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絶好調の堀島は打倒キングズベリーを果たしての五輪金メダル、W杯総合優勝を狙う
今シーズンのW杯は異例の過密スケジュールが組まれ、2021年内ですでにヨーロッパラウンドの5戦が終了している。そこで今回はリザルトと照らし合わせながら、時系列順に各大会のチェックポイントを確認したい。
女子はノーマークの選手が優勝、堀島は表彰台でスタート
12月4日 開幕戦ルカ大会(フィンランド) モーグル
開幕戦は恒例のルカが舞台となった。日本からは女子が川村あんり、住吉輝紗良、冨高日向子、星野純子、柳本理乃、中尾春香、男子は堀島行真、杉本幸祐、原大智、松田颯が出場。今季のW杯は年明けの北米ラウンドまでが五輪代表選考レースを兼ねていることから、実質、この10名が北京五輪出場の可能性を有した面々だといえる。
毎シーズン、開幕戦はサプライズが発生するケースが多いが、今回もその例に漏れなかった。女子はW杯4連覇中のペリーヌ・ラフォン(FRA)が躓いたのだ。スーパーファイナルに進出し、タイム点はトップながら、エア点、ターン点が伸びず4位止まり。優勝したのはオリビア・ジアッシオ(USA)だった。ジアッシオは16歳だった'17季のたざわ湖W杯デュアルモーグルで3位になった選手。その後、低迷していたが五輪シーズンに急浮上となった。また、柳本が6位に入り、北京五輪の派遣推薦基準(8位以内1度など)をクリアした。
男子はミカエル・キングズベリー(CAN)が順当に優勝。カザフスタンの新エースで昨季の世界選手権MOで3位となったパヴェル・コルマコフ(KAZ)が2位に。3位の堀島行真(JPN)は相性のいいルカで3年連続となる表彰台となった。
Result
●女子
1:オリビア・ジアッシオ(USA)
2:ジャカラ・アンソニー(AUS)
3:カイ・オーエンズ(USA)
●男子
1:ミカエル・キングズベリー(CAN)
2:パヴェル・コルマコフ(KAZ)
3:堀島行真(JPN)
川村あんりが初優勝&堀島が今季Vのダブル快挙
ソーシャルディスタンスが確保された表彰台のセンターに立った川村
12月11日 第2戦イドレ大会(スウェーデン)モーグル
日本のモーグル界にとって嬉しい出来事があった。男女とも表彰台の真ん中に日本選手が立ったのだ。堀島は昨季の開幕戦以来の勝利。川村にとっては初めての優勝となった。日本の女子選手のW杯優勝は里谷多英、上村愛子、伊藤みきに続く4人目だ。
他方、注目して欲しいのはキングズベリーの名前が3位以内に入っていないことだ。彼がW杯モーグルの6位以内に入らなかったのは、'11季のレイクプラシッド大会以来11シーズンぶり。当時はスーパーファイナルのシステムがなかったので、キングズベリーがそこに進出しなかったのは今回が初めてなのだ。これは大ニュースである。
Result
●女子
1:川村あんり(JPN)
2:ペリーヌ・ラフォン(FRA)
3:ジャカラ・アンソニー(AUS)
●男子
1:堀島行真(JPN)
2:アルビン・ホルムグレン(SWE)
3:べンジャミン・キャベ(FRA)
ニューカマー柳本理乃が嬉しい初表彰台で五輪への道を切り拓く
12月12日 第3戦イドレ大会(スウェーデン)デュアルモーグル
またも、日本チームが吉報をもたらした。柳本理乃がクォーターファイナルで川村を、セミファイナルでジアッシオを倒し決勝進出。最後は16-19の僅差でラフォンに敗れたが、自身初の表彰台を掴んだのだ。高いエア技術を誇る柳本は日本チーム女子内で5人目となる五輪派遣推薦基準(後述)をクリアした選手となった。
