノルディック複合の除外が国際オリンピック委員会(IOC)で検討されているという衝撃的な報道があった。強豪チームがノルウェー、ドイツ、オーストリア、日本の4カ国に固まってしまっているという競技普及の観点が理由だ。
1924年の第1回シャモニー五輪から実施されており、「キング・オブ・スキー」の異名を持つノルディック複合の除外報道に関係者やファンは驚きを隠せなかったが、6月に開催されたIOCの理事会で2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の存続は無事決定された。ただし、2030年五輪に向けて参加選手数や観客数増加など厳しい改善が突き付けられただけに、関係者は引き続き危機感を強めている。
■注目の海外勢
現在のノルディック複合で強者であるのは、ノルウェーチーム。リーベル、グラーバグ、オフテブロ兄弟などの有名どころが立ち並ぶ。
団体戦ともなれば前半ジャンプで出遅れたとしても、後半クロスカントリースキーで怒涛の抜きを見せて圧勝してしまう。
そのため、他国は2位争いに終始することがしばしば、レースにおいて最終走者までもつれる白熱した試合は少なくなった。
その状況下でも、ときにノルウェーに打ち勝つ状況を作ってくるのがドイツ勢。フレンツェルにリーゼックとガイガー、そこにウェーバー、ファイスト、シュミッドなどの有力選手が加わる。
北京五輪では団体戦でのメダルを逃したが、いまやエースのランパルターとレーアルを中心に若手の底上げがあるオーストリアは、飛んで走るというバランスの良い強化が見られる。
他国でも注目ポイントが多い。フィンランド勢は、今夏のサマーグランプリを制したヘロラが勢いの波に乗ってきており、冬場の活躍が期待できそうだ。かつては、ギーとギヨームが2トップを担っていたフランスチームはようやく潜在能力ある選手が出てきた。またスティームボート・スプリングズを拠点として一世を風靡したアメリカチームの復調も待ち遠しい。
類まれなる駆け引きに長けている渡部暁斗(北野建設)
■SNOW JAPANの今シーズンの注目ポイント
北京五輪において日本男子チームは団体戦で銅メダルに輝いた。まとまりにあふれて強敵オーストリアに競り勝った見事な3位だった。
オフシーズン、エースの渡部暁斗(北野建設)は、地元の長野白馬で山々をめぐるトレイルランと高地トレーニングに、適度にマシンを用いた筋力パワーアップと自然に親しみながら心身を作り上げていた。さらに複合の元王者である荻原健司(長野市長)のような抜群の集中力と粘り強さを秘めると、なお上昇が果たせるに違いない。それには萩原市長が毎朝勤しんでいる、ラジオ体操を勤しむことから…という気がしないでもない。
元全日本複合チーム山本直鋭さんの子息、山本涼太(長野日野自動車)は、ドイツのオーベルスドルフ大会サマーグランプリで2位表彰台に入り、一歩ずつ進む手堅さがある反面、今後ここ一番での勝負強さが必要になりそうだ。また弟の山本侑弥(早大)もしっかりとそれに続いている。来季1月に開催が組み込まれることになりそうな複合W杯白馬大会も慌てず騒がず、自分を見失うことなく頑張っていこうとする若き山本涼太に注目したい。
つねに落ち着きあふれている山本涼太(長野日野自動車)
また新鋭の谷地宙(早大)は日本航空に就職が内定、本格的に走力と筋力パワーを付けようとしている。そしてベテラン渡部善斗(北野建設)はクロカン走に馬力がついてきた。
この冬の日本チームは、久々のフィンランド中央部に位置する国立オリンピックトレーニングセンターのヴオカッティでW杯開幕直前合宿に入っていた。当地は内陸部のカヤーニ空港から車でおよそ1時間の距離。ここではかつて児玉和興コーチ(明大OB)が自分の宿である志賀高原志賀山温泉ベルグ仕込みのカレーを作り、選手たちが英気を養っていた。それが1990年代のことである。このサウナ付きコテージでの長期トレーニング合宿では、当時、画期的に作られた片道1,310mのスキートンネルを活用、シーズン早くからの走力アップがなされた。
その後に阿部雅司ヘッドから河野孝則ヘッド、そして今季より久保貴寛ヘッドが複合チームをまとめて、そこで北村隆コーチが『イカ帽』にてコーチボックスで激しく存在感を打ち出し、ときに赤緑の風魔色そして強気で攻める青色へと気合を入れなおすことも、海外現地では有名になっている。
フィンランドのクーサモ・ルカでの複合W杯オープニング。
ここはクロカンスキーW杯と、W杯ジャンプ男子2試合も行われ、それこそ朝から夕まで分刻みの移動と取材となる。しかも白夜まっただなか。その冷え込みに凍える暇もなくクロカンコースやシャンツェのあちらこちらを走り回り、いよいよ選手達の雪上シーズンが始まっていく。
最後に日本女子にも注目を忘れないで欲しい。女子複合W杯優勝経験のある中村安寿(ショウワ)と葛西優奈と春香姉妹(ともに早大)を軸にしてW杯上位進出が見込まれている。女子選手の競技人口増とファンの増加も2030年五輪に向けて重要なポイントを担っているだけに、その支援と応援を続けたい。
文・岩瀬孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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