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今シーズンの欧州列強各国は、新しいヘッドコーチの就任が相次いだ。
名門ドイツには、たたき上げのオーストリア出身ホルンガッヒャーがポーランドから移ってガイガーを大成させた。そのポーランドにはチェコ出身のドレツァルがアシスタントコーチから昇格、そしてその陣営には小柄な名選手だったアダム・マリシュがにこやかにチームディレクターを務めてクバツキとストッフらを見守った。
このところ短期間のうちにヘッドコーチが変わっていたオーストリアは、来シーズンにはアシスタントコーチからビドヘルツルが昇格する。そこではクラフトの連覇や若手選手の登用に注目が集まるだろう。日本ではその愛くるしい笑顔からジャンプファンの間で『ビドちゃん』と呼ばれていた彼。だいぶ昔の札幌W杯、取材で選手ホテルを訪問した際にお目当てのゴルベルガーは、さっさと繁華街すすきのへ。途方に暮れたわたしにビドちゃんは「まあ、いつものことだから、すまないね」と優しくよもやま話に乗ってくれたのを思い出した。そのときゴルディはなんとスッパランド(温泉?)に行ったらしく、あら、そうなんだ~と(笑)。
このようなコーチの陣営になってくると、ワールドシーンでいえば我が日本チームの宮平秀治ヘッドコーチに一日の長があろう。前年には新鋭の小林陵侑(土屋ホーム)をヤンネ・バータイネン(土屋ホーム・コーチ)と連携しながら、4ヒルズトーナメント(ジャンプ週間)に優勝させ、最後にはW杯個人総合優勝の栄冠を掴ませた。
来シーズンはW杯最前線にビドヘルツル、ホルンガッヒャー、ドレツァル、ハコラ(フィンランド)、ホルンシュー(スイス)というほぼ同世代のヘッドコーチが顔を並べることになる。これで、1本目を終えコーチボックスを眺めつつ宮平HCと談笑できる楽しみが増えてきた。
2年目の台頭が期待された小林陵侑は、W杯のジンクスさながら今季は優勝を重ねることができずにいた。だが、札幌W杯を経て終盤戦のRAW AIRロウエアにかけて復調のきざしを見せ、ライバルのクバツキ(ポーランド)を抜き去って個人総合3位となった。
また国内名門大会の雪印杯で3位表彰台に昇った葛西紀明(土屋ホーム)の去就が取りざたされたが、もともとのジャンプ好きでそれに負けず嫌いの彼のこと、納得がいくまでとことん選手生活を続ける。そこに新たに4月から小林ファミリーの末弟・小林龍尚(盛岡中央高)と元ノルディック複合選手の父・智さんの熱いサポートを受けた竹花大松(東海大札幌)が入部、名将カミカゼカサイの熱心な指導を受けることになる。自身の華麗なジャンプもさることながら、後進の育成とその飛躍に大いに期待が持てそうだ。
並びに欧州W杯に渡部弘晃と若手の岩佐勇研を輩出した伝統あふれる東京美装は、日大OBの金子祐介監督と、かつて最強ジャパンを作り上げた菅野範弘GMの二人三脚で、堅調に上昇を続けている。
および札幌W杯で優勝を飾った佐藤幸椰の雪印メグミルクには下川商から新人の工藤漱太が入部して、育成力ある岡部孝信コーチと原田雅彦監督の指導を受ける。
来る新シーズンも平和なままW杯が行われることを望んでやまない。
優勝 クラフト(オーストリア) 1659 |
2位 ガイガー(ドイツ) 1519 |
3位 小林陵侑(土屋ホーム) 1178 |
4位 クバツキ(ポーランド) 1169 |
5位 ストッフ(ポーランド) 1031 |
6位 ライエ(ドイツ) 917 |
13位 佐藤幸椰(雪印メグミルク) 559 |
24位 伊東大貴(雪印メグミルク) 285 |
30位 小林潤志郎(雪印メグミルク) 162 |
34位 佐藤慧一(雪印メグミルク) 109 |
43位 中村直幹(東海大札幌SC) 39 |
47位 竹内 択(チームtaku) 28 |
文・写真/岩瀬孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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