男女とも常勝王者が優勝したこの大会は3位にも注目だ。女子ではジャカラ・アンソニー(AUS)が3大会連続の表彰台を記録。男子は第2戦2位のアルビン・ホルムグレン(SWE)に続き、地元のルドヴィグ・ジャルストロム(SWE)が表彰台をゲット。スウェーデンは全体的にレベルが上がっており、W杯、五輪の台風の目となりそうな存在だ。
W杯デビュー4季目で一気に北京五輪出場が現実的になった柳本(右)
Result
●女子
1:ペリーヌ・ラフォン(FRA)
2:柳本理乃(JPN)
3:ジャカラ・アンソニー(AUS)
●男子
1:ミカエル・キングズベリー(CAN)
2:堀島行真(JPN)
3:ルドヴィグ・ジャルストロム(SWE)
史上初!日本勢男子が1位、2位に。“二刀流”原大智が完全復活
12月17日 第4戦 アルプ・デュエズ大会(フランス)モーグル
北欧からフランスに舞台を移した第4戦で日本チームがまたやってくれた。優勝は堀島、2位は原大智……史上初の1-2フィニッシュが実現したのだ。競輪選手を目指してしばらくW杯から離れていた原は、競輪の猛トレーニングで下半身を桁違いに強化した状態で今季、久々にW杯復帰。4戦目にして完全復活を果たした。しかも、2位というのは世界大会で自身最高位である。もうひとり、杉本幸祐もスーパーファイナルに進み、3位のキングズベリーとは僅差で自己最高位タイとなる4位に。日本勢による表彰台独占まであと一歩だったのだ。女子は好調のアンソニーが今季初優勝。ラフォンはスーパーファイナルで大転倒しDNFとなった。
二刀流の話題性もあり原は今後、メディアからの注目度も再アップするだろう
Result
●女子
1:ジャカラ・アンソニー(AUS)
2:川村あんり(JPN)
3:テス・ジョンソン(USA)
●男子
1:堀島行真(JPN)
2:原大智(JPN)
3:ミカエル・キングズベリー(CAN)
好調アンソニーが連覇。堀島は表彰台に食らいつく
12月18日 第5戦 アルプ・デュエズ大会(フランス)デュアルモーグル
女子はアンソニーが連勝。また、昨季の世界選手権DM覇者のアナスタシア・スミルノワ(RUS)が2位、開幕戦3位のカイ・オーエンズ(USA)がまたも3位と女子表彰台は新鮮な顔ぶれに。前日の転倒後、しばらく立ち上がれないほどのダメージを受けたラフォンは、8ファイナルをDNSとなった。男子は負傷欠場が続いたウォルター・ウォルバーグ(SWE)が表彰台にカムバック。これで、スウェーデンの表彰台選手は今季3人目だ。
Result
●女子
1:ジャカラ・アンソニー(AUS)
2:アナスタシア・スミルノワ(RUS)
3:カイ・オーエンズ(USA)
●男子
1:ミカエル・キングズベリー(CAN)
2:ウォルター・ウォルバーグ(SWE)
3:堀島行真(JPN)
MOとDMに分けられた総合ランキング。今季は大きな変化がありそうな予感アリ
このパートでは総合ランキングをチェックしながら、今季の総合優勝争いについて考察したい。まず、重要なことが一点。今季、FISは総合ランキングをモーグルとデュアルモーグルとで分けて発表している。大会数が多くいことから、6戦が予定されていたDMが独立したかたちだ(1戦は中止)。以前もモーグルのW杯はMOとDMの総合ランキングが別々だった時期があった('96~'03季と'07季)。今回はそれ以来、実に15シーズンぶりのことになる。
下記にそれぞれの上位3名を掲載しているが、やはり気になるのは、ラフォンとキングズベリーが必ずしも好調とはいえないということである。2人とも五輪の連覇のためにリスク回避を優先しW杯では省エネを貫いているのか、それとも……。ラフォンに代わり、モーグル、デュアルモーグルともに表彰台にあがり続けているアンソニーがそれぞれ1位を走っている。川村はデュアルモーグルの2戦が表彰台ならずで、そこがアンソニーとの差だといえる。
