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W杯4連覇、世界選手権MO優勝に続くラフォンの次の目標は、女子では誰も成し遂げていない五輪2連覇だろう
ここでは、’21モーグルW杯の女子について総括しよう。男子編でも触れたが、3月14日(現地時間)にアルマティ(カザフスタン)で開催が予定されていたW杯最終戦は、レース途中で濃霧によりキャンセルに。世界選手権MOも制したペリーヌ・ラフォン(FRA)の総合優勝はすでに決まっていたが、これに伴い、2位以下も最終戦開催直前の総合順位がそのまま年間のランキングとなった。
●'21季ワールドカップ女子総合順位
1 ペリーヌ・ラフォン(FRA) 445
2 川村あんり(JPN)270
3 ハンナ・ソアー(USA)250
4 カイ・オーエンズ(USA)234
5 ジャエリン・カウフ(USA)233
6 テス・ジョンソン(USA)197
7 冨高日向子(JPN)155
8 ジャカラ・アンソニー(AUS)154
9 住吉輝紗良(JPN)154
10 ジャスティン・デュフォア ラポイン(CAN)154
転倒による脳震盪により、世界選手権DMをDNSとなった川村だが、最終戦にはエントリーしていた
ラフォンはこれで4連覇。そして、W杯デビュー2シーズン目の川村あんり(JPN)が総合2位という特筆すべき快挙を果たした。
ここで、「川村がラフォンに肉薄!」「北京五輪の金メダルに期待!」と煽りたいところだが、現実はそんなに甘くない。上記表の得点に注目してほしい。ラフォンは男女唯一の400点台を記録し、川村とは175点も差をつけているのだ。総合7位となった冨高日向子(JPN)のシーズン総合得点が155点であることを考えると、175点という差の大きさを実感できる。ターン、エア、スピードと三拍子が揃い、5戦中優勝4回という圧倒的な安定性を誇るラフォンは、その年齢(22歳)を考えても、まだまだ衰えることはないだろう。
住吉がディアバレーで初表彰台を経験し自信をつける。川村だけじゃない!10代の選手が続々と表彰台に
さて、ここからは、シーズンの流れを追いながら女子モーグルのトピックをピックアップしていきたい。
まず、無観客、かつ選手や関係者がマスク着用というシチュエーションで初めて行われたルカ(フィンランド)での開幕戦から。ここでは、ラフォンが当たり前のように優勝するなか、3位に入ったのは自身2度目の表彰台となるアナスタシア・スミルノワ(RUS)だ。18歳の彼女はその後、今季の顔の一人となる。
イドレ(スウェーデン)での第2戦MOでは、日本チームが大いに目立った。スーパーファイナルに川村、冨高、住吉輝紗良と3選手が進出したのだ。結果、川村が2位、冨高4位、住吉が6位に。そして、次の第3戦DMでも川村3位、住吉が5位。川村のみならず住吉の勢いも2ヶ月近いブランクが開けてからも続いた。ディアバレー(アメリカ)での第4戦MOで、住吉はついに3位をゲット。川村は2位となり、日本選手のダブル表彰台を実現させた。
一方、この第4戦で4位となったカイ・オーエンズ(USA)が、同じくディアバレーでの第5戦DMでサプライズを起こす。川村と同じ2004年生まれの彼女は、すいすいとトーナメントを勝ち抜いていき、見事に優勝したのである。
ロシアチーム全体がディアバレーの2戦に出場しなかったため、スミルノワ(右)の総合順位は12位。もし、そこに出ていればもっと上位にランクインしていただろう
川村、スミルノワ、オーエンズとティーンエイジャーが続々と表彰台に上がる現象は、アルマティ(カザフスタン)での世界選手権でも起こった。まず、初日MOでスミルノワが、ラフォン、地元のユリア・ギャリシェバ(KAZ)に続く3位に。そして2日目のDMではスミルノワ、ヴィクトリア・ラザレンコ(RUS)、アナスタシヤ・ゴロドボ(KAZ)と表彰台を10代の選手が独占するというミラクルが発生する。
これで、五輪シーズンとなる来季は、川村、スミルノワ、オーエンズ、ラザレンコ、ゴロドボら21世紀生まれの新世代がラフォンを追撃するという大変にエキサイティングな構図となった。
北京五輪代表の可能性が高いのは川村、冨高、住吉、星野 伊原、柳本は足踏みも経験を糧に来季の飛躍を狙う
世界選手権に出場した日本女子の4選手。この4名がすんなり北京五輪の代表となるのか?それとも伊原、柳本がチャンスを掴むのか?
最後に、川村以外の日本の女子選手のリザルトを確認しよう。女子は選手層が厚く、「4つある北京五輪代表枠を誰が手にするのか?」というのが今季と来季のW杯前半戦までの大きな見どころとなっている。北京五輪の派遣推薦基準は発表されていないが、前回の平昌五輪の際は、対象となる大会(五輪前シーズンのW杯・世界選手権、五輪開催シーズンのW杯前半戦)で、「8位以内1回」、「10位以内を2回」、「12位以内を3回」のいずれかが条件となった。
仮に今回も同様の条件だとしたら、これをすでにクリアしたのは、川村、住吉、冨高、星野純子の計4選手である。世界選手権代表に選ばれたのもこのメンバーだった。
冨高は、勝負強さに欠けるのか表彰台未経験なのが気になるが、全戦ファイナル進出の安定感を見せ、総合順位は昨季の12位から7位に浮上した。住吉は、2度の予選落ちが響いて総合順位は9位とランクアップはならず(昨季は8位)だが、嬉しい初表彰台が大きなプラス材料だ。最年長の星野は昨季と同じ総合11位で、5戦中予選通過4回で最高位7位と実力は衰えていない。
今季のW杯には上記4名以外に伊原遥香、柳本理乃の2選手が出場していた。昨季、一桁順位を記録した両者だったが、今季は大きなブレイクとはならず。伊原は予選通過2回、最高位10位、総合16位。柳本は予選通過2回、最高位11位、総合17位。足踏み状態となった両者ともまだまだ未知数であり、来季の前半戦で逆転を果たす可能性は十分にあるだろう。
2022シーズンのW杯開幕が今から待ち遠しいが、それまでに世の中の状況が改善されていることを祈りたい。
文:Bravoski(ブラボースキー)
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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