女子は川村だけではなく、テス・ジョンソン(USA)、ジアッシオ、スミルノワ、オーエンズと2000年代生まれの選手が総合ランキング上位に入り、ジャスティン・デュフォー・ラポイント(CAN)、ユリア・ギャリシェバ(KAZ)らベテラン勢の戦績が低迷している現象もある。今季は新旧交代が一気に進むシーズンとなるだろう。
男子は第5戦終了時で、堀島がモーグルのイエロービブを付けている状態だ。ターン技術の向上も見られ、今季の戦績は安定。このままで3月まで走りたいところである。スウェーデン勢はチーム全体で勢いを付けており、その相乗効果によりさらなる飛躍もありえるだろう。そのほか、男子には目立ったニューカマーが何人かいる。開幕戦5位、第5戦4位に入った18歳のコール・マクドナルド(USA)、第2戦で2位となった20歳のアルビン・ホルムグレン(SWE)の名前は覚えておきたい。
なお、五輪後に予定されていた秋田たざわ湖大会の2戦は、オミクロン株の感染拡大などの影響で中止が決まったことをお知らせしたい。大変に残念な結果となった。
W杯総合ランキング(第5戦終了時点)
●女子(モーグル)
1:ジャカラ・アンソニー(AUS)
2:川村あんり(JPN)
3:ペリーヌ・ラフォン(FRA)
●女子(デュアルモーグル)
1:ジャカラ・アンソニー(AUS)
2:ペリーヌ・ラフォン(FRA)
3:アナスタシア・スミルノワ(RUS)
●男子(モーグル)
1:堀島行真(JPN)
2:ミカエル・キングズベリー(CAN)
3:パヴェル・コルマコフ(KAZ)
●男子(デュアルモーグル)
1:ミカエル・キングズベリー(CAN)
2:堀島行真(JPN)
3:ウォルター・ウォルバーグ(SWE)
確定はまだまだ先……。日本チームの五輪代表枠争いはどうなっているのか?
最後に日本チームの五輪代表枠争いについてまとめたい。まず、SAJが定めた北京五輪への派遣推薦基準を確認しよう。
(1)='21季及び'22季(基準日まで=実質W杯北米ランドまで)における世界選手権及びW杯にて下記のいずれかの成績を収めた選手。
【1】8位以内の成績を1回以上 【2】10位以内の成績を2回以上 (2シーズン合計) 【3】12位以内の成績を3回以上(2シーズン合計)
*枠を超えた場合は【1】【2】【3】の優先順位となる。それでも決まらない場合は、「オリンピック・クオータ・アロケーション・リスト」ランキングの上位者から選出。
(2)=(1)の基準において国枠が残っている場合、「オリンピック・クオータ・アロケーション・リスト」にてランキング上位者から順に選出する。
「オリンピック・クオータ・アロケーション・リスト」は各国の出場枠を決めるためのランキングで、FISのランキングとは別物だ。こちらと上記の派遣推薦基準とが五輪出場選手を決めるデータとなる。そして、このランキングが定める日本の国枠は現状で女子が4、男子が3である(最大は4)。また、'21季及び'22季第5戦までの時点で、派遣推薦基準をクリアした選手は、女子が川村あんり、冨高日向子、住吉輝紗良、柳本理乃、星野純子の5名で、男子は堀島行真、杉本幸祐、原大智の3名だ。
女子の5名はいずれも8位以内に最低1度は入っているので、「オリンピック・クオータ・アロケーション・リスト」で順位において、日本選手の中で5番目の選手が落ちるという厳しい結果が待っている。
男子はいまのところ、派遣推薦基準クリアした3名が五輪に出場できる可能性は高い。もうひとり、第4戦で'19季以来となる決勝進出を果たした松田颯にチャンスがあるだろう。この調子で北米ラウンドにて8位以内に入るなどすれば、枠の拡大、北京五輪出場の可能性が広がることになる。
文:STEEP
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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